9月最後のパターン・レース、と
今週は世界の競馬人の目がロンシャン競馬場に釘付けになっていますが、アイルランドのダンダルク競馬場でひっそりとパターン・レースが行われています。9月30日のこと。
午後6時に第1レースがスタートし、最終レース(第8レース)が午後8時半終了のイヴニング・ミーティング。コースはポリトラックで、馬場状態は芝コースとは異なる standard という発表です。ヨーロッパでは芝コース以外で行われる数少ないG戦の一つ、ダイアモンド・ステークス Diamond S (GⅢ、3歳上、1マイル2ハロン150ヤード)。
ここ2年の勝馬(2009年マスタークラフツマン Mastercraftsman、2010年ジターノ・ヘルナンド Gitano Hernando)はいずれもGⅠクラスの馬でしたが、今年はそのクラスの出走は無く、1頭取り消しの9頭立てで行われました。
人気は割れ、2対1の1番人気に並んだのは3歳馬のザヌガン Zanughan と古馬のボブ・ル・ボー Bob Le Beau 。
しかし優勝は13対2の3番人気、3番手から伸びたフリーダム Freedom でした。首差2着に5番手から伸びたハイ・ルーラー High Ruler が入り、人気の一角ザヌガンも最後方から追い上げましたが半馬身届かず3着。一方のボブ・ル・ボーは8着ブービー負けと期待を裏切りました。
1・2着は共にエイダン・オブライエン師が管理する3歳馬で、厩舎のワン・ツー・フィニッシュ。3歳馬が上位3着までを独占しています。
勝馬に騎乗したシーマス・ヘファーナン騎手は、凱旋門賞では人気になるソー・ユー・シンク So You Think に騎乗予定。この日もフリーダムの父ハリケーン・ラン Hurricane Run が凱旋門賞馬であることを意識して騎乗していたそうです。父に似て奥手のタイプとか。
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ここでチョッと話題を変えて凱旋門賞のこと。
枠順は昨日紹介した通りですが、人気を分け合うと見られていたサラフィナ Sarafina とソー・ユー・シンク So You Think が共に外枠を引いたことで何やら波乱ムードが漂ってきました。
実績の話をすると、ここ7年で2桁枠順の馬が3着までに来たのは3回しかないのですね。2005年、13番枠のバゴ Bago が3着。2009年に19番枠のカヴァリーマン Cavalryman が3着。そして去年、10番枠のナカヤマフェスタ2着。
この7年の勝馬の枠順を思い出すと、
2005年 6番枠 ハリケーン・ラン Hurricane Run
2006年 4番枠 レイル・リンク Rail Link
2007年 6番枠 ディラン・トーマス Dylan Thomas
2008年 1番枠 ザルカヴァ Zarkava
2009年 6番枠 シー・ザ・スターズ Sea The Stars
2010年 8番枠 ワークフォース Workforce
となります。6番枠が3度も勝っているのは象徴的でしょ。今年はセント・ニコラス・アビー St Nicholas Abbey が引きましたね。ヒルノダムールの1番枠もかつてザルカヴァが引いた枠ですから、強運の馬と言えそうです。
去年の覇者ワークフォースが今年も同じ8枠というのも不気味でしょう。
以上はここ7年のデータに限ったこと。その前を調べれば、2003年は14番枠のダラカニ Dalakhani が勝っていますし、2001年の勝馬サーキー Sakhee は15番スタートでした。データはあくまでもデータ。しかし外枠が不利であることも間違いない事実。これを克服して勝てば、やはりその馬は強いという事でしょうね。
トライアルの時点からここまでで話題になったことでは、キングジョージで変な負け方をしたワークフォースが結局出走を決めたことが挙げられましょう。
実はワークフォース、去年もキングジョージで凡走した後立て直し、多頭数の凱旋門を制しています。日本の報道では王者陥落説も流れていましたが、ここまでの成績だけで捨てることは出来ません。
加えて、落馬負傷で長期休養していたライアン・ムーアが本番に間に合ったのも朗報。落馬直後は今シーズンは絶望と思われていましたが、9月30日のアスコット競馬場で復帰を果たし、ギリギリで間に合いました。もちろん体調は万全ではないでしょうが、主戦騎手の復活は好材料には違いありますまい。
名手クリストフ・スミオンが騎乗停止処分を受けて凱旋門賞フェスティヴァルで騎乗できなくなったことも衝撃的なニュースでした。トライアルが行われた当日の最終レースで、スミオン騎乗の馬が斜行したことが原因で落馬事故が発生。スミオンは提訴して騎乗停止期間の短縮を訴えましたが、却下されました。
スミオンはダラカニとザルカヴァで二度凱旋門賞を制しており、彼の天才的な騎乗が見られないのは残念ではあります。尤も今年はスミオンが騎乗する可能性のある強豪は見当たりませんでしたから、有力各馬にとっては影響は少ないとも言えましょうか。
出走するか否かを迷っていた馬としては、ソー・ユー・シンクが出走に踏み切ったのが最大の話題。オブライエン師は同馬を2000メートルのスペシャリストと見ていて、2400メートルに不安が無い訳ではないようです。
しかし出身地の豪州では2マイル戦でも実績があり、こればかりは走って見なければ判りません。これまで南半球の馬が凱旋門賞に勝ったことは無く、もし勝てばソー・ユー・シンクが歴史を塗り替えることになります。
キングジョージに勝ったナサニエル Nathaniel は最後まで態度を明らかにしていませんでした。馬場状態が問題ということでしたが、結局は回避してチャンピオン・ステークスを選択。代わってゴスデン師はセントレジャー馬マスケッド・マーヴェル Masked Marvel を出してきました。最後の締切に10万ユーロの追加登録料を支払っての出走ですが、大金だけに期するところ大と見るべきでしょう。
同じ決定はパリ大賞典のメアーンドル Meandre にも言えること。凱旋門賞を7回も制覇しているアンドレ・ファーブルだけに、その一発は真に不気味ではありませんか。
ここに来てヒルノダムールの評価が高まってきたのも事実。調教が良かったこと、ペリエが絶賛したことなどが噂の出所のようですが、トライアルの内容、引いた枠順の良さなどから、日本馬が初制覇する可能性も決して低くはなさそうです。
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最後に。
当ブログのレポートは少し遅れることになります。去年もそうでしたが、今年も法事のために留守にせざるを得ません。本番が終わるころには帰宅していますが、前日の土曜日のロンシャン、同じくアメリカのスーパー・サタデイのレポートを先に纏めるのが順序と言うもの。
早くとも月曜日の午後になる予定ですが、何せ分量が多いので、火曜日までづれ込む可能性もあります。
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