ロンシャンとカラー

日曜日のヨーロッパ、注目すべきレースが目白押しでした。まずロンシャンから。
凱旋門賞へ向けて、同じ距離(2400メートル)で三つのトライアルが行われています。例年通り。
ヴェルメイユ賞(GⅠ、3歳上牝、2400メートル)。古馬にも開放されるようになって3年目のレースです。出走馬は12頭。何と言っても大注目は無敗のザルカヴァ Zarkava 。アガ・カーンの持ち馬、アラン・ロワイヤー=デュプレ調教、主戦騎手はクリストフ・スミオンです。
1対2の圧倒的本命でしたが、死角を並べ立てる論調もありました。仏オークス以来の久し振りであること、事前(火曜日)の調教が思わしくなかったこと、2400メートルという距離に適正が無いのでは等々。
しかし結果はどれも全く問題になりませんでした。ゆっくりとしたスタートから終始最後方を進み、最後の直線で一気に進出、ムチを一切使わず2着に2馬身差の圧勝。馬なりでしたね。
2着はダー・レ・ミ Dar Re Mi 、3着は更に半馬身でトリート・ジェントリー Treat Gently が入りました。オブライエンの3頭組では、アドアード Adored の5着が最高。
ザルカヴァはこれで6戦6勝。凱旋門賞の1番人気になっています。
牝馬の凱旋門賞勝利は1970年代には度々ありましたが、1993年のアーバン・シー Urban Sea 以来出ていません。ヴェルメイユ=凱旋門ダブルとなると、29年前のスリー・トロイカス Three Troikas 以後達成されていません。ザルカヴァが偉業を達成できるか!
ニエル賞(GⅡ、3歳、2400メートル)は7頭立て。仏ダービー以来の出走となるヴィジョン・デタ Vision D’Etat が11対10の1番人気に支持され、見事に期待に応えています。リボー調教師、メンディザバル騎手のコンビ。
2着はハナ差でアイデアル・ワールド Ideal World 、3着は1馬身半でセンテニアル Centennial でした。パリ大賞典2着のプロスペクト・ウェルズ Prospect Wells は前半で引っ掛かってしまい、スタミナをなくして6着に惨敗。
勝ったヴィジョン・デタは、これが105日ぶりのレース、無敗のまま凱旋門賞に向かうことになりますが、オッズは7対1から9対1の間。
このニエル賞、ここ10年では最も信頼されている凱旋門トライアルで、このトライアル出走から凱旋門に勝ったのが7頭、ニエル=凱旋門ダブルは10年で6頭という高い確立となっています。復習すると、
1998年 サガミックス Sagamix
1999年 モンジュー Montjeux
2000年 シンダー Sinndar
2003年 ダラカニ Dalakani
2005年 ハリケーン・ラン Hurricane Run
2006年 レイル・リンク Rail Link
ヴィジョン・デタがこのリストに仲間入りできるか!
フォア賞(GⅡ、4歳上、2400メートル)は、例年少頭数で争われますが、今年も6頭と寂しい顔ぶれ。中では一番実績のあるザンベジ・サン Zambesi Sun に人気が集まり、9対10の1番人気。ここは貫録勝ちでした。
2着は半馬身でシャパレルリ Shaparelli 、3着は更に1馬身半でブラジルのライト・グリーン Light Green 。メイショウサムソンが出ていたらどんな結果だったでしょうね。
ザンベジ・サンはパスカル・ベイリー厩舎、ステファン・パスキエの騎乗です。勝つには勝ったものの、デットーリ騎乗のシャパレルリが驚異的な粘り、最後は首の上げ下げを力でねじ伏せた格好。3歳時のパリ大賞典以来の勝ち星となりました。
ただ、フォア賞の勝タイムは三つのトライアルでは最も遅く、凱旋門賞の事前オッズの対象になっているのもザンベジ・サン1頭。この勝利で出たオッズは20対1。本番で大穴を開けられるか!
以上、凱旋門賞のトライアルでしたが、アイルランドのカラー競馬場では来年のクラシックを占う重要な2歳戦が行われています。
ナショナル・ステークス(GⅠ、2歳、7ハロン)。アイルランドでは今年最後のGⅠ戦です。
事前の予想では、2頭の無敗馬の対決。馬場が重いこともあって、前走(フューチュリティー)を同じ重馬場で制したオックス厩舎のアラザン Arazan が9対10で1番人気、オブライエン厩舎のマスタークラフツマン Mastercraftsman が9対4で2番人気です。
レースはオブライエン厩舎のペースメーカー、シー・オブ・マーマラ Sea of Marmara が引っ張る形で進み、早めに抜け出したシャウィール Shaweel に人気2頭が襲い掛かる、かに見えました。しかしキネーン騎乗のアラザンは意外にも動かず、ムルタ騎手の絶妙のタイミングで追い込んだマスタークラフツマンが短頭差でシャウィールを捉えたところがゴール。3着アラザンは2馬身半という決定的な差を付けられてしまいました。
このレースの評価は割れています。オブライエン師は、勝ったマスタークラフツマンは休み明けと重馬場が原因で、本来の走りではなかったことを強調しています。とは言いながら、オブライエン師にとってこれはナショナル・ステークス7勝目。来年の2000ギニー有力候補の1頭であることに違いはありません。
これまでのオブライエン師のナショナル・ステークス勝馬は、
1996年 デザート・キング Desert King
1997年 キング・オブ・キングス King of Kings
2000年 ベケット Beckett
2001年 ホーク・キング Hawk King
2003年 ワン・クール・キャット One Cool Cat
2005年 ジョージ・ワシントン George Washington
2008年 マスタークラフツマン Mastercraftsman
この馬たちがその後どんな成績だったか。それは皆さんで調べて下さいな。
重の7ハロンを追い込んで制した事実。少なくともマスタークラフツマンには、来年の1マイルでの距離不安は無いものと考えられましょう。

 

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