2012クラシック馬のプロフィール(5)

今回と次回でアイランドのギニーを制した馬のプロフィールを紹介します。先に愛2000ギニーの勝馬パワー Power から。
パワーは父オアシス・ドリーム Oasis Dream 、母フラッペ Frappe 、母の父インチノール Inchinor という血統。

牝系に入る前にオアシス・ドリーム(2000年、鹿毛)について若干触れると、この馬の産駒は日本にも何頭か輸入されているようですが、現時点では特段の活躍馬はでていないようです。今年のクラシック世代が5年目と未だ若い種牡馬ですから、これからは耳にする機会も増えると思われます。
自身はミドル・パーク・ステークス、ジュライ・カップ、ナンソープ・ステークスといずれも短距離のGⅠに3勝しているように、典型的なスプリンターでした。グリーン・デザート Green Desert を介してダンジク Danzig に至るノーザン・ダンサー Northern Dancer 系ですから、血統的にも短距離と断言して良いでしょう。

しかし種牡馬としては必ずしも短距離系と決めつけるわけにはいきません。キングズ・スタンド・ステークスのプロヒビット Prohibit 、ジャージー・ステークスのアクラーム Aqlaam 、モルニー賞とジュライ・ステークスに勝ったアルカノ Arcano などの短距離馬を出しているのは当然ですが、2年目の産駒ミッドデイ Midday はヨークシャー・オークス、ヴェルメイユ賞、BCフィリー・アンド・メア・ターフに勝ち、ナッソー・ステークス3連覇と言う偉業も達成しています。更に彼女はオークス2着、愛オークス3着と典型的なクラシック距離馬でした。
他にもドイツ2000ギニーのフローズン・パワー Frozen Power 、同じくドイツで2200メートルのG戦に勝ったレディー・ジェーン・ディグビー Lady Jane Digby など、父親を上回るスタミナ・ホースを何頭も出している実績があります。今回のパワーが1マイルのクラシックを勝ったことも決して驚くことではありませんね。

ということで牝系です。
先ず母フラッペは6戦1勝。2歳のデビュー戦(ケンプトン競馬場の6ハロン)に勝って注目されましたが、その後は期待に沿う様な成績を残すことが出来ませんでした。3歳の4月にネル・グィン・ステークスに出走してクラシック路線に乗ろうとしましたが、7着凡走に終わっています。
繁殖入りしてからの成績を列記しておきましょう。パワーはその8番仔に当たります。

2002年 サカファート Thakafaat 鹿毛 牝馬 父アンフーウェイン Unfuwain  8戦3勝
2003年 クァンタム Quantum 鹿毛 牝馬 父アルハース Alhaarth 8戦1勝
2004年 ワイルド・ガーデニア Wild Gardenia 鹿毛 牝馬 父アルハース 3戦未勝利
2005年 アプローディッド Applauded 鹿毛 牝馬 父ロイヤル・アプローズ Royal Applause 5戦1勝
2006年 アラビアン・フレーム Arabian Flame 鹿毛 せん馬 父キングズ・ベスト King’s Best 12戦未勝利
2007年 ピーカン・スリー Pekan Three 鹿毛 牡馬 父サドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells 4戦未勝利
2008年 アムジャード Amjaad 黒鹿毛 牝馬 父ダンジリ Dansili 未出走
2009年 パワー

以上、パワーは4頭目の勝馬になります。今年の愛2000ギニー馬が出るまでは、競走馬としては初仔のサカファートが最も成功していると言えましょう。2歳時にニューマーケットの7ハロン戦で優勝。3歳時にポンテフラクト競馬場のハンデ戦(10ハロン)で2着に4馬身差を付けて勝ち、ハンデ・クラスを卒業。グッドウッドのループ・ステークス(リステッド)に2着したあと、この年はヨークに開催変更となったロイヤル・アスコットでリブルスデール・ステークス(GⅡ)を制してG戦初制覇。
そのあとアイルランド・オークスでGⅠに初挑戦するも7着、秋はドンカスターのパーク・ヒル・ステークスに出走しましたが10着で現役を終えました。

