強者弱者(107)

若き男女の散歩

 若き男の若き女の手をとりて、夕ぐれ街頭をそぞろあるきすること近年の流行なるが如し。唯、洋服の男と和服の女と手をとりたるばかり不調和なるはなし。
 若き男の若き女を携へたるを見て、労働者の口穢く罵ること、今も往々にして市上に見る所なり。唯若き女の厚顔無恥、見るものをして面をそむけしむるばかりの挙動したるに彼等の口をつぐみて得いはず、呆然として其痴態を見守るのみなるに引きかへ、未だ世なれぬ女の、嬌羞やるせなきを忍びたるを見ては、悪罵冷嘲きくに忍びざる凌辱を敢てす。経験ある人の肯く所なるべし。

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私が子供の頃までこのようなことがあったように記憶していますが、現在では想像できない光景です。昨今は厚顔無恥が当たり前になって、是非を問う意見も出ないほど。女性の方が積極的なのは昔も今も変わらない、ということか・・・。

「嬌羞」(きょうしゅう)とは、恥らう様子が却って艶めかしく見えること。正に死語になりました。

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