フォース・フリーズ、意外にもＧ戦初勝利
今週のアメリカ競馬は、３日連続でＧ戦が行われます。月曜日がプレジデンツ・デイの休日になるからで、開催コースもゴールデン・ゲート、ローレル、オークローン・パークと次第に賑やかさを加えてきました。
先ずは土曜日のＧ戦４鞍からレポートして行きましょう。
最初はガルフストリーム・パーク競馬場から、ガルフストリーム・パーク・スプリント・チャンピオンシップ Gulfstream Park Sprint Championship (ＧⅡ、４歳上、７ハロン)。去年は１９７２年創設で、名称変更時期があったことを紹介しました。その名称とは、２００３年から２００９年まで行われたリヒター・スケール・スプリント・ハンデ Richter Scale Sprint H のこと。更に付け加えれば、１９７２年から１９８２年までは実施と休止が繰り返され、１９７３、１９７５、１９７６、１９７８～１９８０、１９８２の各年は開催されず、この１１年で僅かに行われたのは３回だけという特異なレースでもありました。１９８３年からは毎年順調に行われ、１９９６年に初めてＧⅢに格付けされました。３年後の１９９９年にはＧⅡに格上げされ、現在に至っています。
ダート・コースの良馬場 good 、８頭立てで行われ、４対５の圧倒的１番人気に支持されたフォース・フリーズ Force Freeze が順当に楽勝しています。大外８番枠から好スタートを切り、一旦は２番手に控えましたが、３～４コーナーの中間地点で無理なく先頭を奪い返すと、そのまま直線では後続との差を開いてレースを支配しました。２着には３馬身４分の３馬身差でトロイラス Troilus が入り、更に１馬身４分の１差でキャプテン・キャンディマン・キャン Capt. Candyman Can の順。
ピーター・ウォルダーが調教、パコ・ロペスが騎乗したフォース・フリーズは、７歳のせん馬。グレード戦は意外にもこれが初勝利となりますが、去年は１０月にベルモントのヴォスバー・インターナショナル(ＧⅠ)、続いて、ＢＣスプリント(ＧⅠ)でもチャンピオン・スプリンターのアマゾンビー Amazonbie の２着(前者は半馬身差、後者は首差)しており、実力的にはＧ級の存在でした。アメリカでデビューした後、２００９年から去年の初めまではドバイで走っていた馬で、ドバイで３勝の実績を携えて去年夏にアメリカにカムバックしてきた経歴の持主。モンマスで一般のステークスに勝ったあと、二度のＧⅠ惜敗が続いていました。今回はＢＣ以来の競馬で、今シーズンのデビュー戦でもありました。今後のスプリント戦線の中心となる１頭でしょう。記憶しておいて下さい。
続いてローレル・パーク競馬場からバーバラ・フリッチー・ハンデキャップ Barbara Fritchie H (ＧⅡ、３歳上牝、７ハロン)の結果が入ってきました。当レース名の由来等については去年紹介しました。このレースの創設は１９５２年のことで、アメリカにグレード制が導入された１９７３年から現在まで変わらずＧⅡにランクされてきた珍しい一戦でもあります。
当初登録から１頭が取り消し、７頭立て。ニューヨークから遠征した３頭が有力との評判でしたが、勝ったのは２７対１の大穴マジカル・フィーリング Magical Feeling でした。ニューヨークのトリオ、ラヴリー・リル Lovely Lil 、ニコール・エイチ Nicole H. 、シー・シーズ・パル C C’s Pal はいずれも今冬のアケダクトでステークスに勝った馬で、前２頭はＧ戦の勝馬でもあります。この２頭はいずれもマイケル・ハッション厩舎の馬で、ハッション師は去年のこのレースをハリッサ Harissa で制しており、期待が集まったのも当然でしょう。これはハンデ戦で、１２１のトップ・ハンデがニコール・エイチ(７対１０の１番人気)、１１９でシー・シーズ・パル(３対１、２番人気)が続き、ラヴリー・リルが１１７の３番手。ニューヨーク３人娘が上位を独占する評価でした。
実際、レースは直線で抜け出したニコール・エイチとシー・シーズ・パルの一騎打ちに見えましたが、大きく離れた内外の２頭の間を割って追い込んだマジカル・フィーリングが軽量(１１５)を活かして首差抜け出し、漁夫の利を得た形です。２・３着も写真判定の大接戦で、結局ニコール・エイチがハナ差で２着、シー・シーズ・パルが３着という結果となりました。
Ｇ戦初挑戦での初勝利を記録した６歳牝馬マジカル・フィーリングを管理するのは調教師はアレン・イウィンスキ、鞍上はロベルト・アルヴァラード・ジュニア騎手。マジカル・フィーリングは６歳ながら最近は５戦して４勝と充実、ここは格上挑戦覚悟のチャレンジでした。スタートで後手を踏み、前半は後方２番手の展開でしたが、直線入口であった５馬身の差を直線で一気に詰め、人気２頭のあいだを衝くアルヴァラードの好判断も光りましたね。
