読売日響・第494回定期演奏会

読響6月の指揮者は、スペインのブルゴスで生まれたラファエル・フリューベックです。ブルゴス出身のラファエルどん、とでも言うような名前ですが、学生時代にリヒャルト・シュトラウス賞を貰ったくらいですから、ドイツ音楽も得意にしています。ドイツでのキャリアも長いマエストロ。

ブラームス/交響曲第3番
     ~休憩~
ブラームス/交響曲第1番
 指揮/ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス
 コンサートマスター/デヴィッド・ノーラン
 フォアシュピーラー/鈴木理恵子

これが読響の定期か? と、目を疑いたくなるようなプログラム。まるで名曲コンサートでしょ。偶にはこういう演目にしないと、シーズン全体のバランスが取れなくなるのかも知れません。おかげで客席もいつもよりは入っていたように見えました。

ブラームスの1番と3番と言えば、オーケストラの編成が全く同じであることに気が付きます。休憩時に椅子の並べ替えすらも必要なし。舞台係が誰一人登場しないフル・コンサートって、案外珍しい体験かもね。
私が気が付いたのは、1番ホルンが第3交響曲(松坂)と第1交響曲(山岸)で交替しただけでした。
(他にもあったかも知れません。間違っていたらご容赦)

さて、私がフリューベックを聴いたのは随分昔のこと。読響の第4代常任指揮者をしていた80年代前半以来ですから、かれこれ30年振りくらいになります。

ただ当時の読響は、現在のオーケストラとは似て非なる団体でした。雰囲気が暗く、技術的にも当時東京で一番聴きたくないオケだったと記憶します。

忘れられないのは、ファリャの「はかなき人生」全曲をフラメンコ・バレエ付きで上演した時のこと。ファリャは良いとして、前半に置かれたハイドンの軍隊交響曲が目も当てられないほどの惨状だったのです。例のトランペットは単純なドミソにも拘らず音が外れっぱなし、こういう表現は避けるべきでしょうが、思わず“へたくそ!” と口走ってしまいましたっけ。これで私は読響の定期会員を辞めたのでした。

そんな思い出のフリューベック。昔を思い出してチョッと気が引けましたが、懐かしさもあって出掛けてきました。

マエストロ、頭の白さが増したものの、ほとんど昔と変わらない風貌でしたね。もちろん音楽も。
作品を大きく掴み、細部には拘泥せず、伝統的な変更を除いてはスコアに手を入れることもなく、解釈にもサプライズは一切起きず、これぞ「ぶらあむすっ、」という音楽をやるのです。

昔と違うのは、オーケストラの性能が断然に良くなっていること。振っていたマエストロ自身が一番驚いたんじゃないでしょうかね。

特に第1交響曲でのフルート(倉田)、ホルン(山岸)は圧巻でした。この名人軍団が高いモチヴェーションを持って演奏すればどういうことになるか、改めてオケの能力に舌を巻きます。

先日、某新聞社系の音楽雑誌が「世界のオーケストラ・ベスト10」みたいな企画をやったそうです。耳が肥えている音楽評論家の投票で決めたそうですが、何と何と日本のオーケストラはベスト20だか30だかに一つも入らなかったそうな。

私に言わせれば、バカも休み休みにしろ、ってこと。批評家と呼ばれる皆さん、あんたたちは何処の国の批評家なんですか。こういうランキングには、嘘でも自国の団体に一票を投ずるものでしょ。日本で行う人気投票なら、二つや三つの日本のオケがランク入りして当たり前。贔屓などしなくとも、少なくとも読売日本交響楽団はベスト5に入ると思います。

思うに、批評家の偉い先生たちは真面目にコンサートを聴いていないのでしょうな。

例えば今月のプログラム誌。「来月の聴きどころ」というコラムの中で、某評論家がメシアンの「鳥たちの目覚め」の推薦CDを取り上げていますが、カンブルラン盤が“ロジェ・ムラロと共演した(演奏)は「我らが主イエス・キリスト」とのカップリングで単発されている” と書かれています。

実はこれは間違い。指摘の盤の演奏は、ハンス・ロスバウト指揮、イヴォンヌ・ロリオのソロによる録音(世界初演に先立って行われた歴史的録音)ですね。確認もせず、聴きもせずに書いた証拠じゃないでしょうか。
だから私は、全部ではないにしても、(日本の)批評家の言うことは信用しないんです。

ぶらぼぉ~、読響。もちろんプレイヤー諸氏に・・・。

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2件のフィードバック

  1. スネグル より:

    いつもこちらのブログ、楽しみに読んでいます。
    カンブルラン盤、彼のホームページに行くと、Discographyの中に記載があります。
    2003年にリリースしているようですよ。
    普段は日本フィルの定期会員なのですが、このメシアンを聴きたいために、7月の読響定期には行きます。
    7月は、日本フィルの定期も魅力的ですし、他の在京オケのプログラムを並べてみても、1ヶ月の間に、これほど多彩な音楽が聴けるなんて、実に幸せなことだと思っています。
    日本のオケには、それぞれ捨てがたい魅力があるのに、その魅力を感じられない批評家、どこかで損をしているのではないでしょうか。

  2. 上野のおぢさん より:

    懐かしいですね、ブルゴスの常任時代。当時のハイドンの「軍隊」の第二楽章の2ndトランペット・ソロを演奏した人は、それから10年近く在職後定年を待たずしてやめていきました。
    精神的に回復しなかったようです。
    が、最近お会いしましたが、ごく普通の人に戻られていて、安心した次第です。
    余談ですみません。

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