2012クラシック馬のプロフィール(1)

今年もこの季節になってきました。純粋な意味でのクラシックを制した馬の、主に牝系について考察しようというコーナーです。
最初は英2000ギニーに勝ったキャメロット Camelot から。

キャメロットは、父モンジュー Montjeu 、母ターファー Tarfah 、母の父キングマンボ Kingmambo という血統。サドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells 系の父にミスター・プロスペクター Mr Prospector 系の母父というヨーロッパ、いや世界の主流となった配合によるクラシック馬です。
牝系に入る前に、2000ギニーのレポートでも紹介したキャメロットの死角についてもう少し研究してみましょう。その死角とは、父モンジューは春先のクラシック、特にマイル戦に実績が無いということ。

モンジュー自身のクラシック歴は、最初から1マイル半の距離を目標にしたもので、ギニーには見向きもせずグレフュール賞(2100メートル)からスタートし、仏ダービー、愛ダービーを連覇、秋には凱旋門賞馬になったクラシック馬でした。古馬の成績も含め、1マイル半のGⅠに5勝、2000メートルのGⅠも一鞍勝っています。
種牡馬になっても同様のローテーションを目指す馬が多く、2011年が終了した時点でモンジュー産駒の3歳以上でのGⅠ制覇(ヨーロッパのみ)は23鞍。その内2000メートルは4鞍で、残りは全て1マイル半以上の長距離戦でのもので、1マイルのGⅠ勝利は一鞍もありませんでした。あくまでもスタミナを伝える種牡馬としての評価が定まった感があります。

キャメロットは2歳時にレーシング・ポスト・トロフィー(1マイル)に勝ちましたが、2歳の1マイルはこの時点では中・長距離に匹敵するでしょう。モンジュー産駒でこのレースに勝ったのはキャメロットが4頭目。
その最初の2頭、オーソライズド Authorized とモティヴェイター Motivator は共に2000ギニー候補と期待されていましたが、結局は両馬ともダンテ・ステークスに勝ってからエプサム・ダービーを制し、2000ギニーには出走すらしませんでした。
3頭目はセント・ニコラス・アビー St Nicholas Abbey 。一昨年の2000ギニーでイーヴンの圧倒的1番人気に支持されながら6着に終わったことは記憶に新しい所でしょう。セント・ニコラス・アビーは現在も現役で、今年もシーズン初戦の2000メートル戦では伏兵に負けたばかり。オブライエン師がこの敗戦を全く気にしていないのは、モンジュー産駒の本領は1マイル半以上の距離と考えているからなのです。

ということでキャメロットが2000ギニーの本命に推されていたとき、上記のデータが一部血統評論家からモンジューの3歳以上の産駒には1マイルに勝てるスピードが不足するのではないか、という指摘の根拠になっていたのでしょう。

前置きはここまで。次に牝系について考えてみましょう。

母ターファー(2001年、鹿毛)は2勝馬。8ハロンと9ハロンでのもので、これは父キングマンボから想像できるように、1マイルのスピードにも決して事欠かないという証明でもありましょう。キャメロットはターファーの2番仔に当たります。
一つ上の姉はアイデアル Ideal と言い、父はモンジューと同じサドラーズ・ウェルズ産駒のガリレオ Galileo 。モンジュー以上のガリレオの凄さは去年のクラシック戦線でも紹介した通り、繰り返す必要は無いでしょう。アイデアルは、現時点で7戦1勝。唯一の勝鞍はクロンメルという小さい競馬場の1マイル4分の1で挙げたもの。ガリレオらしくスタミナ系と言って良いでしょう。

キャメロットの2代母フィックル Fickle (1996年、鹿毛、父デインヒル Danehill)も2勝馬。勝鞍は1マイルの未勝利戦と、1マイル4分の1のハンデ戦(ヴァージニア・ハンデ、リステッド)でした。これまでのところフィックルの勝馬はターファー以外にはマカオで勝ったシスティーヌ Sistine という牝馬がいるだけのようです。
またフィックルの未勝利の娘タフィヤ Tafiya (2003年、鹿毛、父バーリ Bahri)の初仔オーヴァーパワード Overpowered が去年、6ハロンと7ハロンのレースに勝ったことを追加しておきましょう。

3代母はフェイド Fade (1988年、鹿毛、父ペルセポリス Persepolis)。彼女は未出走でしたが、繁殖に上がって7頭の勝馬の母になりました。
1992年生まれのファルー Faru (鹿毛、牡馬、父ムトト Mtoto)はフランスで走り、ローカルのラングドック・ダービー(リステッド)などに勝ったステイヤー、障害戦にも勝鞍があります。また1999年の産駒バーディー Birdie (鹿毛、牝馬、父アルハース Alhaarth)はリングフィールド・オークス・トライアル(リステッド、2300メートル)に勝ったこれまたステイヤー。
更に3勝したフェイドの娘イヴ Eve (1997年、鹿毛、父レインボウ・クエスト Rainbow Quest)からは、ノヴェンバー・ハンデ(ドンカスター、1マイル半)に勝ったチャーム・スクール Charm School (2005年、鹿毛、せん馬、父デュバイ・デスティネーション Dubai Destination)が出ています。

4代母はワン・オーヴァー・パー One Over Parr (1972年、鹿毛、父リフォーム Reform)と言い、私には大変に懐かしい馬。実は1975年にダービー・オークス観戦でエプサムを訪れた時、オークスの有力候補の1頭だったのが彼女。トライアルの一つチェシャー・オークスに勝っただけでなく、前年のオークス馬ポリガミー Polygamy (1971年、鹿毛、父リフォーム)の全妹という血統が魅力になっていた馬でした。私自身眼前で見ただけに、懐かしさは一入です。
ということで5代母セヴンス・ブライド Seventh Bride (1966年、鹿毛、父ロイヤル・レコード Royal Record)はオークス馬の母。
(余談ですが、セヴンス・ブライドは文字通り7番目の花嫁、オークス馬ポリガミーは一夫多妻という意味ですから、血統的な馬名で筋は通ります。ところが妹ワン・オーヴァー・パーは何か。どうしてもゴルフ用語を思い出しますが、何故この名前なのか、当時一緒に行った仲間たちと論戦したことも懐かしい思い出ではあります)

以上、キャメロットは1マイルのスピードがあることを身を以て証明しました。馬場が重かったこともこの馬に利したのかも知れません。
さてダービーは如何に。これまで見てきたように、キャメロットはギニーよりはダービーに向いた血統と考えて間違いないでしょう。すんなり二冠馬に成れるかは別問題ですが・・・。
ダービーのオッズだけでなく、三冠達成のオッズすら発表されているのは、血統主義者たちの熱狂が根拠になっているためと思われます。

ファミリー・ナンバーは、4-O 。

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1件の返信

  1. まとめtyaiました【2012クラシック馬のプロフィール(1)】

    今年もこの季節になってきました。純粋な意味でのクラシックを制した馬の、主に牝系について考察しようというコーナーです。最初は英2000ギニーに勝ったキャメロット Camelot から…

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