強者弱者(144)
かんぞの花
かんぞの花は遠く之を草叢の間に望んで山百合の花と擬ふべし。石蒜科に属し水近き岡のほとりに咲けり。東京にては南郊に多し。
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「かんぞ」は、漢字で書けば「萱草」。ユリ科の植物で、大型で橙赤色の美しい花を咲かせます。色々な種類がありますが、東京で普通に見られるのはノカンゾウでしょう。湿った所に多いという特徴があります。
山地性のゼンテイカは、別名ニッコウキスゲで知られていますが、これも「かんぞ」の一種。東京にはムサシノキスゲと呼ばれる種類もあって、この文章が書かれたころは全て「かんぞ」で通っていたのかも知れません。
最近は「かんぞ」の自生をほとんど見ませんが、私の記憶では港区と新宿区の境に位置する南元町公園で見たことがあります。かつては南東京に多かったのでしょう。
「石蒜科」は「せきしか」とルビが振られていますが、「せきさんか」と読む場合もあります。現在では石蒜科はヒガンバナ科とされていて、ユリ科とは近いながらも別の科に分類されています。
100年前はヒガンバナもユリも同じ仲間として分類されていたのでしょう。
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