セントレジャーのサプライズ

この週末は注目レースが多く、レポートするのも大忙しです。多少端折りながら進みますので悪しからず・・・。

土曜日は何と言ってもドンカスター競馬場のセントレジャー(GⅠ、3歳、1マイル6ハロン132ヤード)から。出走馬の枠順は既に紹介していますが、登録通り10頭立てで行われました。

トライアルを快勝したゴドルフィンのリワイルディング Rewilding が予想通りイーヴン(単勝2倍)の断然1番人気。能力を発揮すれば順当に勝てるはず、固い本命に推されていました。

しかし日記のタイトルに掲げたように、リワイルディングは道中の行きっ振りがいつもと違い、鞍上デットーリがいろいろ工夫したものの馬に闘争心が無く、結局は6着凡走で期待を裏切ってしまいました。

本命馬苦戦の混戦を制したのは、12対1のアークティック・コスモス Arctic Cosmos 。1馬身4分の3差2着には2番人気(13対2)のミダス・タッチ Midas Touch が追い込み、鼻差3着に逃げ粘ったペースメーカーのコルシカ Corsica が頑張りました。
更に1馬身4分の1差で4着にオークス馬スノー・フェアリー Snow Fairy (4番人気)が続き、オブライエン厩舎の2番手ジョシュア・トゥリー Joshua Tree が5着。そのあとがリワイルディングです。

勝ったアークティック・コスモスはジョン・ゴスデン師の管理馬。師にとってはセントレジャー3勝目に当たります。1996年のシャントゥー Shantou 、2007年のルカルノ Lucarno に続く快挙。

今回のクラシック制覇はゴスデン師にとって格別なものになりました。というのも、師のレーチェル夫人が共同馬主の一人だから。師は毎年の贈り物として馬を1頭選んで夫人にプレゼントする習慣があり、アークティック・コスモスは師自らが選んで購入した馬。

同馬のパターン・レースは初制覇となりますが、前走ゴードン・ステークス(グッドウッドのレジャー・トライアル)2着は、正に本番に照準を合わせたトライアル。クラシック当日、初めてブリンカーを着用したのも功を奏しました。

騎乗したウイリアム・ビューイックは未だ22歳の若手。セントレジャー初騎乗でイギリスのクラシック初制覇を勝ち取りました。
2006年、18歳で初騎乗、今年からゴスデン厩舎の主戦に抜擢されての快挙です。今年はドバイ・シーマ・クラシックをダー・レ・ミ Dar Re Mi で、アーリントン・ミリオンをドビュッシー Debussy で、モルニー賞をドリーム・アヘッド Dream Ahead で制し、海外でも積極的に活躍している期待の星。

ビューイック騎手の父親はワルター・ビューイックと言い、スカンジナヴィアで8度もリーディングに輝いた往年の名騎手。血統的にもサラブレッドの競馬一家に育った逸材なのですね。ビューイックくん、いずれは日本にも登場してコースを沸かせてくれるでしょう。

ゴール前2ハロンまで我慢、一気にスパートして好騎乗のお手本のようなレース内容。ビューイック曰く、“ニジンスキー Nijinsky が出ていないからね”。

ドンカスターのセントレジャー・フェスティヴァルの最終日は、他に二つのパターン・レースが組まれていました。

第1レースとして行われたのはシャンペン・ステークス(GⅡ、2歳、7ハロン)。6頭立て、5対6の圧倒的本命に推されたサーミッド Saamidd が期待通りの圧勝を演じました。
2馬身4分の1差2着にアプルーヴ Approve 、更に半馬身差3着にウォルターズ・ドリーム Walter’s Dream の順。

サーミッドはニューバリーの新馬戦に続いて2戦2勝。レース内容の良さから、2000ギニーに7対1という高いオッズが出されました。
ゴドルフィンの1番星で、もちろんサイード・ビン・スロール厩舎、ランフランコ・デットーリ騎乗。来月のデューハースト・ステークスが大きな試金石となるでしょう。

もう一鞍はパーク・ステークス(GⅡ、3歳上、7ハロン)。1頭取り消して12頭立ての本命(7対2)は、前走サセックス・ステークスで3着の実績があるプレミオ・ロコ Premio Loco 。