一方、サンタ・アニタ競馬場ではサンタ・マリア・ステークス Santa Maria S (ＧⅡ、４歳上牝、８．５ハロン)が行われました。このレースについては去年ほとんど紹介していません。改めて歴史を紹介すると、創設は１９３４年と古いもの。当初は牡牝混合レースでした。グレード制導入の１９７３にはＧⅡに格付けされましたが、１９９０年にはＧⅠに昇格。しかし一昨年の２０１０年に再びＧⅡに降格され、現在に至っています。施行距離の変更も度々で、１９４１年には現在では考えられない３ハロン(約６００メートルほど)で行われたこともあります。
今年は７頭立てで行われましたが、１番人気(４対５)のエラフィッツ Ellafitz が逃げ切って順当に勝っています。１馬身４分の１差２着は内から追い込んだミス・ミッタゴン Miss Mittagong と大外から急襲したヴィジョン・イン・ゴールド Vision in Gold (去年のこのレースを逃げ切って勝った馬で、その後は２戦のみ)の同着となりました。５歳牝馬エラフィッツ、去年は１２月にバヤコア・ハンデ(ＧⅡ)を制しており、今年は１月１５日にパセアナ・ハンデ(ノン・グレード)も勝って唯１頭１２３ポンドを背負っていました(他は全て５ポンド軽い１１８ポンド)。出走する度に強さを増している同馬、次は愈々ＧⅠ(サンタ・マルガリータ・ステークス、３月１７日)に挑戦する計画だそうです。
調教師はボブ・バファート、騎手はマーチン・ガルシア。このコンビは、この日これがハットトリックと絶好調。
最後にゴールデン・ゲート・フィールズ競馬場からエル・カミノ・リアル・ダービー El Camino Real Derby (ＧⅢ、３歳、９ハロン)。去年は北カリフォルニアのダービー・トライアルとのみ紹介していました。若干を付け加えると、創設は１９８２年、当時存在したベイ・メドウズ競馬場で行われていました。ベイ・メドウズが２００８年８月に閉鎖されたことに伴い、現在はゴールデン・ゲート・フィールズ競馬場に移管されています。ＧⅢのグレード戦に格付けされたのは第４回の１９８５年から。その１９８５年の勝馬タンクス・プロスペクト Tank’s Prospect と翌年の勝馬スノー・チーフ Snow Chief が２年連続でプリークネス・ステークスを制覇。更に１９９４年度の勝馬タバスコ・キャット Tabasco Cat もプリークネス・ステークスに続いてベルモント・ステークスも勝って２冠馬となっています。ゴールデン・ゲート・フィールズに移ってからはクラシック馬は出ていません。今年の勝馬はどうでしょうか。
このレースはジェリー・ホーレンドルファー師が過去５回も制しており、師が送るラシアン・グリーク Russin Greek とレディー・オブ・フィフティー Lady of Fifty に注目が集まっていました。しかも夫々に騎乗するアーロン・グライダー騎手とラッセル・ベーズ騎手はリーディングを争うライバル同士。更にベーズ騎手はこのレースに過去８勝の最多記録を持っていることも話題の一つ。また、このレースのトライアルとなるカリフォルニア・ダービー(１月１４日、ノン・グレード)はグライダー騎乗のラシアン・グリークが優勝、出走馬中唯一の牝馬レディー・オブ・フィフティには、勝てばこのレース初の牝馬制覇と言うタイトルも掛かっていました。
しかし１０頭立ての１番人気(２対１)は、１月７日のシャム・ステークス(ＧⅢ)でコース・ロスがあり４着に終わっていたハンサム・マイク Handsome Mike 。そして注目馬を尻目に優勝したのは、３番人気(４対１)のダディー・ノーズ・ベスト Daddy Nose Best でした。１番枠から好スタート。２頭の先行争いを３～４番手で見る展開から、４コーナー手前で仕掛け、直線では更に外から追い上げるラッキー・チャッピー Lucky Chappy と鼻面を並べるようにゴール。写真判定の結果、ダディー・ノーズ・ベストがハナ差だけ残っていました。３馬身半差離れた３着は１番人気のハンサム・マイク 。ラシアン・グリークは５着、レディー・オブ・フィフティーは６着と何れも敗退に終わっています。勝ったダディー・ノーズ・ベストはステークス初勝利、２歳時は８戦２勝(最後の６戦は芝コース)と忙しいシーズンでしたが、今シーズンはこれがデビュー戦でもありました。
勝利調教師スティーヴン・アスムッセンは、このレース去年のシルヴァー・メダリオン Silver Medallion に続く連覇。フロリダを根拠地とするフランス人騎手ジュリアン・ルパルーにとってはゴールデン・ゲート競馬場での騎乗自体が初体験で、勿論このレース初制覇となります。
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