ケンタッキー・ダービーの詳細と、その他9つのG戦

ダービーだけは速報しましたが、昨日(5月7日)のアメリカ競馬は正に「競馬の祭典」状態。よせばいいのに全て追っかけてもうクタクタです。
何とか纏まりましたので一気にアップしちゃいましょう。

当方の都合で、先ずチャーチル・ダウンズ競馬場で行われたダービー以外の5レースを取り上げ、
続いてニューヨークのベルモント競馬場から芝の2鞍を、
そしてカリフォルニアはハリウッド・パーク競馬場をちょこっと覗いて、

最後にケンタッキー・ダービーを、どっか~ん、と紹介しちゃいます。一遍に読むと体に毒ですから、小出しにクリックすることをお勧めします。
なお、慌てて書いてますから、誤字脱字、文章のおかしい所は多々あるでしょう。私も疲れましたから、されらは後でゆっくり訂正します。
ではでは・・・。

     *****

ダービー・デイ、最初のG戦は第6レースのトゥイン・スパイヤーズ・ターフ・スプリント Twin Spires Turf Sprint (芝GⅢ、3歳上、5ハロン)。このレースの詳しい経緯・歴史はよく判りません。恐らくダービー・デイを盛り上げるために創設されたスプリント戦だと思われます。
今年の勝馬はリーガリー・レディー Regally Ready 。8頭立て。2着ブリッジタウン Bridgetown を1馬身4分の1差し切っての優勝です。ステークスは3連勝、冬場はカリフォルニアで走り、ケンタッキーに乗り込んできたスプリンターです。テレビ中継を見ると、カメラに雨粒が当たっています。丁度雨が降り出した時間にスタートが切られたようですね。
調教師はスティーヴン・アスムッセン、騎手はコーリー・ナカタニ。

続く第7レースはフマーナ・ディスタッフ・ハンデキャップ Humana Distaff H (GⅠ、4歳上牝、7ハロン)。1987年創設。最初はブラウン・アンド・ウイリアムソン・ハンデというレース名でしたが、1995年から現在の名称に変更されています。リステッド戦から徐々に格が上がり、GⅠ最高格になったのは2002年から。
今年の勝馬はサッシー・イメージ Sassy Image 。7頭立て。中団待機から大外を回っての差し切り勝ち。1番人気のヒルダズ・パッション Hilda’s Passion に3馬身差を付ける完勝でした。これまでGⅡとGⅢに勝っていましたが、GⅠは初制覇となります。
調教師はデール・ロマンス、騎手はロビー・アルバラード。この二人は兄弟なんだそうです。

第8レースは芝コース、チャーチル・ディスタッフ・ターフ・マイル Churchill Distaff Turf Mile (芝GⅡ、3歳上牝、8ハロン)。1990年創設、2009年にそれまでのGⅢからGⅡに格上げされました。1995年まではキャピタル・ホールディング・マイル・ステークスと呼ばれていたそうです。
今年の勝馬はエイヴィエイト Aviate 。9頭立て。これまた鮮やかな差し切り勝ちです。芝コースのレースだけあって、英国産馬が末脚を発揮して1・3着(ファンテイジア Fantasia)するのを見るのは良いものです。2着アルーナ Aruna に1馬身半差。雨が降り続いて馬場が柔らかくなったのも英国馬には有利だったかも。エイヴィエイトは去年までヘンリー・セシル師が管理していた馬、アメリカ・デビューは3着でしたが、これが米国初勝利となります。
調教師はウイリアム・モット、騎手はケント・デザーモ。

引き続き第9レースに行きます。チャーチル・ダウンズ・ステークス Churchill Downs S (GⅡ、4歳上、7ハロン)。これは1911年に創設された歴史ある短距離戦で、ブリーダーズ・カップ・スプリントの前哨戦の一つに数えられている一戦。
今年の勝馬はエイクナイト Aikenite 。12頭立て。2着エイプライオリティー Apriority との着差は僅かにハナ。頭文字に「A」が付く2頭での決着でした。
調教師はトッド・プレッチャー、騎手はジョン・ヴェラスケス。

