強者弱者(148)
予後備兵
第一師団にては此月のはじめより予後備兵の勤務演習を行ふ。召集されて馳せ参ずる兵員の面に生存の戦より受けたる重き負傷のありありと見はれたるは現役兵の生活に屈託なきに比べてあはれ深し。薄給を得て銀行、会社に通勤する人、御国のために、業を捨て妻子をおきて徴に応ず。悲壮何ぞ実戦に赴く者のそれと選ぶ所あらんや。
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秀湖は明治40年(1907年)12月1日に陸軍、歩兵第三連隊第一中隊に入隊していますから、これは実体験から生まれた文章です。
翌1908年3月には兵士脱走に関して取り調べを受け、4日後には嫌疑が晴れています。この間の事情については、大江志乃夫著「凩の時」に実名入り小説として描かれました。
その5月には陸軍歩兵一等兵に補され、11月30日に満期除隊になるまで、習志野、富士裾野、相模野への演習に参加しました。
「強者弱者」にはこの間の経験を綴った文章も多く、帰営してから日記に記したものでしょう。
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