強者弱者(168)

萩、女郎花

 女郎花も西南の高原にあり。山手線に在りては、新宿以南の沿道に此花を見るべし。葛はむさし野に稀なり。萩、ふぢばかまは到る処に野生す。目黒停車場の構内にある萩は、山手線の単線時代より野生したるものをそのまゝ残したるものなり。
 ふぢばかまの花は野菊に似たれども弁少くして色さみし。葉は紫苑に近く丈高し。秋更けて咲く。菊の異名などいふは当らず。

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「女郎花」(おみなえし)は、最近めっきり見られなくなりました。ここに書かれているように、新宿以南では至る所にあったというのは信じられません。

人間そのものについての歴史はふんだんに記録されていますが、このように自然や庶民生活などの日常に関する歴史はほとんど残されていないように思います。その意味でも、こうした記録は貴重な資料と言えるでしょう。

私の観察では、「葛」(くず)は逆に東京では増えているような感じがします。もちろん何処にでもあるような草花ではありませんが、稀というほどではないと思いますがどうでしょうか。

「ふぢばかま」(藤袴)も現在では貴重でしょう。“到る処に野生す”というのは、遠い昔のこと。
最近見たのは井の頭公園でしたか。紹介されているように地味な色彩の植物ですが、古来の日本人の感性には最も適した花でしょうね。
菊の異名ではないことはもちろんですが、キク科の植物には違いありません。中国から渡来したもので、古くは身に付けて楽しんだものだそうです。

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