ダービー・トライアル、最終便

昨日の土曜日、5月第1週を3週間後に控えて、重要なダービー・トライアルとしては最後の2鞍が行われました。その他にも各地でG戦が花盛り、駆け足になるのを覚悟で順次紹介して行きましょう。

先ずは最初に残り1週となったアケダクト競馬場から、ディスタッフ・ハンデキャップ Distaff H (GⅡ、3歳上牝、7ハロン)。fast のダート・コース、2頭取り消しがあり5頭立て。去年エイコーン・ステークスとコーチング・クラブ・アメリカン・オークスとGⅠに2勝したクラシック馬でゴドルフィンのイッツ・トリッキー It’s Tricky が3対5と断然の1番人気に支持されていました。
レースはドントビーシャイ・アイル・バイ Dontbeshy I’ll Buy とニコール・エイチ Nicole H がハナを争う出入りの激しい競馬。鞍上エディー・カストロ騎手は慌てず騒がず3番手に付け、直線3頭分の外から抜け出すと、後方から追い込んだシー・シーズ・パル C C’s Pal に3馬身半差を付けて期待に応えました。2馬身4分の3差3着は逃げたドントビーシャイ・アイル・バイが粘っています。
キアラン・マクローリンが調教するイッツ・トリッキーは、今期トップ・フライト・ハンデ(GⅡ)に続いてグレード戦2連勝、4つ目のG戦を手にしました。今回は7ハロンでしたが、もちろん長い距離もこなすタイプ、次走はベルモントのオグデン・フィップス・ステークス(GⅠ、8.5ハロン、5月28日)を目指す意向のようです。

一方キーンランド競馬場ではG戦4鞍、最初に行われたのは第8レースに組まれたジェニー・ワイリー・ステークス Jenny Weiley S (芝GⅠ、4歳上牝、8.5ハロン)です。去年までGⅡでしたが、今年からGⅠに格上げされた一戦。
芝コースは firm 、6頭立ての1番人気(7対5)は出走馬中ただ一頭芝コースのGⅠ戦に勝っているフランス産のザゴラ Zagora でした。去年のこのレースは3着でしたが、夏のサラトガでGⅠのダイアナ・ステークスに優勝。この時の2着馬アルーナ Aruna も出走し、2対1の2番人気で続きます。
レースは7対1(並んだ4番人気)の伏兵デイジー・ディヴァイン Daisy Devine が平均ペースで逃げ、同じ7対1のベイ・トゥー・ベイ Bay to Bay が追走する展開。ザゴラは最後方に待機します。
しかし直線に入っても先行2頭の行き足は衰えず、結局デイジー・ディヴァインがベイ・トゥー・ベイに1馬身差を付けての逃げ切り、行った行ったの競馬になってしまいました。半馬身差の3着も先行2頭をマークして進んだタピッツフライ Tapitsfly が入り、ザゴラは追い上げたものの差は詰まらず5着敗退。アルーナも後方2番手から伸びたものの6着最下位。
アンドリュー・マッキーヴァー厩舎、ジェームズ・グレアム騎乗のデイジー・ディヴァインは、昨秋のキーンランドでピン・オーク・ヴァレー・ヴュー(芝GⅢ)に勝ってから芝コースのステークスに3連勝していた馬。今シーズンはフェア・グラウンズの芝コースの一般ステークスに連勝していました。GⅠ戦はもちろん初勝利です。
グレアム騎手は7日のアシュランド・ステークスを穴馬カルロヴィー・ヴァリー Karlovy Vary でも逃げ切っており、今キーンランド開催の台風の目になった感があります。マッキーヴァー師にとってもGⅠは初制覇。

