日曜日のトライアルは?

日曜日のヨーロッパも大忙し。フランスとアイルランドでパターン・レースのオンパレードです。
今回はフランスから行きましょう。日本から3頭も挑戦していることですし・・・。

10月第1週の競馬の祭典を3週間後に控えて、昨日(9月11日)のロンシャン競馬場は夫々のトライアル戦が行われています。
更に、去年までは9月第1週に組まれていたムーラン・ド・ロンシャン賞が1週間後のこの週に回ってきたこともあり、8レースの内6レースがパターン戦という豪華版になりました。
凱旋門賞のトライアルが気になるところでしょうが、ここは行われたレース順に回顧していきましょう。尚、馬場状態は good to soft 。雨も降って、スタミナの無い馬には苦しいレースになったようです。

先ずは第1レースのプティ・クーヴェール賞 Prix du Petit Couvert (GⅢ、3歳上、1000メートル)。言うまでもなく、アベイ・ド・ロンシャン賞の前哨戦になります。

12頭立て。3対1の1番人気に支持されたスペクタクル・デュ・マース Spectacle Du Mars は、ドーヴィルで同じ1000メートルのハンデ戦に勝った馬。
しかし本命馬は9着と惨敗し、優勝は英国から挑戦したプロヒビット Prohibit 、5対1の3番人気でした。キングズ・スタンド・ステークスに勝ったことによる7ポンドのペナルティーも物ともせず、マー・アデントロ Mar Adentro に頭差の貫録勝ちです。
1馬身半差3着には、2番人気(7対2)で同じく英国のハミッシュ・マゴーナガル Hamish McGonagall 。スプリント路線はイギリスが強いことを改めて立証した結果になりました。

ゴール前は大接戦になり、2着入線のクリストフ・スミオン騎手から異議申し立てがありましたが、ロンシャンの裁決委員から却下されています。勝馬に騎乗したジム・クロウリーによれば、“抗議なんてナンセンスだ。パトロール・フィルムを見れば判るように、コースを替えたのはスミオンの方だろぉ~”と憮然。
プロヒビットを管理するロバート・カウエル調教師は、乗車したユーロスターが事件に巻き込まれて(乗客の逮捕劇があったとか)ケント州のエブスフリート駅でストップ、ダイヤが大幅に遅れたためにロンシャンに間に合わなかったそうな。

続いては、日本馬が2頭参戦して話題のフォア賞 Prix Foy (GⅡ、4歳上、2400メートル)。古馬にとっての凱旋門賞トライアルで、これまでもここから多くの凱旋門賞馬を輩出しているレース。
例年、出走馬は少ないのが常ですが、今年は僅かに4頭立て。しかも半分の2頭は日本からの遠征馬というメンバーでした。

ここは、実績と実力から7対10の断然1番人気に支持されたサラフィナ Sarafina が、危ない場面もありましたが、順当に実力を見せ付けました。
レースはナカヤマフェスタ Nakayama Festa がハナに立つ展開。それを2番人気(2対1)のセント・ニコラス・アビー St Nicholas Abbey が追走、サラフィナは最後方に待機します。

セント・ニコラス・アビーが仕掛けてナカヤマフェスタに並び掛け、ヒルノダムール Hiruno d’Amour が外から追い上げると、2頭が壁になってサラフィナは行き場を失います。
それでも内をこじ開けるように隙間を作ると、そこからは女王の貫録。クリストフ・ルメール騎手はムチを使うことなくヒルノダムールを短首差抑えて優勝。2馬身半差3着にセント・ニコラス・アビー、ナカヤマフェスタは更に半馬身差で4着に終わりました。
1・2着馬による直線の攻防が審議の対象になりましたが、結局は着順通りで確定しています。

サラフィナを管理するアラン・ド・ロワイヤー=デュプレ師は、サン=クルー大賞典(優勝)以来3ヶ月ぶりのレースだったこと、それでも無理せずに勝ったこと、最後は未だまだ余裕があったことを挙げ、本番に向け更に良化することを強調していました。
各ブックメーカーもサラフィナのレース内容に反応、凱旋門賞のオッズを5対2から4対1程度に上げています。
サラフィナは今季5戦目に本番を迎える計算。去年は不利があったことも考慮すると、今年の凱旋門賞の中心は彼女になると思われます。日本の2頭は、トライアル以上の上積が無ければ逆転は難しいと考えますが、競馬はやって見なければ判りません。

