ヨーク・イボア2010・初日
今年もヨーク競馬場のイボア・ミーティングが始まりました。火曜日から金曜日までの4日間、連日のようにパターン・レースが組まれていますが、開催のタイトルになっているのは明日(水曜日)行われる名物ハンデ戦のイボア・ハンディキャップです。
初日のパターン・レースは3鞍。レース順にレポートしていきましょう。
最初は2歳馬によるアコーム・ステークス(GⅢ、2歳、7ハロン)。中心なると思われていたドリーム・アヘッド Dream Ahead を含めた3頭が取り消し、やや中身が薄まってしまった感があります。
7頭立ての1番人気(2対1)は、オブライエン厩舎が送り込んできたレイク・オンタリオ Lake Ontario 。前走ナース競馬場のメドン戦での5馬身勝ちが評価されたのでしょう。
しかし勝ったのは5対2の2番人気に支持されたウェイターズ・ドリーム Waiter’s Dream でした。スタンド側のラチ沿いに先頭に立ち、2着シルヴァートゥリーズ Silvertrees に4馬身半差を付ける完勝です。
更に1馬身差で3着にティモシー・ティー Timothy T の順。
本命レイク・オンタリオは、前半はペースに付いて行けないかのようにドン尻を懸命に追走、後半で追い上げたものの4着が一杯と期待を裏切りました。
ウェイターズ・ドリームはブライアン・ミーハム厩舎、鞍上はキーレン・ファロン。ファロン騎手は前走ニューバリー競馬場のメドン戦でも同馬の手綱を取っており、その時から能力の高さに注目していた由。陣営としては勝って当然、という評価でしょう。
ブックメーカーも直ぐに反応し、ウェイターズ・ドリームの2000ギニーのオッズを33対1としています。
続いてセントレジャーのトライアルとして最も権威あるグレート・ヴォルティジュール・ステークス(GⅡ、3歳、1マイル4ハロン)。
10頭立て。ダービー3着以来となるゴドルフィンのリワイルディング Rewilding が6対4で1番人気に支持されています。
今年のダービーはワークフォース Workforce の圧勝に終わりました。レース直後は極めて高く評価されていましたが、その後同馬はキングジョージで惨敗、2着アット・ファースト・サイト At First Sight 以下のダービー出走馬もその後の成績はパッとせず、ダービーそのもののレヴェルに疑問も生じてきたのが現実です。その意味でもダービー3着馬の走りっぷりには注目が集まりました。
レースはハリス・トゥイード Harris Tweed が逃げ、2番人気(5対2)のムルタ騎乗ミダス・タッチ Midas Touch (ダービー5着、愛ダービー2着)が早めに追い掛ける展開。
終始2~3番手を進んだミダス・タッチが一瞬先頭に立ったものの、後方3番手で満を持していたリワイルディングが進出してきた時にレースは決着してしまいました。
堂々たる圧勝劇を演じたリワイルディング、2着ミダス・タッチに4馬身差。更に2馬身4分の1差3着には、最後方を進んだジョシュア・トゥリー Joshua Tree が追い込んでいます。
リワイルディングは、3歳初めまでフランスのアンドレ・ファーブル厩舎に所属していた馬。ノアイユ賞2着のあとゴドルフィンにトレードされて来ました。
鞍上はもちろんランフランコ・デットーリですが、調教師はゴドルフィンの第2調教師であるマームド・アル・ザルー二。この圧勝で、自信満々セントレジャーに向かいます。最後のクラシックへのオッズは6対4に上がりました。
2・3着は共にオブライエン厩舎。師は両馬の内容に大満足で、共にセントレジャーを目指すでしょう。特に3着に入ったジョシュア・トゥリーは、去年のロイヤル・ロッジ・ステークス(GⅡ)優勝以来の久々のレース。今日のレース内容から見て、今後の成長が大いに期待される一頭でしょう。
イボア・ミーティング初日のメインは、ジャドモント・インターナショナル(GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン88ヤード)。無事であればハービンジャー Harbinger が凱旋門賞へのステップとして使うはずだったレースですね。
9頭立て。7対4の1番人気はオブライエン厩舎の強豪リップ・ヴァン・ウィンクル Rip Van Winkle 。このレースのスポンサーであるジャドモント・ファームを経営するカーリッド・アブダッラー殿下は、トゥワイス・オーヴァー Twice Over (去年のチャンピオン・ステークスと今年のエクリプス・ステークス)とバイワード Byword (プリンス・オブ・ウェールズ・ステークス)でインターナショナル初制覇を目指していました。
9頭中6頭がGⅠ馬という豪華メンバー。スティミュレーション Stimulation の逃げをマークしたバイワードとトゥワイス・オーヴァーが抜け出してワン・ツー・フィニッシュかと思われた時、外から本命リップ・ヴァン・ウィンクルが追い込み、最後の100ヤードで鋭く差し切ったところがゴール。3頭が1馬身半に流れ込む、手に汗握る素晴らしい内容でした。
結局優勝はリップ・ヴァン・ウィンクル、半馬身差2着がトゥワイス・オーヴァー、4分の3馬身差3着にバイワードの順。
4着は4馬身離されてカヴァルリーマン Cavalryman (パリ大賞典)が続き、10ハロンに初挑戦したディック・ターピン Dick Turpin (ジャン・プラ賞)が5着。ガネー賞馬カットラス・ベイ Cutlass Bay は7着敗退です。
リップ・ヴァン・ウィンクルはもちろんエイダン・オブライエン厩舎、ジョニー・ムルタ騎乗。3歳時はシーズン初めから飛ばし、チャンピオン・マイラーに輝いた馬。
今年は師の考えもあってシーズン後半に狙いを定め、これがシーズン3戦目にして初勝利。去年、10ハロンではエクリプス・ステークスに出走してシー・ザ・スターズ Sea The Stars の2着でしたから、これが10ハロンでの初勝利でもあります。
今シーズンの最終目標はブリーダーズ・カップ。マイルに行くかクラシックに向かうか、同厩のフェイム・アンド・グローリー Fame And Glory との兼ね合いで決まってくるでしょう。
いずれにしても、マイルでも10ハロンでも能力を最大限に発揮できるチャンピオンであることを証明したことは間違いありません。
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