2011クラシック馬のプロフィール(6)

昨日に続いてアイルランドのクラシック・ホース。今日は愛1000ギニーのミスティー・フォー・ミー Misty For Me です。

ミスティー・フォー・ミーは父ガリレオ Galileo 、母バタフライ・コーヴ Butterfly Cove 、母の父ストーム・キャット Storm Cat という血統。牝系は代々アメリカ産が続いているファミリーです。

母バタフライ・コーヴ(2001年、黒鹿毛)は未出走馬。ミスティー・フォー・ミーは、その4番仔に当たります。一応列記すると、

2005年 ショウコール Showcall (鹿毛、牝、父キングマンボ Kingmambo) 1戦未勝利
2006年 ペダサス Pedasus (牡、父フサイチ・ペガサス Fusaichi Pegasus)
2007年 カム・タッチ・ザ・サン Come Touch The Sun (鹿毛、牝、父フサイチ・ペガサス) アメリカで3戦1勝(6ハロン)
2008年 ミスティー・フォー・ミー

このうち初仔のショウコールは、ミスティー・フォー・ミーと同じエイダン・オブライエン厩舎にいた馬です。

2代母ミスター・ピーズ・プリンセス Mr P’s Princess (1993年、鹿毛、父ミスター・プロスペクター Mr Prospector) も同じく未出走馬ながら、産駒には優れた馬が多く、主なものを紹介すると、

1997年 ファスリエフ Fasliev (鹿毛、牡、父ヌレエフ Nureyev) 5戦5勝
1998年 ドバイ・トゥー・ドバイ Dubai To Dubai (黒鹿毛、牡、父クリス・エス Kris S) 11戦1勝
1999年 マデルノ Maderno (栗毛、せん、父ヌレエフ) 7戦1勝
2001年 バタフライ・コーヴ
2003年 カマリンスカヤ Kamarinskaya (鹿毛、牝、父ストーム・キャット Storm Cat) 6戦2勝
2006年 エンプレス・オブ・フランス Empress of France (栗毛、牝、父ストーム・キャット) 10戦2勝

このうちファスリエフ、マデルノ、カマリンスカヤ、エンプレス・オブ・フランスの4頭は何れもオブライエン師が管理していた馬で、師はこのファミリーの特性を良く理解しているはずです。

ファスリエフは2歳時にフェニックス・ステークスとモルニー賞という二つのGⅠ戦に勝った無敗馬。2007年には日本の優駿牧場に輸入され、その産駒は来年デビューすることになっています。
マデルノはグリーナム・ステークス(GⅢ)で3着した馬で、その後香港に転籍し、チヌーク Chinook という馬名で香港のGⅢ戦に勝っているそうです。
バタフライ・コーヴの全妹に当たるカマリンスカヤは、7ハロンの1000ギニー・トライアル(GⅢ)に勝った馬。その初仔ママ・ルル Mama Lulu は2歳時の去年、6ハロン戦に勝ちました。
同じくバタフライ・コーヴの全妹エンプレス・オブ・フランスは、現在はオブライエン師の手を離れてアメリカに戻っています。

その他2番仔のドバイ・トゥー・ドバイはゴドルフィンの馬で、アメリカとUAEで出走、2マイルの距離までに勝鞍のあるステイヤーのようです。

更に3代母アンナ・キャンベル Anne Campbell (1973年、鹿毛、父ネヴァー・ベンド Never Bend)は11戦3勝、その産駒は7頭が勝馬になり、クラシック・レースでニアミスを経験しました。

即ち、1980年生まれのデザート・ワイン Desert Wine (鹿毛、牡、父ダマスカス Damascus)はケンタッキー・ダービーとプリークネス・ステークスが共に2着。ハリウッド・ゴールド・カップ、チャールズ・H・ストラブ・ステークス、カリフォルニアン・ハンデと三つのGⅠを制した強豪。
また1996年生まれの半弟メニフィー Manifee (鹿毛、牡、父ハーラン Harlan)も兄と全く同じケンタッキー・ダービーとプリークネス・ステークスで2着。GⅠ戦はハスケル・インヴィテーショナルとブルー・グラス・ステークスと2勝の実績があり、現在は韓国で種牡馬として珍重されているようです。

他にアンナ・キャンベルの仔ではアーサーン Arsaan (1986年、黒鹿毛、牝、父ヌレエフ)がイギリスで走り5戦2勝、1マイルのリステッド戦に勝利。
またデーム・シビル Dame Sybil という牝馬からは孫にレ・ザルク Les Sarc (父アーチ Arch)というスプリンターが出、ゴールデン・ジュビリー・ステークスとジュライ・カップの二つのGⅠ戦を制しました。

オブライエン師はミスティー・フォー・ミーのオークス挑戦を明らかにしましたが、この牝系の馬を多く手掛けているだけに、長距離戦挑戦にはそれなりの根拠があるのでしょう。師の判断を尊重したいと思います。

なお、ミスティー・フォー・ミーの5代血統表を見ていて面白いのは、ノーザン・ダンサー Northern Dancer とミスター・プロスペクターがどちらも3×4でインブリードしていること。
父ガリレオと母の父ストーム・キャットが共にノーザン・ダンサーの直系、ガリレオの母の父と2代母の父がミスター・プロスペクターですね。

ノーザン・ダンサーとミスター・プロスペクターこそ、現在のサラブレッドの父系を二分するサイヤー・ラインの代表と言えるでしょう。その意味でも注目される血統でしょう。

ファミリー・ナンバーは、16-h 。

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