強者弱者(149)
入谷の朝顔
旧暦の盂蘭盆。日の暮るゝを待ちて、軒に岐阜提灯をともし、縁台を前庭に据ゑて一家共に語る。いたいけなる妹の梧桐の葉越に照る月の光を浴びて唱歌などうたひ出でたるもうれし。
朝顔の花咲く。入谷の朝顔は名のみにして、客を待つの趣向、卑俗殆ど見るに堪へず。入谷の花を見んとて朝まだき家を出でたる人の、三の輪あたりの水田にたまたま白蓮の開くを見たるは、思ひまうけぬ幸とやいはん。
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「岐阜提灯」は説明するまでもなく、岐阜の名産。お盆に飾る提灯で、涼やかな絵が特徴です。
「梧桐」(ごとう)は、「アオギリ」のこと。
入谷の朝顔の下りは意味不明です。朝顔を口実にするような風俗があったのでしょうか。
入谷から三の輪に抜ける通りは日光街道。昔は水田が広がり、蓮が植えられていたのでしょうね。
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