続いても凱旋門賞のトライアルで、こちらは3歳馬のみによるニエル賞 Prix Niel (GⅡ、3歳、2400メートル)。日本からはナカヤマナイト Nakayama Knight の参戦がニュースになっていました。

6頭立て。3対5の1番人気に支持されたのは、パリ大賞典の覇者メアーンドル Meandre 。相手は2番人気(12対5)のリライアブル・マン Reliable Man で依存の無い処でしょう。
結果もほぼ人気通り。仏ダービー馬リライアブル・マンが、パリ大賞典馬メアーンドルに2馬身差を付けて逆転勝利です。短首差3着に勝馬と同厩のヴァダマール Vadamar 。

勝馬はアラン・ド・ロワイヤー=デュプレ厩舎、一つ前のフォア賞に続くダブル達成です。こちらに騎乗したのはジェラール・モッセ。
これでリライアブル・マンは、12頭目のニエル/凱旋門ダブルを目指します。同馬の本番へのオッズは7対1に急上昇、デュプレ師のワン・ツーも視野に入ってきた感すらありますね。
師によれば、パリ大賞典の敗因は馬場が硬過ぎたことにある由。これが本来のリライアブル・マンの走りだそうです。

一方敗れたメアーンドル陣営、ファーブル厩舎は今夏ウイルスに見舞われ、仕上げは順調ではなかったのが敗因。元々メアーンドルには凱旋門賞への登録が無く、追加登録料を支払ってまで参戦するか否かは今後の馬の状態次第になるでしょう。
最初から最後までどん尻に終始したナカヤマナイトは、凱旋門賞は到底無理。恐らく同じ週に行われる別のG戦に使うことになると思われます。

そして愈々ムーラン・ド・ロンシャン賞 Prix du Moulin de Longchamp (GⅠ、3歳上、1600メートル)。今年は一周遅れ、本日のメイン・イヴェントでもあります。

1頭取り消して8頭立て。11対5の1番人気には、前走ハンガーフォード・ステークス(GⅡ)に快勝したエクスセレブレーション Excelebration が選ばれていました。

雨の降り頻るロンシャン、スタートでハンサム・マエストロ Handsome Maestro が恰も電気ショックを受けたように飛び出し、大逃げを打ちます。後続の先頭はリオ・デ・ラ・プラタ Rio De La Plata 。
直線、デットーリ騎乗のリオ・デ・ラ・プラタが先頭に立ちますが、本命エクスセレブレイションの末脚は抜群。最後は粘るリオ・デ・ラ・プラタに1馬身半差を付けて見事期待に応えました。GⅠレースは初戦はです。半馬身差3着にはラジサマン Rajsaman 。
以下、これも英国組のデュバウィ・ゴールド Dubawi Gold が4着、5着にロイヤル・ベンチ Royal bench の順。

勝ったエクスセレブレイションはマルコ・ボッティ厩舎の3歳馬。今期フランケル Frankel に二度挑戦していずれも歯が立たなかっただけに、ムーランの結果はフランケルの偉大さを後押しする結果にもなりました。
今回騎乗したジェイミー・スペンサーは、エクスセレブレイションには初騎乗。これまではアダム・カービーが乗っていましたが、同馬の所有権の一部がクールモアに売られたための処置でもあります。
ボッテイ師がGⅠ戦を制したのは、ジターノ・エルナンド Gitano Hernando がシンガポール国際レースに勝って以来二度目のこと。エクスセレブレイションの次走はアスコットのQEⅡ世かブリーダーズ・カップの予定ですが、あくまでもクールモアの意向で決定されるとのこと。クールモアの幹部は現在キーンランドの競りに出張中ですから、決定は彼らが帰国してからになりそうですね。

続いてもう一つのGⅠ戦、ヴェルメイユ賞 Prix Vermeille (GⅠ、3歳上牝、2400メートル)。

ここは6頭立ての断然1番人気(4対5)に支持されたガリコヴァ Galikova が期待通りに圧勝しています。2馬身半差2着にテストステローネ Testosterone 、更に首差3着がシャリータ Shareta 。
サラフィナと同じアガ・カーンのシャリタが逃げ、オリヴィエ・ペリエ騎乗のガリコヴァはやや掛かり気味に4番手に控える展開。シャリタは最後まで健闘しましたが、最後の100ヤードでのガリコヴァの末脚に屈しました。ゴール寸前で追い込んだテスタストローネが際どく2着に。

