2011クラシック馬のプロフィール(10)

今回は、先の日曜日にアイルランド・ダービーを制したトレジャー・ビーチ Treasure Beach を取り上げましょう。

トレジャー・ビーチは、父ガリレオ Galileo 、母オノリーヌ Honorine 、母の父マーク・オブ・エスティーム Mark of Esteem という血統。
当シリーズでは主にクラシック馬の牝系を中心に考察していますが、今度ばかりは父ガリレオにも簡単に触れなければなりますまい。

トレジャー・ビーチの愛ダービーは、今年の英愛仏クラシックに於けるガリレオの6勝目のクラシックとなります。
即ち、英2000ギニーのフランケル Frankel 、仏1000ギニーと仏オークスのゴールデン・ライラック Golden Lilac 、愛2000ギニーのロデリック・オコンナー Roderic O’Connor 、愛1000ギニーのミスティー・フォー・ミー Misty For Me 、そしてトレジャー・ビーチ。
今シーズンのクラシックは残すところ愛オークスと英セントレジャーだけ(愛セントレジャーと仏セントレジャーは古馬に解放されたため、最早クラシックとしての性格は失われました)になりましたが、たとえガリレオ産駒が残り二つのクラシックに勝てなくとも、ガリレオのクラシック制覇率はほぼ5割という驚異的な記録になります。

またガリレオ産駒が愛ダービーを制したのは3頭目で、ソルジャー・オブ・フォーチュン Soldier Of Fortune 、去年のケープ・ブランコ Cape Blanco に次ぐものとなります。
更に今年の2着馬セヴィル Seville もガリレオ産駒でしたが、去年の2着馬ミダス・タッチ Midas Touch も同じ、2年連続でガリレオ産駒のワン・ツー・フィニッシュと言う快挙を成し遂げたことにもなります。

もう一つ加えれば、トレジャー・ビーチはガリレオにとって22頭目のGⅠ馬になる由。もし血統10大ニュースなるものがあるとすれば、今年の第1位は「ガリレオ産駒のクラシック独占」で早くも決まり、といったところでしょうね。

以上でガリレオは終わりにして、トレジャー・ビーチの牝系を探ることにしましょう。

母オノリーヌ(2000年、鹿毛)は16戦3勝。アイルランド産馬(レベッカ・フィップス夫人)ですが、2009年に自殺した故ピップ・ペイン師がニューマーケットで調教した馬。
2歳から4歳まで走り、勝鞍は3歳時ヤーマスの1マイルとドンカスターの1マイル、それに4歳時ノッティンガムの10ハロンでのもの。いずれもハンデ戦でした。リステッド戦に挑戦したことはあるものの、パターン・レースの経験はありません。

繁殖に上がったオノリーヌの初産駒はアーリー・モーニング・レイン Early Morning Rain (2006年、鹿毛、牝馬、父ロック・オブ・ジブラルタール Rock of Gibraltar)で、3歳時に2戦しただけ、勝鞍はありません。
1年空胎のあと、オノリーヌの2番仔がトレジャー・ビーチとなります。この後はケープ・クロス Cape Crross のイヤリングが続き、去年はオーソライズド Authorized に種付けしたという報告が伝わっています。

トレジャー・ビーチの2代母はブルー・ウォーター Blue Water (1992年、黒鹿毛、父ベーリング Bering)で、15戦5勝。フランスで走った馬で、勝鞍は1マイルから1マイル半まで。2400メートルのリステッド戦(エヴリ競馬場のトゥーレール賞)の勝利が最も重要な記録です。(エヴリは現在では閉鎖されたパリ地区の競馬場)

ブルー・ウォーターの初仔インディアン・クリーク Indian Creek (1998年、黒鹿毛、牡、父インディアン・リッジ Indian Ridge)は、スプリンターの父を持ちながらスタミナもあり、5歳時には初めて挑戦した1マイル半の距離で見事にハードウィック・ステークス(ロイヤル・アスコット)を制覇、競走馬の距離適性にはあくまでも牝系が重要であることを立証した存在でもあります。(通算では18戦6勝)
またインディアン・クリークの全弟でオノリーヌの半弟にあたるデザート・デュー Desert Dew (2004年、栗毛、せん、父インディアン・リッジ)は6戦2勝、サンダウンのエッシャー・カップ(1マイル)に勝った馬、やはり父以上のスタミナを有していました。

トレジャー・ビーチの3代母シャイニング・ウォーター Shining Water (1985年、黒鹿毛、父リヴァーマン Riverman)は10戦1勝。これもフランスでの競走歴で、勝鞍は2000メートル。
更に4代母ラディアンス Radiance (1979年、鹿毛、父ブレイクニー Blakeney)もフランス馬で、コリダ賞(GⅢ)に勝って2400メートルのスタミナを持っていた馬です。

ラディアンスからはロイヤル・アスコットのリブルスデール・ステークス(1マイル半)にも出走したことのあるサン・オン・ザ・シー Sun On The Sea も出てました。

このファミリーを更に遡ると、9代母に高名なライオネル・ホリデイ少佐の基礎牝馬ロスト・ソウル Lost Soul が登場します。
ロスト・ソウルは競走馬としても優れていましたが、「繁殖牝馬の母」として名を残し、彼女の7頭の娘たちからは綺羅星の如くに名馬が産まれました。
曰く、ニーシャム・ベル Neasham Belle 、ナレーター Narrator 、ネザートン・メイド Netherton Maid 、ヘザーセット Hethersett 、チャッツワース Chatsworth 、パイレート・キング Pirate King 、パンバード・キング Pampered King 等々。

最後に一つ、トレジャー・ビーチはガリレオとマーク・オブ・エスティーム牝馬との配合で、生産界では黄金の配合と呼ばれたサドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells とダーシャーン Darshaan 牝馬の配合の第二世代に当たります。
即ちガリレオはサドラーズ・ウェルズの後継馬であり、マーク・オブ・エスティームはダーシャーンの代表産駒だからですね。
トレジャー・ビーチは、正に配合の妙から生まれたクラシック馬と言えましょう。

ファミリー・ナンバーは、21-a 。

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