強者弱者(101)

自殺者多し

 市に自殺者多し。
 神経科医弱症に罹るもの多し。
 端午の節句、粽の味、菖蒲湯の香、事ふりたれどもゆかし。『女殺し油地獄』『緋縮緬卯月の紅葉』など血なまぐさき脚本の多く季節を此頃にとりたるにつけても自然の人心を圧すること今も昔も同じならひと知る可し。

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これを読んで納得するのは、100年前もこの時期は自殺者が多かったということ。何も現代の特殊な状況ではありません。
私自身の経験でも、世を憂いて儚く思うのは新緑の季節。私の場合は椎の花の匂いが鬼門のようです。

「粽」は「ちまき」。読めますよね。

『女殺し油地獄』は、有名な近松門左衛門の人形浄瑠璃。この文章が書かれる直前に歌舞伎として歌舞伎座で上演され、大評判になったのだそうです。

『緋縮緬卯月の紅葉』も同様に近松の心中物の代表作。

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