続いては第9レースに fast のポリトラック・コースで行われた短距離戦、コモンウェルス・ステークス Commomwealth S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。7頭が出走し、昨秋に一度だけ走ったキーンランドで勝っているべルジェラック Bergerac が5対2の1番人気に支持されていました。
1番枠から好スタートを切ったコメデロ Comedero の逃げを3番枠スタートのプルトニウム Plutonium が突つく速い流れ。最後方を進んだ4番人気(4対1)のローンサム・ストリート Lonesome Street が第4コーナーで大外に回し、直線一気の末脚を爆発させ、中団から伸びた本命べルジェラックに2馬身4分の1差を付ける快勝です。3着も2馬身4分の1差が付いて2番人気(3対1)のライト・ワン Right One 。
マイケル・メーカーが調教、ジョエル・ロザリオ騎乗のローンサム・ストリートは、前走フェア・グラウンズでの5.5ハロン戦(一般ステークス)でも後方一気の競馬で5着に来た馬。陣営によれば、距離伸びた7ハロンでより末脚が活きたとのことでした。

第10レースのシェイカータウン・ステークス Shakertown S (芝GⅢ、3歳上、5.5ハロン)も短距離戦ですが、こちらは firm の芝コース。こちらは10頭立てで、去年のウッドフォード・ステークス(芝GⅢ)に勝ったハヴロック Havelock が5対2の1番人気に支持されていました。
レースはグレート・ミルズ Great Mills が速いペースで逃げ、そのまま逃げ切るかと思われましたが、前半6番手の内々を進んだ2番人気(3対1)のパーフェクト・オフィサー Perfect Officer が外から並び掛け、逃げ馬を捉えたところがゴール。結局ハナさでグレート・ミルズを差し切っていました。3馬身差3着には内から伸びたゼブ Zeb が食い込み、大外から追い込んだ本命ハヴロックは4着まで。勝時計の1分1秒53はコース・レコードでした。
勝馬はアンソニー・ダトロウ厩舎に転じて最初のレースでの勝利、ハヴィエル・カステラノが騎乗。ここまでG戦で3回連続で入着しており、6歳にしてG戦初勝利となります。

そして最後はキーンランド春開催の目玉、この日最も注目を集めるブルー・グラス・ステークス Blue Grass S (GⅠ、3歳、9ハロン)。トヨタが冠となるダービー・トライアルの最終便とも言えるGⅠ戦に13頭が出走。チャンピオン馬ハンセン Hansen が断然との下馬評で、6対5の1番人気に支持されています。
前走(ガッサム・ステークス)は2番手に控える競馬をしたハンセンですが、ラモン・ロドリゲスは躊躇うことなく先頭に立って逃げ切る作戦。追走した馬たちがバテて後退し楽勝かと思われましたが、後方2番手に待機した2番人気(3対1)のデューラハン Dullahan が馬群を捌いて進出、馬場の中央を通って鋭く伸び、遂にハンセンを1馬身4分の1差捉えての逆転劇でした。ハンセンと3着ガング・ホー Gung Ho との着差は2馬身半、マイク・メイカー調教師は2・3着フィニッシュながら涙を呑みました。ホーリー・キャンディー Holy Candy が4着。勝タイムの1分47秒94はステークス・レコードとなりましたから、ハンセンのペースは速過ぎたかも。
金星を挙げたデューラハンはデール・ロマンス師が管理、ケント・デサーモ騎乗の栗毛馬。2歳時は1勝だけでしたが、それがここキーンランドのGⅠ戦(ブリーダーズ・フューチュリティー・ステークス)。BCジュヴェナイルはハンセンの4着していた実力馬で、前走パーム・ビーチ・ステークス(芝GⅢ)ではハウ・グレート Howe Great (この日は5着)の2着していました。
当然ながらケンタッキー・ダービーに挑戦しますが、同馬は2009年のダービー馬マイン・ザット・バード Mine That Bird の半弟という血統だけに、兄弟制覇という夢が託されます。

