2011クラシック馬のプロフィール(5)

今回と次回でアイルランドのギニーに勝った馬を取り上げます。先ずは愛2000ギニー馬ロデリック・オコンナー Roderic O’Connor から。

ロデリック・オコンナーは、父ガリレオ Galileo 母シークレット・ガーデン Secret Garden 、母の父デインヒル Danehill という血統。今期のクラシックを次々と制しているガリレオの1頭です。

しかし話題は父馬のことではなく、母の系統を探るのがクラシカル・ウォッチの本来のテーマです。
さて母シークレット・ガーデン(1999年、鹿毛)は6戦2勝、今は亡きロバート・サングスター氏の勝負服で走っていた馬です。3歳時にアスコット競馬場で7ハロンの牝馬限定のリステッド戦(オクトーバー・ステークス)に勝ちました。

繁殖に上がったシークレット・ガーデンは、これまで連続して4頭の勝馬を出しています。列記すると、

2005年 コヴァート・アクション Covert Action (鹿毛、牡、父グランド・スラム Grand Slam) 13戦3勝
2006年 ウェザースタッフ Weatherstaff (栗毛、せん、父エルーシヴ・クォリティー Elusive Quality) 2戦1勝
2007年 バーネット Burnett (鹿毛、牡、父ダイナフォーマー Dynaformer) 2戦1勝
2008年 ロデリック・オコンナー

つまり4番仔にして4頭目の勝馬がクラシック・ホースということになります。

初仔のコヴァート・アクションはアメリカで走っている馬。
2番目のウェザースタッフが勝ったのは6ハロン戦で、2008年にサイレニア・ステークスで3着に入ったのが最も目立つ成績。マーク・ジョンストン厩舎にいましたが、その後ゴドルフィンに移籍、未だに競馬場には姿を見せていません。
3番仔バーネットも2歳のデビュー戦(1マイル)に勝ちましたが、その後の4戦ではカテリック競馬場の1マイル半のレースで5着になったのが最後。これもゴドルフィン所属の馬です。

2代母シャラモント Chalamont (1993年、栗毛、父クリス Kris)も6戦2勝で、勝鞍は6ハロンのみ。
シークレット・ガーデン以外の産駒では、テキサス・ヒル Texas Hill (2000年、せん、父デインヒル Danehill)が2歳の終わりに7ハロン戦に勝って期待されたものの、その後は競馬に出ること事が出来ず。
またレディー・アキテーヌ Lady Aquitaine (2005年、牝、父エル・プラード El Prado)も1勝どまりで、ケンプトン競馬場のサイレニア・ステークス(ポリトラック)で3着、チーヴリー・パーク・ステークスは7着に終わっています。

しかし3代母ダータル Durtal (1974年、鹿毛、父リファール Lyphard)にまで遡ると重要な馬が続出。ダータル自身は2歳牝馬のGⅠ戦チーヴリー・パーク・ステークスに勝ち、仏1000ギニーは2着。
エプサム・オークスでは不運にもラチに激突、騎乗していたレスター・ピゴットの鐙が外れず逸走してファンが悲鳴を上げるというシーンがありました。幸いピゴットに怪我はありませんでしたが、これがダータルの最後のレースとなりました。

ダータルの産駒では何と言ってもアスコット・ゴールド・カップに二度、グッドウッド・カップとサガロ・ステークスも制した名ステイヤー、ギルドラン Gildoran を出しています。

ダータルの母、即ちロデリック・オコンナーの4代母デルナ Derna (1961年、鹿毛、父サニー・ボーイ Sunny Boy)は凱旋門賞馬デトロイト Detroit の母であり、デトロイトの仔カーネギー Carnegie もまた凱旋門賞を制して母子2代の凱旋門賞馬と言う偉業を達成しています。

以上、ロデリック・オコンナーの牝系は、ここ2代ほどはスプリンターを中心に期待に応えられない傾向が続いていますが、堂々たるクラシック・ファミリー。何代にも亘ってサングスター氏が育んできた長距離系でもあります。

最後にロデリック・オコンナーの馬名について。てっきり私は19世紀イギリスの外交官、サー・ニコラス・ロデリック・オコンナー Sir Nicholas Roderic O’Conor のことかと思っていましたが、これは違うそうです。良く見れば c が一つしかありませんからね(オコナーと表記すべきか)。
正しくは、12世紀北部アイルランド(北アイルランドじゃありません)のコンノート地方の王様の名前だそうです。コンノート Connaught は現在もアイルランド北部の州の一つで、ゴールウェイ Galway を擁する地方。手元の地図(小学館/世界大地図)では「コノハト」と表記されています。
クールモアの馬には歴史上の人物の名から採った名前が多くあります。ジョージ・ワシントン、アルフレッド・ノーベル、ジョージバーナードショウ、ヤン・フェルメールなどなど。そもそもガリレオもその系列の1頭でしょう。

ファミリー・ナンバーは、16-C 。

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