9月最初の重賞開催

昨日の土曜日、日本とは違って寒いくらいの秋を迎えた英愛で9月最初のパターン・レースが行われています。
先ずはアイルランドのレパーズタウン競馬場から。

この日はGⅠが二鞍という豪華版ですが、最初はキルターナン・ステークス(GⅢ、3歳上、1マイル2ハロン)から。

10頭立て。ウェルド厩舎のキャッシェルガー Cashelgar と、オブライエン厩舎のアウェイト・ザ・ドーン Await The Dawn が7対2で1番人気を分けあっていました。

レースはハッガス厩舎が送り込んだサウス・イースター South Easter が先手を奪いましたが、2番手でマークしたアウェイト・ザ・ドーンが直線で抜け出し、そのまま他馬を寄せ付けず圧勝しています。
9馬身もの大差が付いた2着はサウス・イースターの逃げ残り。半馬身差3着にナントン Nanton の順。
1番人気を分けたキャッシェルガーは6着敗退です。

勝ったアウェイト・ザ・ドーンはエイダン・オブライエン厩舎、ジョニー・ムルタ騎乗の3歳馬。これが未だ4戦目という新星で、今シーズンは2戦2勝。もちろんパターン・レースは初勝利です。

さて愈々GⅠ2連発。最初は牝馬によるメイトロン・ステークス(GⅠ、3歳上牝、1マイル)。2004年からGⅠに格上げされた一戦です。

豪華メンバーが揃いましたが、有力馬の1頭ジャクリーン・クエスト Jacqueline Quest が取り消して6頭立て。ニューマーケットのフォルマス・ステークスの覇者ミュージック・ショウ Music Show が2対1の1番人気。出走馬中唯一の古馬スペイシャス Spacious (5歳)が2番人気で続きます。愛1000ギニー優勝以来となるベスラー Bethrah は、休み明けのため4番人気に落ちていました。

最初に仕掛けたギル・ナ・グレイナ Gile Na Greine をスペイシャスが交わしたタイミングを見計らうように、最後方に待機したリリー・ラングトリー Lillie Langtry が追い込んだ所がゴール。鮮やかな差し切り勝でした。
首差2着にスペイシャス、本命ミュージック・ショウは1馬身4分の1届かず3着。久々のベスラーは5着と敗退。

リリー・ラングトリーは言うまでもなくオブライエン厩舎。主戦ムルタの好騎乗が光りました。
2歳の秋にブリーダーズ・カップで負傷、再起が危ぶまれた同馬ですが、獣医の献身的な努力で復活を果たしています。

3歳のシーズンはゆっくりと調整され、愛1000ギニー5着のあとロイヤル・アスコットのコロネーション・ステークスで見事に復活。前走フォルマス・ステークスはミュージック・ショウの5着に敗れましたが、地元アイルランドで雪辱を果たしました。

エイダン・オブライエンにとって、珍しくもこれがメイトロン・ステークス初勝利。このあとはロンシャンのオペラ賞に向かいます。

土曜日の呼び物はアイリッシュ・チャンピオン・ステークス(GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン)。去年はシー・ザ・スターズ Sea The Stars が勝ったレースと言えば、このレースの注目度が判るでしょう。

今年は6頭立て。先立つ二つのパターン・レースを連勝したオブライエン厩舎は3頭出し。ムルタが選んだリップ・ヴァン・リンクル Rip Van Winkle が8対11の2倍を切る1番人気に支持されていました。

しかしレースは、意外にも6対1に支持を落としたケープ・ブランコ Cape Blanco の圧勝。シーマス・へファーナンの果敢な先行策に応え、2着以下に5馬身半差を付けるブッチギリです。

3頭が鼻面を揃える混戦の2着争い。短頭差先着したのが本命リップ・ヴァン・ウィンクルで、3着トゥワイス・オーヴァー Twice Over はリップの宿命のライヴァル、同じく短頭差4着にはオブライエンの3番手ベートーヴェン Beethoven が入りました。

愛ダービー馬のケープ・ブランコ、キングジョージではハービンジャー Harbinger に切って捨てられましたが、ここは古馬を蹴散らしての圧勝劇。やや落ちかけた3歳世代の評価を再び高めるのに貢献した形です。
良馬場の2000メートルという条件もこの馬に適していましたね。

騎乗したへファーナンは、“もしリップ・ヴァン・ウィンクルかケープ・ブランコかを選択する立場なら、間違いなくリップを選んだね” と断言したくらいですから、ここはラッキーだったかも。

エイダン・オブライエンはこのレース6勝目。5勝で並んでいた大先輩ヴィンセント・オブライエンを抜いて単独トップに立ちました。

これまでの5勝は、2000年のジャイアンツ・コーズウェイ Giant’s Causeway 、2003年のハイ・シャパラル High Chaparral 、2005年のオラトリオ Oratorio から2006・2007年連覇のディラン・トーマス Dylan Thomas までは3連勝という内訳。今回は3年振りの快挙となりました。しかもワン・ツー・フィニッシュで、ね。