続いてはオークローン・パーク競馬場から3鞍のG戦。1月13日にスタートしたオークローン・パークもこの日がフィナーレ、名物のオークローン・ハンデとアーカンソー・ダービーが千穐楽を盛り上げます。
その前に、第8レスのカウント・フリート・スプリント・ハンデキャップ Count Fleet Sprint H (GⅢ、4歳上、6ハロン)。fast のメインコースに6頭が出走してきました。4対5の1番人気に支持されたイジー・ルールス Izzy Rules はサンタ・アニタのラス・フローレス・ステークス(GⅢ)を含め4連勝中の快速馬。またBCスプリント6着のエイプライオリティー Apriority もここをステップに短距離王者を目指すべく2対1の2番人気で続きます。
レースはダッシュ良く飛び出した本命イジー・ルールスが逃げ切り作戦を採りますが、ゴール前100ヤードでは5頭が並ぶ大接戦。2番手追走から真ん中を抜けた3番人気(4対1)アッタ・チューン Outta Tune が半馬身抜け出していました。惜しかったのは大外から追い込んだエイプライオリティー、首差で3着ハメイジング・デスティニー Hamazing Destiny に先着。イジー・ルールスも最後まで粘りましたが、微差5着に終わっています。
クリス・リチャード師が管理、テリー・トムソンが騎乗したアッタ・チューンは、オークローンで3連勝して上のクラスに挑戦してきた7歳馬。4連勝で初めてのG戦勝利、陣営も驚く快進撃です。

第10レースのオークローン・ハンデキャップ Oaklawn H (GⅡ、4歳上、9ハロン)は8頭立て。今春のGⅠ戦、ドン・ハンデに勝ったヒム・ブック Hymn Book とサンタ・アニタ・ハンデの覇者ロン・ザ・グリーク Ron the Greek が対決するのに加え、去年のケンタッキー・ダービー2着馬ネーロ Nehro 、去年のこのレースを制したウィン・ウィリー Win Willy も参戦してメンバーはGⅠ級の豪華な顔ぶれが揃いました。その中で5対2の1番人気に支持されたのはロン・ザ・グリーク、ネーロがほとんど差無く続き、ヒム・ブックが5対2の3番人気です。
しかし結果は番狂わせと評して良いでしょう。4番人気(7対2)のアルタネーション Alternation がまんまの逃げ切り勝ち。本命ロン・ザ・グリークが6番手から追い上げましたが差は詰まらず2馬身半差の2着まで。半馬身差3着に2番手を追走した人気薄(10対1)ヤワナ・トゥイスト Yawana Twist が入り、更に4分の3馬身でヒム・ブック。ネーロは6着、ウイン・ウィリーも7着と奮いませんでした。勝タイムも遅い方で、スローペースに嵌ったレースと言えるでしょう。
ドニー・フォン・ヘメル厩舎、ルイス・キノネズが騎乗したアルタネーションはオークローンのスペシャリスト的存在、2月には一般ステークス(エセックス・ハンデ)、3月にはレーザーバック・ハンデ(GⅢ)と連勝していた4歳馬で、オークローンのステークス3連勝です。去年のアーカンソー・ダービーでは5着でしたが、ここで負けたのはそれだけ。このコースは通算で6戦5勝となり、次は愈々GⅠ盗りに向かいます。

4ヶ月開催のフィナーレは、アーカンソー・ダービー Arkansas Derby (GⅠ、3歳、9ハロン)。ダービーへの最後の切符を目指したのは11頭でしたが、ボブ・バファート厩舎の2頭が上位人気を独占、レースもバファート師のワン・ツー・フィニッシュとなり、ダービーに向けて強力なスターが生まれています。
オークローンのクラシック路線はバファート厩舎のシークレット・サークル Secret Circle が二冠を制して抜け出しましたが、同馬は5対2の2番人気まで。シークレット・サークルを抑えて1番人気(2対1)に支持されたのは、同じバファート厩舎のボウディマイスター Bodemeister でした。ここまで未だ3戦1勝2着2回とキャリアの浅い馬ながら、前走サンタ・アニタのサン・フェリペ・ステークス(GⅡ)でダービー候補クリエイティヴ・コース Creative Cause に僅差2着まで迫った新星です。今回は5千勝ジョッキーのマイク・スミスが初騎乗、同馬にとっては試金石となる一戦でした。
そして期待通り、レースはボウディマイスターの独演会となりました。スタート良く飛び出すと、直線では後続を引き離す一方、辛うじて2番手に上がったシークレット・サークルに9馬身半の大差を付ける圧勝劇。最後は苦しがって外に寄れたシークレット・サークルはセイバーキャット Sabercat に首差先着して2着を死守しています。
意外にもアーカンソー・ダービー初制覇となる59歳のバファート師、ボウディマイスターは師の一番下の息子に因んで名付けたそうで、師は同馬を所有するグループの一人。ここで勝たなければダービーへの出走権は手に入らないという条件下(*)でのトライアルでした。初めてブリンカーを外し、大外11番枠の不利を克服しての快勝です。
ところでバファートさん、先のドバイ遠征では心臓発作を起こして入院し、無事退院したもののワールド・カップは惨敗に終わりました。しかしこのオークローン開催は絶好調で、馬を出走させたG戦6鞍は全て優勝、金曜日のアップル・ブロッサムもプラム・プリティー Plum Pretty で制したばかりでしたね。

