一生に一度の牝馬

一方、フランスのドーヴィル競馬場も夏開催のクライマックスを迎えています。8月21日の昨日はGⅠ戦2鞍を含めて3鞍のG戦が行われました。馬場は good 、天候不順もあって固い馬場は望めません。

最初に行われたモルニー賞 Prix Morny (GⅠ、2歳牡牝、1200メートル)は、ドーヴィル2歳戦の頂点。出走馬は僅かに5頭でしたが、ロイヤル・アスコットでファンを驚かせたレディー・オーレリア Lady Aurelia が3対10の圧倒的1番人気。牡牝混合戦ですが、快速牝馬に叶う牡馬は見当たらない、ということでしょうか。
そのレディー・オーレリア、スピードが違うことを見せ付けんばかりにスタートからハナに立ち、後方2番手から追い込む3番人気(71対10)のアルラーマ Alrahma に4分の3差を付けての逃げ切り勝ち。最後方から追い込んだ最低人気(19対1)のピース・エンヴォイ Peace Envoy が頭差の3着。

ロイヤル・アスコット・レポートで紹介したように、レディー・オーレリアは毎年ヨーロッパに快速2歳馬を送り込んでいるアメリカのウェスリー・ワード師の管理馬。キーンランドでデビュー勝ちし、前走とモルニーでG戦を2連勝し3戦無敗。ワード師は“一生に一度出会えるかどうかの牝馬”と絶賛しています。このあとはニューマーケットのチーヴリー・パーク・ステークスでGⅠ2連勝を目指します。その後はもちろん、帰国してBC制覇が目標。
馬は3連勝ですが、騎乗したランフランコ・デットーリもモルニー賞、2014年のザ・ワウ・シグナル The Wow Signal 、2015年のシャラー Shalaa に続いて3連覇達成。デットーリの談話では、今回レディー・オーレリアは馬場に2度脚を取られ、特に2度目はバランスを崩したほど。これが無ければ2着以下に3馬身差は付けられていたとのこと。更に馬が成長していることを強調していました。
クラシック云々というタイプではなく、来年のコモンウェルス・カップに3対1のオッズが出されました。この時点でオブライエン厩舎のカラヴァッジョ Caravaggio と並んで1番人気。血統的には9-fという名門ファミリーですが、直接のGⅠ級活躍馬は牝系を9代遡らなければ登場せず、この意味でも異端の存在かもしれません。

続いてもGⅠ戦のジャン・ロマネ賞 Prix Jean Romanet (GⅠ、4歳上牝、2000メートル)。例年ドーヴィルで行われるGⅠ戦は、これが最後となります。10頭が出走しましたが、今年は傑出した存在が無く、前走カラーでGⅡ戦(キルボイ・エステート・ステークス)に勝ったボッカ・バチアータ Bocca Baciata が2対1の1番人気。
2番人気(18対5)のサヤナ Sayana が逃げましたが、中間地点でボッカ・バチアータが替っての逃げ。しかし本命馬の優位は長くは続かず、先行していた3番人気(43対10)のスピーディー・ボーディング Speedy Boarding が残り1ハロンで先頭に立ち、同時にスパートした7番人気(21対1)のエーム・ブルー Ame Bleue を1馬身4分の3差突き放して優勝。中団から伸びた5番人気(9対1)のステイプ・アマーク Steip Amach が3着に入りました。人気のボッカ・バチアータは10着最下位に惨敗。

これがGⅠ戦初勝利となるスピーディー・ボーディングは、英国のジェームス・ファーンショウ厩舎、フレデリック・ティリッキ騎乗の4歳馬。ティリッキ騎手にとってもGⅠ戦初制覇となります。またファーンショウ師はこのレース、一昨年のリボンズ Ribbons に続き2勝目となりました。
スピーディー・ボーディングは2走前、コリダ賞(GⅡ)に勝ちましたが、前走カラーのプリティー・ポリー・ステークス(GⅠ)は5頭立て5着と敗退。敗因はレース間隔が詰まっていたためと考えられ、次はオペラ賞かアスコットの牝馬チャンピオン戦に進む意向。間違っても両方使うということはなく、アスコットのチャンピオン・フィリーズ・アンド・メアーズには12対1のオッズが提示されています。

ドーヴィルのもう一鞍は、長距離のケルゴレー賞 Prix Kergorlay (GⅡ、3歳上、3000メートル)。8頭が参戦し、パリ祭当日のモーリス・ド・ニエィユ賞(GⅡ)をイーヴンの1番人気で制したカンダリーヤ Candarliya が今回もイーヴンで1番人気。
3番人気(11対2)のニアリー・コート Nearly Caught が逃げ、カンダリーヤは後方2番手から末脚勝負。本命馬が着実に追い上げましたが、今回は逃げたニアリー・コートを3馬身半捉え切れず2着に終わりました。同じく後方から伸びた6番人気(13対1)のトリップ・トゥー・ロードス Trip to Rhodos が短首差で3着。

これがG戦初勝利となるニアリー・コートは、英国のハギー・モリソン厩舎、ウンベルト・リスポリ騎乗の6歳せん馬。ジャン・ロマネ賞に続いて英国調教馬のG戦ダブルとなりました。先月同じドーヴィルで、同じ3000メートルのリステッド戦を、同じリスポリ騎乗で勝っており、師によればフランスの平坦コースが合っているとのこと。
これまで起伏の激しい英国のコースでは勝てませんでしたが、オーナーが90歳近い由で、次は同じく平坦コースのシャンティー競馬場で行われるカドラン賞でGⅠ獲りの夢を見たいとのことでした。

 

 

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