チャンピオンの競演

昨日のアメリカ競馬は3つの競馬場で、二つのGⅠ戦を含め合計5鞍のG戦が行われましたが、そのほとんどで1番人気に支持された強豪が如何無く実力を発揮、秋に向けて期待が更に高まる結果となりました。

先ずはサラトガ競馬場のパーソナル・エンサイン・インヴィテーショナル・ハンデキャップ Personal Ensign International H (GⅠ、3歳上牝、9ハロン)から。BCディスタフへの優先出走権が掛かる一戦、fast の馬場に僅か5頭立てですが、BCディスタフ2連覇の強豪ロイヤル・デルタ Royal Delta が参戦し、1対2の断然1番人気に支持されています。不安があるとすれば、同馬は去年も本命として出走しながらラヴ・アンド・プライド Love and Pride の2着に甘んじたこと。今年はどうでしょうか。
スタートこそ1番枠のオン・ファイア・ベビー On Fire Baby の2番手でしたが、向正面で先頭を奪ったロイヤル・デルタ、レース前の不安を一掃するように後続を引き離すと、2着に上がった2番人気(2対1)オーセンティシティー Authenticity に4馬身半差を付ける圧勝で貫録を見せ付けました。1馬身4分の3差でセントリング Centring が3着。
ウイリアム・モット厩舎、マイク・スミス騎乗のロイヤル・デルタは、これが6つ目のGⅠ勝利。このあと9月28日に行われるベルデイム・ステークス(GⅠ)を使い、目標のBCディスタフ3連覇を目指します。

次はモンマス・パーク競馬場から、第35回クリフ・ハンガー・ステークス Cliff Hanger S (芝GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。去年までは8ハロンでしたが、今年は100メートル伸びて8.5ハロンで行われます。馬場は firm 、1頭取り消して6頭立て。前走マイアミ・マイル(芝GⅢ、4月20日)に勝ったサマー・フロント Summer Front が、休み明けの競馬ながらもイーヴンの1番人気。
前半は最後方、直線にも最後方で入ったサマー・フロント、直線では持ち味の瞬発力を存分なく発揮し、逃げた去年の勝馬チューン・ミー・イン Tune Me In を1馬身4分の1差し切って快勝、人気に応えました。更に半馬身差でハットトリック産駒で2番人気(9対5)のハウ・グレート Howe Great が3着。
クリストフ・クレメント厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のサマー・フロントは、去年のヒル・プリンス・ステークスに加えて、これが3つ目のGⅢ勝ち。セクレタリアート・ステークス、ジャマイカ・ハンデとGⅠ戦でも2度3着を経験しており、次は更に上のクラスを目指すことになるでしょう。

そしてデル・マー競馬場。最初のデル・マー・マイル Del Mar Mile (芝GⅡ、3歳上、8ハロン)は、firm のコースに5頭と少頭数。去年、1分32秒10のタイムでレコード勝ちしたオビアスリー Obviously が1対5の圧倒的1番人気に支持されていました。
スタートは5番枠から出たエル・コモドーレ El Commodore が一気に飛ばして先手を取りましたが、クラブハウスターンでハナを奪い返したオビアスリー、そのままスピードを活かしての逃げ切り勝ちで連覇達成です。半馬身差2着にヒー・ビー・ファイア・ナ・イス He Be Fire N Ice 、首差3着がサイレントネーム産駒のシレンティオ Silentio の順。クリフ・ハンガーに続き、日本産種牡馬の仔が3着に入ったのが話題となりそう。
マイク・ミッチェル厩舎、これでこのレース3連覇となるジョセフ・タラモ騎乗のオビアスリーは、5月のアメリカン・ハンデ(芝GⅡ)、6月のシューメーカー・マイル(芝GⅠ)に続いてG戦3連勝。流石GⅠ馬の実力でしょう。G戦の勝利数も「5」に伸ばしています。なお今回の勝時計は1分32秒64、前年のレコードにはコンマ54及びませんでした。

次はパット・オブライエン・ステークス Pat O’Brien S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。勝馬にはBCダート・マイルへの優先出走権が与えられます。馬場は fast 、1頭取り消しがあり12頭立て。出走馬中唯一の3歳馬で、サンタ・アニタ・ダービー馬ゴールデンセンツ Goldencents が4対5の1番人気。
前半はノー・サイレント No Silent が逃げましたが、向正面でやや強引に先頭に立ったゴールデンセンツ、そのまま逃げ切りを図ります。しかし前半の無理が堪えたか、直線ではバテてやや外に寄れるところ、前半は後方4番手に控えていた2番人気(7対1)のフェド・ビズ Fed Biz が鋭い末脚を繰り出して追い込み、本命馬を1馬身差捉えて優勝。4分の3馬身差でゴンナ・フライ・ナウ Gonna Fly Now が3着に入っています。ペースが速かったこともあり、勝時計1分21秒12は、2008年のタイムを0.5秒更新するトラック・レコードでした。
勝馬は、このレースを何と5連覇、記録となる7勝目をマークしたボブ・バファート師の管理馬で、マーチン・ガルシア騎乗。今年1月にサン・フェルナンド・ステークス(GⅡ)に勝った後5連敗中だったフェド・ビズでしたが、これでBCへの出走権を獲得し、去年は8着に終わったダート・マイルでの雪辱に向かいます。

日曜日の最後は、第23回パシフィック・クラシック Pacific Classic (GⅠ、3歳上、10ハロン)。これもBCへの優先出走権付与の一戦で、もちろんクラシックが対象。これも1頭が取り消して12頭立て。8対5の1番人気は常勝ゲーム・オン・デュード Game On Dude で、6連勝がかかります。
ダッシュ良く先頭に立ったゲーム・オン・デュード、スタートこそデレゲーション Delegation が競り掛ける意欲を見せましたが、後は後続を引き離す一方の一人旅。終わって見れば2着以下に8馬身半差を付ける横綱相撲に終始していました。この着差は同馬にとっても最大でしょう。2着争いは熾烈、写真判定の結果、サドラー厩舎の2頭、ケトル・コーン Kettle Corn が2着、ユー・ノウ・アイ・ノウ You Know I Know が3着。パシフィック・クラシックを二度制しているリチャーズ・キッド Richard’s Kid が4着でした。
ボブ・バファート調教師はこのレース4勝目、ボビー・フランケル師の記録6勝にあと2勝と迫っています。鞍上は、負傷したロザリオに乗り替わったマーチン・ガルシア。パット・オブライエンに続いて調教師/騎手のG戦ダブル達成です。またゲーム・オン・デュードは、カリフォルニアのハンデ三冠(サンタ・アニタ・ハンデ、ハリウッド・ゴールド・カップ)を一シーズンの内に完成させた2頭目の馬、2006年のラヴァ・マン Lava Man に次ぐ快挙でもありました。
ゲーム・オン・デュードは、これが7勝目のGⅠ。その獲得賞金も560万ドルを超え、現役競走馬としては頂点に立ったことになります。

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