御存知ゴールディコヴァの妹を管理するのは、女傑と同じフレディー・ヘッド師。オーナーも同じウェルザイマー・ファミリーです。これで2400メートルの距離にも問題ないことが証明され、彼女の凱旋門賞へのオッズは5対1に上がりました。
陣営は当然ながら凱旋門賞を狙ってくるでしょうが、彼女は来年も現役に留まることが決まっています。大一番は4歳になってから、という計算が働いても不思議ではないでしょう。

最後はグラディアトゥール賞 Prix Gladiateur (GⅢ、4歳上、3100メートル)。カドラン賞、あるいは翌週のロイヤル・オーク賞の前哨戦と位置づけられる長距離戦です。

1頭取り消して9頭立て。13対10の1番人気にはアガ・カーン/デュプレ陣営のシャマノヴァ Shamanova でしたが、ゴール前の接戦で惜敗、3着に終わっています。
優勝は14対1の伏兵レイ・ハンター Ley Hunter 、短頭差2着にタック・ド・ボアストロン Tac De Boistron が入り、更に首差3着がシャマノヴァという結果。スローペースで最後はスプリントになったことが、本命馬の敗因でしょう。

レイ・ハンターはアガ・カーンのライヴァルでもあるゴドルフィンの馬で、アンドレ・ファーブル厩舎、ミケール・バルザロナ騎乗。前にも記したようにファーブル厩舎はウイルスの影響に悩まされていましたが、ここで復帰をアピールした形です。

以上、先週末のロンシャンからは最新の凱旋門賞候補が順当に仕上がっている様子が窺えました。サラフィナ、リライアブル・マン、ガリコヴァ、混戦と言われる今年の凱旋門を制するのはどの馬か・・・。

続いてアイルランドのカラー競馬場に向かいます。こちらの馬場も渋く、発表は yielding 。

先ずブランドフォード・ステークス Blandford S (GⅡ、3歳上牝、1マイル2ハロン)。1頭取り消して11頭立て。

11対8の1番人気に支持されたバイブル・ベルト Bible Belt は7着と惨敗し、優勝は9対1のマニエリー Manieree 。2着は3馬身4分の1差でサファイア Sapphire 、更に4馬身差3着にルック・アット・ミー Look At Me 。

勝ったマニエリーは、ジョン・オックス厩舎、ナイアル・マッカラー騎乗。スタートから飛ばして一人旅、鮮やかな逃げ切り勝ちでした。
オックス師によれば、マニエリーは馬場が柔らかいのが好走の絶対条件。この日は正に彼女好みの馬場になったことが勝因だそうです。秋はフランスも決して固い馬場にはなりません。師は密かにオペラ賞を狙っている様子でした。

続いてソロナウェー・ステークス Solonaway S (GⅢ、3歳上、1マイル)。2頭取り消して6頭立て。

ここは2対5の圧倒的1番人気に支持されたシティースケイプ Cityscape の貫録勝ち。2馬身半差2着にワイルド・ウインド Wild Wind 、更に同じく2馬身半差が付いて3着に逃げたアクロス・ザ・ライン Across The Rhine の順。2番手から抜け出す横綱相撲でした。

シティースケイプは英国のロジャー・チャールトン厩舎、スティーヴ・ドラウン騎乗。

最後にルネサンス・ステークス Renaissance S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。ここも1頭取り消して9頭立て。

ソロナウェーに続き、13対8の1番人気に支持されたビウィッチド Bewitched が期待に応えました。4分の3馬身差2着にデフィナイトリー Definightly 、更に半馬身差で3着はクロワサルタン Croisultan 。

勝馬は地元チャールズ・オブライエン厩舎の牝馬。去年もこのレースに勝っていましたから、2年連続制覇となります。ロイヤル・アスコットの惨敗、ヘイドック・スプリント・カップの敗退にも拘わらず、ここは支持を集めていました。
鞍上はジョニー・ムルタ。最後方からの追い込み勝ちです。

以上が長い一日となった日曜日の結果です。

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