不在中の欧州競馬(2)
前回に続いて先週末のヨーロッパ競馬、8月12日の金曜日にドーヴィル競馬場で行われたパターン・レース2鞍です。馬場状態は good 。
この二つのレースには共通点があって、それはどちらも牝馬のための一戦であること、どちらも1番人気の馬が大差で勝ったこと、です。
先ず9頭立てで行われたミネルヴァ賞 Prix Minerve (GⅢ、3歳牝、2500メートル)は、6対4の1番人気に支持されたシャリタ Shareta が、2着に入ったパシフィック Pacifique に3馬身の大差を付けて圧勝しています。3着は頭差でポリゴン Polygon 。
シャリタは名前からも想像できるように、アガ・カーン所有の名門ファミリー出身の馬。アラン・ロワイヤー=デュプレ師が調教し、クリストフ・ルメールが騎乗していました。
これが未だ6戦目、1勝馬で仏オークスに挑戦して敗れました(9頭立て7着)が、そのあとロンシャンのリステッド戦(2400メートル)を制しての連勝。当然ながらヴェルメイユ賞を狙ってくるでしょう。
もう一鞍がリューレー賞 Prix de Lieurey (GⅢ、3歳牝、1600メートル)。ミネルヴァが中長距離戦だったのに対し、こちらはマイラーのための一戦。13頭が出走してきました。
ここを7対2の本命で制したのは、これまたキャリア6戦目に当たるサンディーズ・チャーム Sandy’s Charm 。2着ミックスト・インテンション Mixed Intention とは5馬身の大差でした。3着は更に半馬身差でリズム・オブ・ライト Rhythm of Light 。
サンディーズ・チャームを管理するのはフランソワ・ロホー師、鞍上はフランソワ=クサヴィエ・ベルトラス。今シーズンは新馬戦2着の後、リステッド戦も含めて3連勝で初のパターン・レース制覇を達成しています。
続いて翌日、8月13日(土曜日)に英国ニューバリー競馬場で行われたパターン・レース2鞍も紹介しちゃいましょう。馬場状態は同じく good 、今年の3歳馬のレヴェルの高さを象徴するような内容でした。現地では夕方のBBCのスポーツ・ニュースでもチラッと扱っていましたっけ。
先ずジェフリー・フリーア・ステークス Geoffrey Freer S (GⅢ、3歳上、1マイル5ハロン61ヤード)は、セントレジャーに、凱旋門賞にと繋がっていく重要な秋へ向けてのトライアル戦。
1頭取り消して10頭が出走、4頭が3歳馬というメンバーが揃いました。
10対3の1番人気に支持されたのは4歳牝馬のGⅢ馬ミーズナー Meeznah でしたが、期待を裏切って7着敗退。優勝は4対1の3番人気、3歳のセンサス Census でした。
1馬身4分の1差2着も3歳馬ブラウン・パンサー Brown Panther (7対2の2番人気)が入って3歳馬のワン・ツー・フィニッシュ。更に4馬身半の差を付けられ、漸く5歳のタイムズ・アップ Times Up が3着という結果になっています。
実は1・2着の2頭は、ロイヤル・アスコットのキング・ジョージ5世ステークス(ハンデ戦)で優勝を争った仲。その時とは着順が入れ替わりました(アスコットではセンサスが3ポンド重い負担重量を背負っていましたが、今回は同斤)が、両馬ともセントレジャーを目標にしているステイヤーなのですね。
センサスはリチャード・ハノン厩舎、リチャード・ヒューズ騎乗の黄金コンビですが、スタートをミス。ヒューズは直ぐに馬に気合を入れて先行馬に取り付く内容でした。そのヒューズ騎手によれば、同馬は大柄で未熟、使えば使うほど良くなるレジャー・タイプの馬だそうで、余り早目に先頭に立ちたくはなかったそうですが、この日は自然に他馬が止まってしまったとか。
またハノン師のコメントでは、当初ヨーク(グレート・ヴォルティジュール)も考えたそうですが、長距離移動で馬に余り負担を掛けたくなくてこちらに回った由。
この結果、センサスのセントレジャーへのオッズは6対1に上がりました。一方2着のブラウン・パンサーは前走ドイツ・ダービーで5着したステイヤー、こちらのレジャーへのオッズは10対1が相場になっています。
続いては直線コースの7ハロンで争われるハンガーフォード・ステークス Hungerford S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。ここは3頭が取り消し、9頭立て。出走馬中3頭が3歳馬で、1・2番人気ともにクラシック世代が期待を集めました。
優勝は5対4の1番人気に支持されたエクスセレブレーション Excelebration 。2着ビーコン・ロッジ Beacon Lodge (6歳馬)に何と6馬身もの大差を付ける圧勝で観衆の度肝を抜いています。更に半馬身差3着に5歳馬ミュジアー Musir の順。2番人気(5対2)の3歳馬デュバウィ・ゴールド Dubawi Gold は最後の競り合いでやや不利があり4着止まり。
マルコ・ボッティ厩舎、アラン・カービー騎乗のエクスセレブレーションは、これが今シーズン4戦目。フランケル Frankel に二度挑戦して後塵を拝していた実力馬で(一つはグリーナム・ステークス、そしてセント・ジェームス・パレス・ステークスは3着)、ドイツ2000ギニーを制したクラシック馬でもあります。
ボッティ師によれば、同馬はフランケルと同期だったのが不運で、普通の年ならとっくにGⅠホースになっている器とのこと。また騎乗したカービーも、これまでは掛かり気味だった気性も今回は我慢が利き、調教師の仕事と馬の素質を絶賛しています。タイムこそ平凡ながら、このクラスで6馬身差を付ける内容は正にGⅠ並みの実力と評価すべきでしょう。
秋のクィーン・エリザベスⅡ世ステークスでのフランケルとの三度目の決戦が見所ですが、陣営ではその前にムーラン・ド・ロンシャンを制してGⅠタイトルを獲るプランのようです。
以上が先週末のレポート。気持ちとしては早くヨーク競馬場のイボア開催を紹介したいのですが、やはり順序を追って記録していくのが筋でしょう。結果は既に出ていますが、もう少し待ってくださいな。
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