ディープの大物、仏クラシックへ
昨日の日曜日、アイルランドとフランスでパターン・レースが行われましたが、今回はフランスから行きましょう。
ロンシャン競馬場、馬場状態は good to soft で、クラシックに向けた重要なトライアルが2鞍組まれています。
最初は、仏1000ギニーの前哨戦とも言えるグロット賞 Prix de la Grotte (GⅢ、3歳牝、1600メートル)。
7頭が出走、6対4の1番人気に支持されたのは2戦2勝のビューティー・パーラー Beauty Parlour 、当競馬ブログには初登場の新星です。GⅢ(オマール賞)勝馬でマルセル・ブーサック賞(GⅠ)3着のザンテンダ Zantenda は2番人気(5対2)でした。
そのザンテンダが先手を取って逃げましたが、4番手に付けた本命ビューティー・パーラーが残り300メートルで進出、あと200メートルで先頭に立つと勝敗はあっという間でした。クリストフ・スミオンのゴーサインに瞬時に反応、最後は抑える余裕でも2着に4馬身半差の楽勝。2着には今期デビューの新馬戦に勝ったばかりのウーヴェン・レース Woven Lace が入り、更に2馬身でミス・カーミー Miss Carmie が3着。ザンテンダは6着に沈んでいます。
見事人気に応えたビューティー・パーラーはエリー・ルルーシュ師の管理馬、2歳時はサン=クルーで新馬と条件戦に2戦して2勝ですが、その2戦で2着以下に付けた着差は合計で11馬身半という逸材。パターン・レース初挑戦で無敗記録を守りました。
ところで我々が真っ先に注目したいのは、ビューティー・パーラーの父がディープインパクト Deep Impact であること。ディープは去年、バロッチ Barocci がフランスのクラシック路線に乗って話題になりましたが、今年もディープ産駒がクラシック候補に名乗りを挙げたのです。
ルルーシュ師によれば、彼女は本番で本気になるタイプ、並みの馬ではないことを公言しています。ルルーシュ師が仏1000ギニーを制したダンスーズ・デュ・ソワ Danseuse du Soir もグロット賞に勝ってクラシックを獲った馬、ビューティー・パーラーと同じウイルデンシュタイン・グループの持ち馬であることも期待を抱かせる要因の一つでしょう。
去年のバロッチは“ヒョッとしたら”という淡い希望でしたが、今年のビューティー・パーラーは人気の一角、ヒョッとしたら本命に祭り上げられる存在になるかも知れません。
続いては、これも日本産種牡馬の産駒が登場する注目のフォンテンブロー賞 Prix Fontainebleau (GⅢ、3歳牡、1600メートル)。
もうお分かりのように、去年のヨーロッパ2歳チャンピオン、ハットトリック Hat Trick 産駒ダバーシム Dabirsim のシーズン・デビューです。出走馬は6頭、もちろん無敗のダバーシムが3対5の圧倒的1番人気。
レースは2番人気(7対2)ソーファスト Sofast のスローな逃げで始まります。4番手に抑えたダバーシムはやや掛かり気味、残り200メートルで同馬に初騎乗のスミオンが左右を見まわしてからゴーサインを出すと、頭を挙げる素振り。5番手に待機したドラゴン・パルス Dragon Pulse が残り300メートルで仕掛け、最後の100ヤードでスパート、最後の一歩でダバーシムを捉えたところがゴールでした。
結局ドラゴン・パルスが短頭差で金星を挙げ、ダバーシムは2着と初黒星。2馬身半差3着に逃げたソーファストという結果です。
ダバーシムは先頭に立った時点では圧勝かに見えましたが、最後は意外に伸びませんでした。やはり前半で引っ掛かったこと、スパートしてから苦しそうに頭を挙げたことが敗因でしょうか。騎乗したスミオンは本番(仏2000ギニー、5月13日)までには仕上がると自信を覗かせましたが、その評価が割れることは間違いなさそうですね。
一方、勝ったドラゴン・パルスはマイケル・デルザングル厩舎、グレゴリー・ブノア騎乗。去年までアイルランドのジェシカ・ハリントン厩舎に所属していた馬で、フランスに転厩して未だ数ヶ月。2歳時はアイルランドで4戦2勝、カラーのフューチュリティー・ステークス(GⅡ)勝馬で、ナショナル・ステークス(GⅠ)はパワー Power の2着だった実力馬。二つ目のパターン・レース制覇となります。
フランスは以上で、アイルランドに飛びます。レパーズタウン競馬場のクラシック・トライアル3鞍。
この日の馬場状態は good 。最初は僅か4頭立てで行われたレパーズタウン・2000ギニー・トライアル・ステークス Leopardstown 2000 Guineas Trial S (GⅢ、3歳、1マイル)です。
ここは順当に1番人気(4対6)に支持されたファーナーズ・グリーン Furner’s Green が期待に応えました。
