2011クラシック馬のプロフィール(1)

今年もヨーロッパ3国のクラシック勝馬の血統をウォッチングして行きましょう。拙ブログのメイン・テーマであります。

今年の第1回は、もちろん2000ギニーを圧勝したフランケル Frankel 。調教するヘンリー・セシル師自身がダービーを克服できるスタミナに疑問符を付けていますが、その辺りを中心に見ていきます。

フランケルは父ガリレオ Galileo 、母カインド Kind (2001年、鹿毛)、母の父デインヒル Danehill という血統。父は言うまでもなく、先日亡くなったサドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells の最大の後継馬。産駒にスタミナを伝える典型的な血脈と言えるでしょう。

で、問題はカインド。母カインドは通算で13戦6勝。2歳から4歳まで走りましたが、最も充実していたのは3歳時で、5連勝した実績があります。
ロジャー・チャールトン厩舎に所属し、2歳の初勝利こそ7ハロンでしたが、その後は5ハロンから6ハロンまで、リステッド戦にも2勝しています。パターン・レースではアイルランドのバリオーガン・ステークス(GⅢ、6ハロン)に遠征して3着でした。
これだけを見るとスプリンター血統と思われるでしょうが、このファミリーは未だ奥が深いのです。

繁殖に上がったカインドの初産駒はバレット・トレイン Bullet Train (2007年、牡、鹿毛、父サドラーズ・ウェルズ)。フランケルの一つ上の兄で、父はガリレオの父サドラーズ・ウェルズですからフランケルと極めて近い配合。この馬もヘンリー・セシル師が調教しており、去年3歳時にはリングフィールド・ダービー・トライアルに勝っているのですね。
ダービーより100メートルほど短い距離ですが、2着に2馬身4分の1差を付ける逃げ切り勝ちでした。しかし本番のダービーでは最下位に終わり、その後の成績もパッとしません。

次に2代母レインボウ・レイク Rainbow Lake (1990年、鹿毛、父レインボウ・クエスト Rainbow Quest)を見てみましょう。
この馬は6戦3勝。ランカシャー・オークス(GⅢ、11.9ハロン)を7馬身差で圧勝しています。レインボウ・レイクはオークスには出走せず、ヨークシャー・オークスやパーク・ヒル・ステークスに駒を進めましたが、フランケルの兄バレット・トレイン同様に本来の実力を取り戻すことはありませんでした。彼女もまた、セシル調教師の元にあった競走馬です。

レインボウ・レイクの子供たちは、スプリンターだったカインドを除いて皆長距離を得意としました。代表格はアイルランドのエイダン・オブライエンが調教したパワースコート Powerscourt (2000年、牡、鹿毛、父サドラーズウェルズ)でしょう。配合を見ればフランケルと極めて近いことが判りますね。
パワースコートは2歳時にレーシング・ポスト・トロフィー(GⅠ、1マイル)に勝ち、3歳時はグレート・ヴォルティジュール・ステークス(GⅡ)に勝って愛セントレジャーが3着。4歳になるとトトソルズ・ゴールド・カップ(GⅠ)で二つ目のGⅠを制し、米国に遠征してアーリントン・ミリオンで1着入線するも進路妨害で4着降着。更にブリーダーズカップ・ターフは3着。
更に1年、5歳も現役に留まって再度アーリントン・ミリオンに挑戦し、今度は文句なく勝って前年の屈辱を雪ぎます。現在はトルコで種牡馬。

この他レインボウ・レイクの産駒にはマラード・ハンデ2着のプリミング Brimming 、勝馬のウエストレイク Westlake やアンナウェア Unaware など、どれも少なくとも1マイル半のスタミナを持つ馬たちでした。
レインボウ・レイクの最も最近の仔、アリゾナ・ジェウェル Arizona Jewel はフランケルと同期の馬で、これまたセシル厩舎に所属。去年の10月に不良馬場の1マイル戦にデビューして3着に入り、3歳になってからの成長に望みが託されています。

3代母ロックフェスト Rockfest (1979年、栗毛、父ステージ・ドア・ジョニー Stage Door Johnny)は10戦2勝。2勝は2歳時の7ハロン戦と1マイル戦でのもので、3歳時にはリングフィールド・オークス・トライアル(12ハロン)で2着に入り、スタミナのあることを証明しています。

ロックフェストの産駒を詳しく調べる余裕はありませんが、ロック・ファルコン Rock Falcon という馬がシーズン後半で成績を大きく落とし、バレット・トレインやレインボウ・レイクと同じ道を歩んだことが気に掛かります。

正にこの点こそヘンリー・セシルが悩んでいる所で、彼が実際に調教したフランケルのファミリーに見られる共通点なのかも知れません。
もう一点、2000ギニーでフランケルが演じて見せたように、自分でも制御できないほどのスピードがある、ということ。「血統的には」という物言いをすれば、フランケルのスタミナ面には何の問題もないでしょう。ましてや父ガリレオのスタミナを受け継いでいれば尚更です。
しかし結果論になるかも知れませんが、フランケルがシーズン後半で思わぬ敗退を繰り返すようなことがあるとすれば、それは牝系に流れる「血」故のことだと評価されるのでしょう。

フランケルの今後、ダービーへの去就は大いに注目されるところです。

ファミリー・ナンバーは、1-K。

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