ダービーの一つ前、第10レースもGⅠ戦です。ターフ・クラシック・ステークス Turf Classic S (芝GⅠ、3歳上、9ハロン)。ケンタッキー・ダービー当日を彩るために1987年に創設された芝コースのビッグ・イヴェント。1998年から最高格のGⅠに格上げされています。創設当初はアーリー・タイムス・ターフ・クラシックと呼ばれていました。
今年の勝馬はゲット・ストーミー Get Stormy 。13頭立て。この日は追い込みが目立っていましたが、ここはスローペースに落としての逃げ切り勝ちです。2着スマート・ビッド Smart Bid に4分の3馬身差。前走もGⅠ勝ち(メイカーズ・マーク・マイル)していましたが、人気は7対1とあまり無かったのが不思議。逃げ切りでのGⅠ2連勝です。
調教師はトーマス・ブッシュ、騎手はラモン・ドミンゲス。
次はいよいよダービーですが、その前にニューヨークとカリフォルニアに小旅行と洒落込みましょう。

ベルモント競馬場のボーゲイ・ハンデキャップ Beaugay H (芝GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)。1978年創設。レース名のボーゲイは、1945年の2歳チャンピオンでデビューからいきなり6連勝した快速牝馬。
今年の勝馬はダヴェロン Daveron 。5頭立て。3番手から抜け出したダヴェロンが、ギッチー・グーミー Gitchee Goomie との叩き合いを首差制して優勝。ドイツ産の6歳馬ですが、この少し後にケンタッキー・ダービーを制することになるチーム・ヴァロー・インターナショナルの持ち馬です。G戦は初勝利。ドイツでデビュー、フランスに転戦、今回は去年秋のアケダクト(ロング・アイランド・ハンデ)以来という国際派です。
調教師はグレアム・モーション、騎手はエディー・カストロ。

フォート・マーシー・ハンデキャップ Fort Marcy H (芝GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。ボーゲイと同じ条件による牡馬が出走できる一戦。1975年創設で、レース名は、二度に亘ってアメリカの芝コース・チャンピオンに選ばれ、競馬殿堂入りした名馬の名。
今年の勝馬はストレート・ストーリー Straight Story 。5頭立て。見事な逃げ切り勝ちでした。内から追い込んだハドソン・スティール Hudson Steele に首差でG戦の初勝利。このレースにはミコシ(神輿) Mikoshi という面白い名前の馬が出ていましたが、逃げたストレート・ストーリーを深追いし過ぎて4着に沈んでいます。
調教師はアラン・ゴールドベルク、騎手はカルロス・マルケス・ジュニア。

ハリウッド・パーク競馬場ではマーヴィン・リロイ・ハンデキャップ Melvyn LeRoy H (GⅡ、3歳上、8.5ハロン)。マーヴィン・リロイは競馬好きだった映画監督の名。ハリウッド競馬場の創設に尽力した一人でもありました。如何にもハリウッドの競馬場らしいネーミングです。GⅠだった時期もありましたが、現在はGⅡに格下げ。
今年の勝馬はクラウン・オブ・ソーンズ Crown of Thorns 。4頭立て。2頭、2頭の二つのグループに分かれ縦長の展開。最後は差が詰まりましたが、結局は2番手を進んだクラウン・オブ・ソーンズが逃げたシドニーズ・キャンディー Sidney’s Candy を1馬身4分の1捉えて優勝。同馬は去年の夏に骨折のため休養、久しぶりのG勝利で復活を果たしました。現在6歳ですが、勝利は3歳の2月以来となります。
調教師はリチャード・マンデラ、騎手はタイラー・ベイズ。

セニョリータ・ステークス Senorita S (芝GⅢ、3歳牝、8ハロン)。1968年創設。レース名は、もちろん若い娘のセニョリータから。
今年の勝馬はスター・ビリング Star Billing 。7頭立て。ここも2番手に付けた馬の差し切り。直線入り口で先頭に立ち、追い込んだエントラストメント Entrustment とは2馬身4分の3差でした。1番人気キャンビーナ Cambina は3着。これが未だ2戦目という新星で、負け知らず。オーナーは映画館を経営する大金持ちだそうで、正に名前に相応しいスターに成長するかが注目される所ですね。
調教師はジョン・シレフス、騎手はシャンタル・サザーランド。

そして最後に、
ケンタッキー・ダービー Kentucky Derby (GⅠ、3歳、10ハロン)。オークスと同じく今年第137回を迎えるアメリカ最大の競馬イヴェント。アメリカのクラシック三冠の第一弾を構成する全米最高峰のレースで、競馬ファンでなくとも話題にするほど。オークスの象徴が百合だったのに対し、こちらは「薔薇」。俗に Run for the Roses と呼ばれています。