4頭の内、エイダン・オブライエン厩舎は2頭出し。本命ファーナーズ・グリーンのペースメーカーを務めるヴォルト Vault が逃げ、3番手を進んだ人気馬が抜け出して危なげない勝利。2馬身4分の3差2着に2番人気(7対4)に推されたオックス厩舎のアキード・ワフィ Akeed Wafi が入り、4馬身半差で3着がヴォルト。残る1頭、ボルジャー厩舎の初出走馬タイガー・アット・ハート Tiger At Heart はスタートの出遅れが全て。
エイダン・オブライエン師と騎乗したジョセフ・オブライエンは、第1レースの2歳新馬戦(フォレスター Forester)に続いていきなりのダブル達成。残り1ハロンでスパートする時に2着馬のムルタ騎手のムチが同馬の頭を打つアクシデントがありましたが、最後の100ヤードでは力の違いを見せ付けています。
2歳時は4戦1勝、パターン・レースでは勝てなかったものの、ナショナル・ステークス(GⅠ)では4着。今期は3月28日に同じレパーズタウンの一般戦で2着(勝馬はライト・へヴィー Light Heavy)、ここがシーズン2戦目でした。
オブライエン師の談話では、同馬はギニー/仏ダービー・タイプと考えている由。現時点でギニーはイギリスを選ぶかフランスに渡るかは未定とのことでした。
続いてはレパーズタウン・1000ギニー・トライアル・ステークス Leopardstown 1000 Guineas Trial S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。こちらは9頭立てと頭数も揃いました。
1番人気(7対4)はワッチマン厩舎のファイア・リリー Fire Lily 、アングルジー・ステークス(GⅢ)の勝馬で、その後ラウザー(GⅡ)、モイグレア・スタッド(GⅠ)、マルセル・ブーサック(GⅠ)と3戦連続で2着の安定した成績の馬です。
レースは4頭出しオブライエン厩舎の2番手(8対1、5番人気)ホームカミング・クィーン Homecoming Queen が逃げ、後方から外を通って徐々に進出したファイア・リリーが最後は逃げ馬に馬体を接するように並び掛けましたが、ホームカミング・クィーンもしぶとく粘り、結局は首差で逃げ切ってしまいました。3着は最後方待機策を取ったオブライエン軍団筆頭格のアップ Up 。2番人気(13対2)のリメンバー・アレキサンダー Remember Alexander が4着。
エイダン・オブライエン師は最初の2レースに続いてハットトリック達成。息子ジョセフはアップを選択し、ホームカミング・クィーンにはカーム・オダナヒューが騎乗していました。
勝ったホームカミング・クィーンは、2歳時に11戦もこなした馬。勝鞍はリステッド戦(1マイル)を含めて2勝、今期は前走カラー競馬場のパーク・エクスプレス・ステークス(GⅢ)で9着に終わっていましたが、一叩きして馬が変わったと評価できるでしょう。
また3着のアップは、去年渡米してBCジュヴェナイル・ターフで4着に健闘した馬。今期はダンダルク競馬場のポリトラック戦で2着、これがシーズン2戦目でした。
レパーズタウンの最後は、ダービーのトライアルに当たるバリーサックス・ステークス Ballysax S (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン)。7頭立てです。
7対4の1番人気に支持されたのはベレスフォード・ステークス(GⅡ)の勝馬でオブライエン厩舎のデヴィッド・リヴィングストン David Livingston 、3頭出しオブライエン軍団の筆頭でジョセフが騎乗します。
本命馬は4番手進みましたが前半は引っ掛かって伸びず、5着と期待を裏切ります。レースはオブライエンの2頭、アザンス Athens とタワー・ロック Tower Rock が引っ張り、3番手を進んだ3番人気(3対1)のライト・へヴィー Light Heavy が残り1ハロンで抜け出すと、後方から追い上げる2番人気(2対1)のコール・トゥー・バトル Call To Battle に2馬身半差を付ける快勝。3着には更に1馬身半差でタワー・ロックが続きました。
ライト・へヴィーを管理するジム・ボルジャー師は、バリーサックス・ステークスを2010年(パンチャー・クリンチ Puncher Clynch)、2011年(バニンパー Banimpire)と連覇しており、これで3連覇達成。通算でも7勝となり、これまで並んでいたエイダン・オブライエンを抜いて単独最多勝利調教師に躍り出ました。コンビを組むケヴィン・マニング騎手にとっても3連覇となります。
またライト・へヴィーの父はテオフィロ Teofilo 、ボルジャー/マニングのコンビで活躍した名馬ですね。
2歳時は1戦のみで2着、前走レパーズタウンの一般戦で初勝利を挙げましたが、そのときの2着がこの日2000ギニー・トライアルを制したファーナーズ・グリーンです。ボルジャー師は同馬の目標をアイルランド・ダービーに置いているようですが、英ダービーに14対1のオッズを出したブックメーカーもあります。いずれにしても次走はデリンスタウン・ダービー・トライアルになる予定。
最近のコメント