英の再現? 仏ギニー

昨日の日曜日、ロンシャン競馬場でフランスの二つのギニーが同日に行われました。新たなドラマの誕生です。

まず先に行われた仏1000ギニーから、正しくはプール・デッセ・デ・プーリッシュ(GⅠ、3歳牝、1600メートル)。
今年はニューマーケットの裁定室で1000ギニーに勝ったスペシャル・デューティー Special Duty が英仏連覇を狙って登場、去年のチャンピオン牝馬ロザナラ Rosanara も出走とあって10頭立てと少数ながら精鋭が揃いました。
人気はスペシャル・デューティーとロザナラ、加えてトライアルでスペシャル・デューティーを破ったジョアンナ Joanna の3頭が並んで3対1の1番人気。レヴェルは高いながらも混戦という前評判でした。

レースはアユーン・タラ Ayun Tara の逃げで始まりましたが、直線でドラマが待っていました。後方から鋭く伸びたリリサイド Liliside がやや外に膨れます。これが少し遅れて仕掛けたスペシャル・デューティーの前をカット。
リリサイドは更に最後の競り合いでも内に斜行し、大混戦の先頭集団はもろに影響を受けてしまいました。

結局ゴールインした順序は、先頭がリリサイド、以下スペシャル・デューティー、ベーヌ Baine 、ジョアンナ、ロザナラ、レディー・オブ・ザ・デザート Lady Of The Desert の順。
着差はそれぞれ頭、首、頭、頭、首で、6頭が1馬身以内に入るという大激戦でした。

当然ながら審議となり、それは何と75分間にも及ぶほど。最後に出た結論は、1着入線のリリサイドが6着に降着、2着入線以下が一つづつ繰り上がるというもの。
即ち、1着スペシャル・デューティー、2着ベーヌ、3着ジョアンナ。

ロンシャンの裁定室で勝利を確定したスペシャル・デューティーは、2週前のニューマーケットに続いて1000ギニーとのダブル達成となります。両レースとも1着馬の降着での勝利という記録は、恐らく史上初であり今後も出ることはないでしょう。
調教師のクリティック・ヘッド=マーレクさんは、ただただ“アメイジング!!”の一言。

ヘッド女史にとって英仏ギニーのダブルは22年前のラヴィネラ Ravinella に次いで2度目。もちろん今回のようなケースは初めてです。
仏1000ギニー制覇自体は、師にとって7度目。即ち1979年(スリー・トロイカス Three Troikas)、1985年(シルヴァーマイン Silvermine)、1986年(ベゼ・ヴォール Baiser Vole)、1988年(上記ラヴィネラ)、1995年(マティアラ Matiara)、1997年(オールウェイズ・ローヤル Always Loyal)に続くもの。13年振りの優勝となりました。

降着となったリリサイド陣営の反応は複雑。調教するフランソワ・ロホー師は、リリサイドの失格は認めるものの、6着降着には納得が行かない様子です。5着に繰り上がったレディー・オブ・ザ・デザートとの接触は無かったというのが論拠ですが、映像を見ると6着入線のキーレン・ファロン騎手はほとんど立ち上がっていますから、連鎖的に影響があったことは確か。
どの陣営も“あれが無ければ自分が勝った” というコメントです。

皮肉なことにロホー師は、2006年の同じ仏1000ギニーを1着入線した馬の降着によって制覇しているのです。そのときの勝馬はタイ・ブラック Tie Black 、降着したプライス・タグ Price Tag は、何とスペシャル・デューティーのオーナーでもあるカーリッド・アブダラ殿下の馬でした。
これであいこ、ということですか、ね。

スペシャル・デューティーは英ギニーと同じステファン・パスキエが騎乗していました。
一方リリサイドに騎乗したジャン=ベルナール・アイケム騎手(Eyquem、何と読むのか判りません)は不注意騎乗で6日間、ムチの過剰使用で4日間、合計10日間の騎乗停止と散々な結果になってしまいました。

激戦が続いたスペシャル・デューティーはここで一息入れ、ロイヤル・アスコットはパスして次走はドーヴィルとなる予定だそうです。

長くなりました。急いで仏2000ギニー、プール・デッセ・デ・プーラーン(GⅠ、3歳、1600メートル)に行きましょう。こちらも別の意味で大混戦、ニューマーケットの再現となりました。

