スペインの快進撃

フランスの夏競馬と言えば今週末から始まるドーヴィル開催が中心ですが、その直前に行われたメゾン=ラフィット競馬場のGⅡ戦2鞍をレポートしましょう。7月最後の日曜日(7月25日)。

ロベール・パパン賞(GⅡ、2歳、1100メートル)は伝統ある2歳の重賞。1971年にパターン・レース・システムが導入された時からGⅠに格付けされていましたが、1988年からGⅡに降格されて今日に至っています。
去年の勝馬はスペシャル・デューティー Special Duty 。今年の英仏1000ギニーを制してクラシック・ホースのタイトルを獲得のはご存知のことでしょう。

今年は6頭立て。5対2の1番人気に支持されたのは、2戦無敗のティン・ホース Tin Horse 。2番人気もデビュー勝ちしたばかりのウィズ・キッド Wizz Kid で、どちらが連勝記録を伸ばすかに注目が集まりました。

しかし結果は両馬とも3着以内に入れず、優勝は32対5のアイリッシュ・フィールド Irish Field でした。
2馬身半差の2着は大接戦で、写真判定の結果2着はブルックス Broox 、短頭差3着に英国から挑戦したアプルーヴ Approve が入り、首差4着がウィズ・キッドの順。本命ティン・ホースは5着敗退です。

アイリッシュ・フィールドはスペインで調教されている馬。管理するマウリシオ・デルチャー・サンチェス師はエキアーノ Equiano (キングズ・スタンド・ステークス)やバンナビー Bannaby (カドラン賞)で英仏でも馴染の調教師ですね。このところのスポーツ界で快進撃を続けるスペイン期待の星。

同馬はマドリッドで2戦2勝したあと、既に前走シャンティーのボア賞(GⅢ)でケラティーヤ Keratiya の2着に食い込み、フランスでの競馬を経験していました。
前回はペリエが騎乗していましたが、今回はクリストフ・スミオンが鞍上。シャンティーでは先行策でしたが、今回は後方待機の追い込み。自在な脚が使えるタイプでしょう。

ただ残念なことにアイリッシュ・フィールドにとっては、これがヨーロッパでの最後の競馬となる由。
既に香港への移籍が決まっていて、間もなくアジアへ出立するとのことです。

次に繋がるという意味では、レース半ばで先頭から大きく離されながら3着に健闘した英国のアプルーヴでしょうか。
前日にキングジョージを制したハービンジャー Harbinger と同じ共同馬主グループ(ハイクレア・サラブレッド・レーシング)の所有馬で、ロイヤル・アスコットのノーフォーク・ステークスに勝ち、ニューマーケットのジュライ・ステークスが4着という成績。ここでは強烈な末脚に見所がありました。
ウイリアム・ハッガス師の管理馬で、今回はリチャード・ヒューズの騎乗です。

もう一鞍はユージェーヌ・アダム賞(GⅡ、3歳、2000メートル)。出走馬は10頭でしたが、半数の5頭は英国からの挑戦です。

しかし英国勢は3着以内には入れず、コックス厩舎の2頭、エクステンション Xtension とブラック・スピリット Black Spirit が夫々4・5着に入ったのが最高でした。

2対1の1番人気は地元ファーブル厩舎、仏ダービー6着のリュミヌー Lumineux でしたが、これも6着敗退。優勝は37対10の新星シムラーン Shimraan でした。
首差2着にチェコから参戦したシャマルガン Shamalgan が入り、3馬身差3着がドイツのハリウッド・キス Hollywoos Kiss というインターナショナルな結果です。

勝ったシムラーンはアガ・カーンの所有馬で、これで3戦2勝。パターン・レース初挑戦での快挙です。
管理するのはアラン・ロワイヤー=デュプレ、鞍上はジェラール・モッセでした。

シムラーンはこれまでの2戦がいずれも2400メートルでのもの。初重賞となる今回は2000メートルという短い距離に不安がありましたが、実力で死角を克服した形です。
それでも陣営は2400メートルがベストという見解で、シーズン後半に有り勝ちな重馬場も得意なことから、秘かな狙いは凱旋門賞にある様子。2000メートルでのスピードも確信を得たことから、英国のチャンピオン・ステークスも視界に入ってきたようです。

2着に食い込んだシャマルガンはチェコの馬ですが、これも既に仏2000ギニーに3着してフランス競馬は体験済み。最近のフランス競馬はとみに国際色を強めているようですね。

凱旋門賞では久し振りに日本からの挑戦もある由。国際交流を深めたい競馬ファン諸兄は、10月初めのロンシャンに集うべし。

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