クァルテット・エクセルシオ第22回東京定期演奏会

超個人的弦楽四重奏月間、昨日は上野の東京文化会館小ホールでクァルテット・エクセルシオの定期を楽しんできました。
東京文化会館開設50周年記念フェスティヴァルの協力公演の一つ、この日は大ホールでも歌劇「古事記」の公演が行われていて、文化会館も久し振りに賑っています。第22回定期のプログラムは、

モーツァルト/弦楽四重奏曲第9番イ長調K169
ドヴォルザーク/弦楽四重奏曲第14番変イ長調作品105
     ~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第8番ホ短調作品59-2「ラズモフスキー第2番」
 クァルテット・エクセルシオ

プログラムの最初に同団の挨拶が手短に纏められていますが、中々味わい深い選曲。即ち、モーツァルトは少年時代の作。続くドヴォルザークは晩年の創作から最後のクァルテット、そして後半がベートーヴェンの中期の傑作という構成。「エクセルシオの定期は作曲家の足跡をたどるシリーズとしてもご好評頂いております」ということなんですねぇ~。
今回のプログラムは11月2日に第7回京都定期演奏会で披露され、更に17日には恒例の試演会(奥沢の大瀧サロン)を経て東京定期に繋がっています。
私は17日も出掛けましたが、当日は試演会史上最多の参加者があり、“試演会も2回公演にしなくちゃネ” という冗談も出るほどでした。

ということで冒頭はモーツァルトのウィーン四重奏曲集から第9番。エクの初期モーツァルト・シリーズは今回が10曲目、ウィーン・セットからは3曲目です。(残るは3曲)
モーツァルトの初期13曲をナマで聴く機会は滅多にないし、CDでもいつも手が伸びる曲目ではありません。個人的にはエクが毎回の定期で取り上げてくれればこそ耳にすると言っても過言じゃありません。
正直なところ最初はプログラムのバランスを整えるための「前座」のような気持ちで聴いていましたが、最近では作品毎の個性に惹かれるようになってきました。これもエクのお蔭でしょう。

で、第9番。エクの会話では“何かに似てる”ということですね。それが「魔笛」というのは意外でした。第2楽章の第2主題(?)、ヴィオラの3連音符に乗って歌われるメロディーのことでしょうか。
私個人は、その第2楽章の3連音符が特徴だと思いました。ハ長調ピアノ協奏曲(K467)の第2楽章で3連音符が鳴り続けるのと似ていませんか? ま、あれほど鳴りっ放しじゃありませんが、タタタ・タタタのリズムが心地良く続きます。

もう一つは跳躍の大きなテーマ。第2楽章の主題、7小節目と8小節目に飛んでもなく音程差の大きいパッセージが出てきてビックリさせられますし、終楽章のロンド主題も1オクターヴの跳躍で出来ている主題ですね。
この二点で、多分忘れることの無い一品になりそうです。

2曲目はドヴォルザーク。定期演奏会のアーカイヴを見ると、ドヴォルザークが定期に登場するのは第3回(2002年)の作品51以来のことのようです。2002年の時点ではエクを知りませんでしたから、私としては初ドヴォルザークとなりました。
もちろん「アメリカ」は何度か聴きましたが、これまで定期では取り上げていません。

これまた個人的な好みを言わせて貰えば、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲では「アメリカ」より最後の2曲が断然優れていると思います。エクによればビミョーな曲で、アメリカ程アンサンブルに緊迫感が無いということですが、私には却ってそれが魅力。
特に第3楽章はドヴォルザークの本質が良く出ていると思いますね。第3部でヴィオラとチェロのピチカート(ドヴォルザークはピチカートの作曲家!)に乗り、ファーストが美しいメロディーを歌う。セカンドは微妙に細かい音符で旋律の装飾に回る。これこそ懐かしさの極みじゃないでしょうか。

聴かせるのは難しい作品のようですが、是非レパートリーに完全定着させ、繰り返し聴かせて欲しい一品です。確かにチェコの色を出すのは至難の業と思いますが、それだけに未だ進化の余地が残されている演奏と聴きました。
そして、出来れば作品106(番号は逆の13番)も定期で取り組んでもらいたいと思います。

最後はパオロ・ボルチアーニ・コンクールの本選で演奏したという思い出のラズモ2番。定期登場は2004年の第8回以来のことになります。

エクとしては最も数多く取り組んでいる作品だけに、今定期でも完成度は一番でした。恐らく解釈としても現在のエクとしての頂点でしょう。
第2楽章の深い瞑想と、「常設の凄味」を感じさせる終楽章の徹底したリズム感の対照が見事。

試演会での演奏では、前半2曲とベートーヴェンの完成度にやや差があると感じましたが、本番ではそのギャップを相当に縮めてきたのは流石。もちろんサロンとホールという違いがあるのは当然ですが。

いつものように、ロビーにはエクの活動の模様が写真入りでパネル展示されていました。改めて思うのは、彼らの活動が日本全国に及んできたこと。札幌、京都はもちろんのこと、新潟・富山・長野・福岡・宮崎・熊本・大阪・滋賀などなど。エクの場合、何処も一度だけの公演に終わらず、以後も継続的な演奏活動に繋がっていることに感心します。
特に11月は移動・演奏・移動が夥しい回数になったようで、この日の演奏でも若干疲れを感じさせる個所もありました。課題と言えば、やはりスタミナでしょうか。

最後に。ホールを出ようとすると、文化会館職員(?)のアンケートに捕まってしまいました。文化会館を訪れる頻度は? 交通手段は? 他に出掛けるホールは? 今日の満足度は? 等々。
50周年を機に、顧客満足度を今後の活動の参考にしようという活動でしょうか。かなりの数の聞き役が待ち構えていましたから、アンケートを頼まれた人もかなりの数に上ったと思います。要するに、公演の質を高くしてくれることが一番でしょう。

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