去年の2歳チャンピオンで冬場の圧倒的本命だったアンクル・モー Uncle Mo は、トライアルのウッド・メモリアルで思わぬ3着敗退。巻き返しを期して最終登録を済ませましたが(18番枠、2番人気)、結局はトライアルの敗因とされた腸の疾患が思わしくなく、陣営が記者会見を開いて取り消してしまいました。
最終的に19頭で争われることになった第137回ケンタッキー・ダービー、チャーチル・ダウンズに押し掛けた観客は16万4千858人ということで、史上最多のレコードを更新した由。そんな中で1番人気に支持されたのはフロリダ・ダービー優勝馬のダイアルド・イン Dialed In でした。
その本命馬(8番枠)がスタートでいきなり出遅れ、場内はドッと沸きます。どうも最初から波乱の様相。

結局、今年の勝馬は20対1の穴馬アニマル・キングダム Animal Kingdom 。16番枠という外を引いたこともあって前半は控え、直線で一気の差し切り勝ち。2着は2馬身4分の3離されてネーロ Nehro (19番枠)が飛び込み、首差3着に13番枠のムチョ・マチョ・マン Mucho Macho Man 。
以下4着にスローで逃げたシャックルフォード Shackleford 、アイルランドのオブライエン厩舎が送り込んだマスター・オブ・ハウンズ Master of Hounds 5着、本命ダイアルド・インは結局8着という結果。勝時計は2分2秒04と計時されています。
調教師はグレアム・モーション、騎手はジョン・ヴェラスケス。ヴェラスケスは当初アンクル・モー(トッド・プレッチャー厩舎ですからね)に騎乗する予定でしたが、同馬が取り消したため予定のロビー・アルバラード騎手から乗り替わり。アルバラードはダービー週の初めに落馬負傷という不運も重なっていました。名手ヴェラスケスは、ダービー13回目の挑戦で初勝利。2001年の2着の記録を上回っての栄冠です。
モーション師にとってもケンタッキー・ダービーは初制覇。当初はウッド・メモリアルに勝ったトビーズ・コーナー Toby’s Corner との二枚看板でダービーに臨む予定でしたが、最終的にはトビーズ・コーナーは出走できませんでした。

勝ったアニマル・キングダムは、これが未だ5戦目というキャリア。3月にターフウェイ・パーク競馬場のスパイラル・ステークス(GⅢ)に勝ってクラシックに挑戦してきました。2歳時はウェイン・カタラーノ厩舎に所属、デビュー戦が2着で、10月にキーンランドで初勝利を記録しています。
3歳初戦のガルフストリームで2着(芝コースの1マイル戦)のあとスパイラル勝ち。これで5戦3勝の成績となります。

アニマル・キングダムの父はブラジル産馬のルロワデザニモー Leroidesanimaux 、母はドイツ産のダリシア Dalicia (父はアカテナンゴ Acatenango)で、母もドイツのパターン・レース勝馬です。アニマル・キングダムは、その初仔。
何とも国際的な血統ですが、父は2003年にアメリカに転戦し、トップクラスのマイラーとして活躍した馬です。G戦は6勝、内3勝はGⅠで、2005年のブリーダーズ・カップ・マイルは2着でした。ロワデザニモーをアメリカで調教したのが、このところ世間を騒がせているボビー・フランケルその人です。
(今年の2000ギニーを制したスーパースター、フランケル Frankel は、その名をフランケル師に因んで命名されたことは以前にも紹介しました)

更に、ベルモントの項でも紹介しましたが、オーナーはチーム・ヴァロー・インターナショナル。ダービー制覇の直前、ボーゲイ・ハンデにも勝ったこの日最高に幸せなオーナー・グループですね。
チームのリーダーはかつてブラッド・ホース誌で健筆を揮ったバリー・アーウィン氏。氏を筆頭にするこのオーナーグループは、1997年のダービーで2着に入ったこともあります。もちろん今回がダービー初制覇。
長年競馬を見、また書いてきたアーウィン氏は、多くの名馬を見てきました。語りたい話題は尽きないことでしょう。

全馬が完走しましたが、アーチアーチアーチ Archarcharch が脚部に故障が発覚、救急車で運ばれましたが、命に別状は無い由。手術は必要だけれども、生命の危険を伴うものにはならないと、獣医から発表がありました。

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