当初登録は16頭でしたが、ロイヤル・ベンチ Royal Bench が脚部難を発症して取り消し、15頭立てと多頭数の混戦です。
人気は一応、去年の2歳チャンピオンとなったシユーニ Siyouni でイーヴン(日本流に言えば2倍)。

レースはシユーニのペースメーカーでもあるラジサマン Rajsaman とフォーラム・マグナム Forum Magnum の先頭争いでスタート。必然的にペースは速くなりました。

この2頭をマークした英2000ギニー2着のディック・ターピン Dick Turpin が抜け出した所を、後方で待機していた外枠発走のロープ・ド・ヴェガ Lope De Vega が大外からスムーズに追い上げ、ディック・ターピンに半馬身の差を付けて快勝しています。
3着は更に1馬身半で136対1という超大穴シャマルガン Shamalgan 。以下4着バズワード Buzzword 、5着メーザーン Meezaan と続き、本命シユーニは末脚不発で9着敗退という結果。

ディック・ターピンはイギリスに続いてここも2着、前日GⅠのロッキンジ・ステークスを制したハノン厩舎は複雑な気持ちでしょう。英ギニーは2・3着、仏ギニー2着。来週の愛ギニーでは英3着のキャンフォード・クリフス Canford Cliffs でもう一つ上の着順を狙います。

3着に突っ込んだシャマルガンは、珍しくもチェコから挑戦してきた馬。前走のトライアル(フォンテンブロー賞、これはラジサマン→シユーニ→ロープ・ド・ヴェガの着順)で惨敗していただけに、これは意外な(失礼!)好走と言えるでしょうか。

勝ったロープ・ド・ヴェガはアンドレ・ファーブル厩舎にとって5勝目の仏ギニー制覇。即ち1984年(シベリアン・エクスプレス Siberian Express)、1987年(ソヴィエト・スター Soviet Star)、2001年(ヴァオリミクス Vahorimix 、この馬も1着馬の失格で繰り上がり)、2003年(クロドヴィル Clodovil)に続くものです。

鞍上のマキシム・グイヨンは期待の若手。フランスの三浦皇成とも言えるスターで、もちろん仏2000ギニーは初制覇。GⅠ勝利は4勝目となります。三浦君よりペースが速いかな。

ロープ・ド・ヴェガ、この後は仏ダービーに向かいますが、距離(2100メートル)に関してファーブル師は問題無いとしていますが、グイヨン君は若干疑問と、温度差があるようです。

さてこの日のロンシャンは、あと二つのパターン・レースが組まれています。

ギニーの前に行われたスプリント戦、サン=ジョルジュ賞(GⅢ、3歳上、1000メートル)は1頭が取り消して10頭立て。1番人気(6対4)は、使われた強みでミスター・マナンナン Mister Manannan 。

しかし勝ったのは久し振りの古豪マルシャン・ドール Marchant D’Or 、2着に頭差でベンバウン Benbaun が入り、3着は1馬身でコロコル Kolokol の順。ミスター・マナンナンは7着敗退です。
1着は7歳、2着は9歳というヴェテラン勢の活躍でした。

マルシャン・ドールと言えばフレディー・ヘッド厩舎のスター芦毛馬でしたが、去年は成績振るわず、2000ギニーを制して一躍脚光を浴びているデルザングレ厩舎に転厩していました。これがデルザングレ厩舎からの初戦、長期休養で馬もリフレッシュしていたのでしょうね。ジョッキーはヘッド時代と変わらずデイヴィッド・ボニラ。
次はロイヤル・アスコットのスプリント・レースに向かいます。

もう一つ、ギニーの後で行われたのが仏ダービー、またはパリ大賞典のトライアルとなるオカール賞(GⅡ、3歳、2200メートル)。
8頭立てで行われ、19対10の1番人気に支持されたシルヴァー・ポンド Silver Pond が順当に勝っています。
2着は1馬身差でセルティック・セレブ Celtic Celeb 、3着は更に2馬身でアイヴォリー・ランド Ivory Land の順。

勝ったシルヴァー・ポンドは6番手からの追い込みで、カルロス・ラフォン=パリアス厩舎所属、オリヴィエ・ペリエ騎乗でした。

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1件の返信

  1. 匿名 より:

    Eyquemはユケームだと思います。

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