読売日響・第92回芸劇マチネー

9月の読売日響はスクロヴァチェフスキ登場、3種類のコンサートが用意されていました。定期と名曲は会員でもあり既に聴きましたが、残る一つ、芸劇マチネーも聴いてきました。
1回も聴き逃せない指揮者ですからね。

東京芸術劇場マチネーシリーズ
バッハ=スクロヴァチェフスキ/トッカータとフーガ ニ短調
ショパン/ピアノ協奏曲第2番
~休憩~
ブラームス/交響曲第1番
指揮/スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
独奏/エヴァ・クピーク
コンサートマスター/小森谷巧
フォアシュピーラー/鈴木理恵子

単発で買ったチケットでしたので、あまり良い席ではありませんでした。2階D列48・49。いつもの席より大分遠いので、深入りした印象は書けません。
ほぼ満席、というくらい入っていましたね。評判が噂を呼び、1度しか演奏されないプログラムにファンが集中した、ということでしょうか。
前半と後半ではかなり聴きどころ、というか視点の違った印象があります。

まず入場すると、各種打楽器がずらり並んでいるのが目に入りました。もちろんバッハ作品のスクロヴァチェフスキ版を演奏するための楽器群です。
編成、大きかったですね。完全な4管編成。ピアノ、チェレスタ、ハープも使いますし、打楽器はティンパニが5個。大太鼓、吊シンバル、木琴、チューブラ・ベル、ドラが2発。小さいほうはゴングと言うのでしょうか。
弦合奏は16型、配置は今日もスクロヴァ・シフトです。

いやぁ~、バッハ、面白かったですねェ~。次から次へと繰り出されるオーケストレーションの面白さ。最後のグリッサンド連発なんてどうやったんでしょう。Stringed Instruments は全員参加の大グリッサンドをかけていたみたい。唖然とするうちに終わってしまいました。

次はガラッと変わってショパン。楽器の移動が大変ですが、ティンパニの回りに人が大勢。
なるほど、スクロヴァチェフスキの仕掛けは、バロック・ティンパニを使うことだったんですね。
弦を14型に落とし、トロンボーン1本を他の管楽器からは離してコントラバスの左隣に置きます。意図は明確。トロンボーンの役割は、低音部の艶出しに徹するのです。

ピアニスト、クピークはバリバリ弾くタイプではありません。全く正反対で、詩人ショパンを目指しているようです。
スクロヴァチェフスキの伴奏も、バロック・ティンパニに象徴されるように、透明度を高く、古朴な響きを要求しているように聴きました。第1楽章第2主題の歌わせ方など、意外にもルバートをたっぷりとかけ、如何にもショパンが愛おしくて仕方がない風情。

しかし、この大ホールの遠い席では些かもどかしい印象は避けられませんでした。それでも楽章を締めくくるフォルテの響きなど如何にもスクロヴァチェフスキ・サウンド。キリッと引き締まった和音が並みの演奏との違いを際立たせます。

本日のメイン、ブラームス。これはもう正統的ブラームスに終始していました。前半の仕掛けを目にした聴き手にとっては拍子抜けするほどの正攻法。
往年の巨匠たちが手を入れたようなスコアの垢は完全に洗い落とし、ブラームスが書いたままを音にしていくのでした。第1楽章の繰り返しも実行します。
それでもスクロヴァチェフスキを聴いたなぁ、ブラームスを聴いたなぁ、という感想を持たせるのは流石ですね。
この意味で、4月のブラームス第2、先日のシューマン第4と同じコンセプトに貫かれた演奏でしょう。
コンサート・マスター小森谷、ホルン松坂、オーボエ辻、クラリネット藤井も美しい音色で喝采を浴びていました。

さぁ、9月のスクロヴァチェフスキ・フェストが終了しました。次回は来年の4月でしょうかね。翁、どんなプログラムを用意してくれるでしょうか、今から楽しみでなりませぬ。
願わくは、京都の4月とスケジュールがバッティングしないことを祈るばかり。
エッ、4月の京都ってナンだ、と聞かれる? 聞いてくれるな。もう一人、“1回も聴き逃せない指揮者”がいるんですよ。内緒ですけど。

 

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