前年に続き2連覇を目指してアイルランドから遠征してきたダフ Duff が先頭に立ちましたが、スタンド側のラチ沿いに追い込んだバルサザールズ・ギフト Balthazaar’s Gift の末脚が勝りました。
激戦の入着争い、半馬身差2着に本命プレミオ・ロコが食い込み、鼻差3着にヒマラヤ Himalaya 、ダフは4着惜敗です。

バルササールズ・ギフトはクライヴ・コックス厩舎、フィリップ・ロビンソン騎乗。去年のハンガーフォード・ステークス以来の勝利で、騎乗したロビンソンは、“壺に嵌ればGⅠクラスの馬さ” と、サプライズにも自信たっぷり。

ところで英国最後のクラシックを制したゴスデン/ビューイック・コンビ、この日の第5レースと第7レースも勝ってハットトリック達成です。

さてグッドウッド競馬場でもパターン・レースが一鞍、セレクト・ステークス(GⅢ、3歳上、1マイル1ハロン192ヤード)は7頭立て。前走ローズ・オブ・ランカスター・ステークス(GⅢ)に勝ったポエト Poet が2対1の1番人気。

レースは2・3・4番手を進んだ3頭の叩き合いとなり、7対2のレッド・バッジ Red Badge が優勝。1馬身4分の1差2着にミラー・レイク Mirror Lake が入り、首差3着に本命ポエト。ポエトはゴール直前まで先頭で粘っていましたが、最後の最後で2頭に交わされての惜敗でした。

レッド・バッジはリチャード・ハノン厩舎、リチャード・ヒューズ騎乗の名コンビです。

続いてアイルランドに飛びましょう。カラー競馬場はGⅠレースの2本立てです。

最初に行われたナショナル・ステークス(GⅠ、2歳、7ハロン)は9頭立て。フェニックス・ステークス(GⅠ)を含め3連勝中のゾッファニー Zoffany が6対4の1番人気に支持されていました。オブライエン厩舎4頭出しの主役、ドンカスターを蹴ってこちらに留まったジョニー・ムルタを鞍上に万全の態勢です。

しかし本命馬はここでも苦戦。優勝は2番人気(2対1)に甘んじていたパスフォーク Pathfork でした。最後は2頭のマッチレースのような形になり、頭差2着に大健闘とたのはカサメント Casamento 。5馬身離された3着に漸く本命ゾッファニーという結果です。

これで3戦3勝負け知らずとなるパスフォークは、ジェシカ・ハリントン夫人の管理馬。騎手はフラン・ベリー。本来は重馬場が苦手なはずですが、ここは実力でカバー。厳しいレースが今後に影響しないか心配でもあります。

土曜日のメインは、アイルランド・セントレジャー(GⅠ、3歳上、1マイル6ハロン)。ドンカスターのセントレジャーと重なりますが、こちらは古馬にも開放された長距離戦。最早クラシックとしてのステイタスは失われています。

8頭立て。日本産馬ポップロック Pop Rock が参戦しているのにも注目でしたが、ポップロックは残念ながらドン尻負け。人気どおりの結果でした。

優勝も人気通り、13対8の1番人気に支持された4歳馬のサン・フロンティエー San Frontieres が2着プロフォンド・ビューティー Profund Beauty に4分の3馬身差を付け、着差以上の楽勝を演じました。
1馬身4分の3差3着にオブライエン/ムルタのフライング・クロス Flying Cross 。

6歳牝馬のプロフォンド・ビューティーが先頭に立ったところに、満を持していたオリヴィエ・ペリエ騎乗のサン・フロンティエが測ったように追い込む内容。

勝馬はプリンス・オブ・ウェールズ・ステークス(GⅡ)、ジェフリー・フリーア・ステークス(GⅢ)に続いてパターン・レース3連勝。このあとはメルボルン・カップを目指すのでしょうか。
英国のジェレミー・ノセダ厩舎から遠征してのGⅠ初制覇です。

父ガリレオ Galileo にとって、サン・フロンティエーは16頭目のGⅠホース。今シーズンを概観しても、ガリレオ産駒はケープ・ブランコ Cape Blanco とリップ・ヴァン・ウィンクル Rip Van Winkle がアイリッシュ・チャンピオンでワン・ツー。先週のモイグレア・スタッドではミスティー・フォー・ミー Misty For Me が優勝、同日のセントレジャーではミダス・タッチ Midas Touch が2着と、円熟を迎えた名種牡馬の名声が益々高まってきた週末です。

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