続く2番目の娘クァンタムも1勝馬ですが、1マイル半以上の距離で走っていた馬。また4番目の娘アプローディッドは2歳時にウルヴァーハンプトン競馬場の7ハロン戦で勝った馬で、3歳時にはアメリカでカルダー・オークス(一般ステークス)5着という記録もあります。
その後3年間未勝利馬が続き、今年のクラシック馬パワーが出現することになります。因みに今年の2歳馬はナイェフ Nayef を父に持つ牝馬とのこと。フラッペの産駒には牝馬が多いのが目立ちます。

2代母はグラティサント Glatisant (1991年 鹿毛 父レインボウ・クエスト Raibow Quest)。現役時代は9戦2勝の成績を残し、2歳のデビュー戦(アスコット、6ハロン)とプレスティージ・ステークス(GⅢ、グッドウッド、7ハロン)に連勝。3歳時はニューマーケットのリステッド戦(1マイル)で2着したのが最高で、取り立てた成績を残すことはありませんでした。

彼女もまた、競走馬としてよりは繁殖牝馬として成功。2002年生まれのフットステップスインザサンド Footstepsinthesand (鹿毛 牡馬 父ジャイアンツ・コーズウェイ Giant’s Causeway)が堂々英2000ギニーを制して、クラシック馬の母となりました。

3代母ダンシング・ロック Dancing Rock (1979年 鹿毛 父グリーン・ダンサー Green Dancer)はレッキとしたパターン・レース勝馬。現在は最高格のGⅠに格付けされているナッソー・ステークスに勝ちましたが、当時はGⅡランクでした。
彼女の娘たちは、ほぼ6頭が現在までその血を伝えています。
競走馬として成功したのは、1998年生まれのロッカーロング Rockerlong (鹿毛 父デプロイ Deploy)。チェシャー・オークスに勝ち、ヨークシャー・オークスが3着。しかし次のパーク・ヒル・ステークスでは直線コースに入るのを拒否するという気性の悪さを見せていたようです。

ダンシング・ロックの1988年の娘ゲイ・ブルガ Gai Bulga (鹿毛 父クリス Kris)はセレクト・ステークス(GⅢ)で2着した馬。
また最初の娘カウンシル・ロック Council Rock (1985年 鹿毛 父ジェネラル・アッセンブリー General Assembly)は、フライング・チルダース・ステークス(GⅡ)とノーフォーク・ステークス(GⅢ)に勝ったスーパースター・レオ Superstar Leo (1998年 鹿毛 父カレッジ・チャペル College Chapel)の母となり、そのスーパースター・レオの娘エンタイシング Enticing (2004年 鹿毛 父ピヴォタル Pivotal)がモールコム・ステークス(GⅢ)に勝っています。

更に牝系を遡れば、4代母クロダ・ロッサ Croda Rossa (1967年 鹿毛 父グレイ・ソヴリン Grey Sovereign)はイタリア産馬で、グレイ・ソヴリン産駒ながらイタリアのヴェルメイユ賞とも呼ばれるリディア・テシオ賞(GⅠ)に勝った馬。
また5代母クレネル Crenelle (1960年 鹿毛 父クレペロ Crepello)は、イタリア・ダービー馬セレト Cerreto (1970年 栗毛 牡馬 父クロード Claude)を出してクラシック牝系を繋いできました。

以上、パワーは短距離系の父に中・長距離に強い牝系の配合。必ずしもマイラーとは断定できませんが、ロイヤル・アスコットではセント・ジェームス・パレス・ステークスに出走して3歳マイル戦の頂点を目指すようです。

ファミリー・ナンバーは、1-e 。

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1件の返信

  1. まとめtyaiました【2012クラシック馬のプロフィール(5)】

    今回と次回でアイランドのギニーを制した馬のプロフィールを紹介します。先に愛2000ギニーの勝馬パワー Power から。パワーは父オアシス・ドリーム Oasis Dream 、母フラッペ Frappe 、

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