(*)ダービーの出走枠は20頭。獲得賞金順に出走権が得られますが、あくまでもグレード戦での獲得額が対象です。

ところで一年中競馬が行われているチャールズ・タウン競馬場から、この競馬場で行われる唯一のグレード戦がこの日に行われました。チャールズ・タウン・クラシック Charles Town Classic (GⅡ、4歳上、9ハロン)。今年からGⅡに格上げされています。レースのスタートは現地時間の夜10時半、所謂ナイター競馬ですね。
fast の馬場、出走枠を超える13頭が登録していましたが、結局は3頭が除外となって10頭立て。どれも一癖ある当カテゴリーでもお馴染みのメンバーが揃いました。1番人気(9対5)は前走久し振りとなったガルフストリーム・パーク・ハンデ(GⅡ)で2着したタックルベリー Tackleberry です。去年の覇者デューク・オブ・ミスチーフ Duke of Mischief は意外に人気が無く12対1。
人気のタックルベリーが先頭で果敢にレースを進めましたが、向正面でデューク・オブ・ミスチーフがスパートして先頭。そのまま一気にゴールを目指しましたが、4~5番手で待機したカイシャ・エレクトロニカ Caixa Electronica が馬場の中央を通って追い上げ、粘るデューク・オブ・ミスチーフに3馬身の大差を付けて快勝しています。3着は1馬身4分の1差でミスター・マルティ・グラ Mister Marti Gras 、タックルベリーは4着でした。
締切寸前に登録し、ニューヨークから直前に乗り込んで周囲を驚かせたカイシャ・エレクトロニカはトッド・プレッチャー師の管理馬、キーンランドでの騎乗を終えてこれもレース直前に乗り込んできたハヴィエル・カステラノ騎乗。8対1の5番人気でした。これまでスプリンターと見做されていた同馬の登録も意外でしたが、距離不安を全く感じさせない快走もファンには驚きだったようです。

最後にサンタ・アニタ競馬場ではラス・シーネガス・ハンデキャップ Las Cienegas H (芝GⅢ、4歳上牝、6.5ハロン)が組まれていましたが、前日の雨の影響で芝コースが使えずメイン・コースに変更。最終的にはアメリカ・グレード・ステークス委員会の発表でG格が剥奪されました。
それでも折角ですから結果だけを記録しておくと、メインコースの馬場状態は fast 。当初の芝コースを前提に6頭が登録していましたが、コースの変更により2頭が取り消し、僅か4頭立てで行われています。
1対5の圧倒的1番人気に支持されたミズディレクション Mizdirection が3番手から抜け出して快勝、2着テローダ Teroda に半馬身差を付けて期待に応えています。3馬身半差3着はラ・ネズ La Nez 、人気通りの順当な結果でした。
ミズディレクションの調教師はマイク・パイプ、騎乗していたのはデヴィッド・ロメロ・フローレス騎手。

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1件の返信

  1. まとめteみた.【ダービー・トライアル、最終便】

    昨日の土曜日、5月第1週を3週間後に控えて、重要なダービー・トライアルとしては最後の2鞍が行われました。その他にも各地でG戦が花盛り、駆け足になるのを覚悟で順次紹介して行きま

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