これでオブライエン厩舎はこの日のパターン・レース総なめ。他に新馬戦を加えて1日4勝を記録しています。

一方、イギリスではヘイドック競馬場でベットフレッド・スプリント・カップが行われました。16頭が登録していましたが、3頭が取り消して13頭立て。
こちらにもアイルランドから送り込んできたオブライエン厩舎のスタースパングルドバナー Starspangledbanner が、11対8の1番人気。

レースは、いきなりスタンド側と外側の二つのグループに分かれてしまいます。7頭の外グループの先頭にスタースパングルドバナー、スタンド側6頭を引っ張るのが7歳のマーカブ Markab

しかし混戦を制したのは、12対1と人気の無かったマーカブの方。最後は両グループが中央に寄って覇を競いましたが、マーカブの1馬身4分の1差2着に外を走ったレディー・オブ・ザ・デザート Lady Of The Desert が食い込み、1馬身差3着も外グループのゲンキ Genki 。
外グループを引っ張った本命馬は、いつもの伸び脚が見られず5着敗退です。

勝時計の1分9秒4はレコード・タイム。マーカブはヘンリー・キャンディー調教師の管理馬で、鞍上パット・コスグレーヴ騎手に二つ目のGⅠをプレゼントしました。
皮肉なことに、コスグレーヴの最初のGⅠ勝利は2008年のナンソープ・ステークス(ヨーク競馬場が冠水したためニューヨークで行われた時のもの)でしたが、その時騎乗したボーダーレスコット Borderlescott はこの日は8着に終わっています。

マーカブはフランスのフレッディー・ヘッド厩舎からキャリヤーをスタートさせ、イギリスのモーガン厩舎に移籍、更に去年から現在のキャンディー厩舎に移った馬。
最下級クラスから徐々に這い上がり、終にはGⅠホースにのし上がる出世物語を現実のものした馬でもあります。

土曜日のGⅠハットトリックを目指したオブライエン師、スタースパングルドバナーの敗因は前走(ナンソープ・ステークス2着)から余り間が無かったからかも、と解説。疲れを取ってから本来のスピードを復活させることを宣言していました。

さてこの日はケンプトン競馬場のポリトラック・コースでもパターン・レースが2鞍行われました。数少ないポリトラック・コースでの重賞です。

最初のサイレニア・ステークス(GⅢ、2歳、6ハロン)は5頭立て。当初は8頭の登録がありましたが、まず1頭が取り消し、更に2頭がゲートインを嫌ったために発走除外となった結果です。

ゴドルフィンのサインズ・イン・ザ・サンド Signs In The Sand が7対4の1番人気に支持されましたが、期待に反して3着凡走。
結果は5対2のフーレイ Hooray の逃げ切り勝ち。3馬身4分の3差2着にレックレス・リワード Reckless Reward 、更に6馬身離された3着が本命サインズ・イン・ザ・サンド。
勝時計の1分11秒5は、2歳馬の6ハロン戦のレコード・タイムでした。

フーレイはサー・マーク・プレスコット師の管理馬、セブ・サンダース騎乗。
ヨーク競馬場でラウザー・ステークス(GⅡ)を制したばかりですが、GⅡ勝ちのペナルティーがあったため、牡馬より重い負担重量を背負っていました。パターン勝馬ながら人気が無かったのはその所為でもありましょう。

この後もう一叩き!! してから来月のチーヴリー・パーク・ステークス(GⅠ)に向かうというタフな女傑。

最後はセプテンバー・ステークス(GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン)。かつては芝コースで行われていましたが、今年はポリトラック・コースでの開催です。

9頭立ての1番人気(7対4)は、ゴドルフィンのホルベルク Holberg 。しかしゴドルフィンの本命馬はここでも入着止まりに終わりました。

勝ったのは11対4のラーヒブ Laaheb 。3馬身半差2着がホルベルクで、更に2馬身4分の1差3着がクラシック・パンチ Classic Punch の順。

ラーヒブはマイケル・ジャーヴィス厩舎、リチャード・ヒルズ騎乗の4歳馬。去年まではハンデキャップ・クラスで走っていましたが、今年からパターン・クラスに挑戦して、これがパターン・レース初勝利。
いつものパターンである逃げ切り策が功を奏しました。

2着のホルベルクは、去年のクィーンズ・ヴァース(ロイヤル・アスコット)の勝馬。今年からゴドルフィンに移籍した馬で、本来の目標は南半球のメルボルン・カップでしょう。ここはその脚慣らしの一戦だったのかも知れません。

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