強者弱者(167)

九月

 二百十日は毎年此月の二日頃にあたる。驕陽漸く去りて、雲の色に、虫の音に秋のこゝろを見れども残暑なほきびしく、時に気圧の来襲あり。暴風颯到して家を壊ち、田圃を荒す。殊にチブス、赤痢の流行は毎年此月を以て最とす。

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二百十日は立春から数えて210日のこと。年によってズレがありますが、今年は今日、9月1日に当たります。言うまでもなく台風が来る時期に当たるので、農家では厄日として警戒します。

しかし今年は猛暑。特に東京は雨が一滴も降らない状態で、そろそろ台風が待ち遠しい気持ちにすらなってしまいますね。

「驕陽」は「きょうよう」。驕は「驕り高ぶる」という意味ですから、夏の烈しい陽射しのことです。広辞苑や一般的な漢和辞典には掲載されていませんが、杜甫の詩に用例があり、字源には取り上げられています。

今年(2010年)の夏は異常な暑さ。単に驕る太陽というよりも、居座り続ける夏の太陽と表現したいほどです。そこで個人的には、今年の暑さを「据陽」と名付けることを提案します。「据」は居座り続けるという意味ですから、「きょうよう」ならぬ「きょよう」。新語を創りたくなるほど記録破りの暑さじゃないでしょうか。

「颯到」は「さっとう」。広辞苑では「殺到」だけが上がっていますが、「颯」は風の音を伴った漢字ですから、暴風の場合は「颯到」の方が感じが出ていると思います。因みに、「颯到」は字源にも記載されていない単語。

流石にチブス、赤痢の流行は現代には見られなくなりました。医学の進歩のおかげ。
広辞苑を借りれば、チブスはチフスの訛だそうで、漢字は「窒扶斯」を充てる由。腸チフスの通称なのだそうです。

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