ヘンシェルQ演奏会
昨日は晴海のSQW例会で、ミュンヘンを本拠にするヘンシェル・クァルテットを聴いてきました。メンバーは、
第1ヴァイオリン/クリストフ・ヘンシェル
第2ヴァイオリン/マルクス・ヘンシェル
ヴィオラ/モニカ・ヘンシェル=シュヴィント
チェロ/マティアス・D・バイヤー=カルツホイ
チェロ以外の3人がヘンシェル家の兄弟姉妹です。彼らがこのシリーズに登場するのは2度目。間違っているかも知れないけれど、4年前は確かモニカが出産休暇で、ヴィオラは代役さんが弾いていたような記憶があります。で、曲目は、
ハイドン/弦楽四重奏曲第74番 ト短調 作品74-3「騎士」
ヤナーチェク/弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」
~休憩~
ブラームス/弦楽五重奏曲第2番 ト長調 作品111
ブラームスの第2五重奏は前回のプログラムでもメインで、今回も前回同様第2ヴィオラでの共演は澤和樹。ヘンシェルとは度々共演する間柄で、ドイツでもモーツァルトを取り上げている由。
ロビーに入ると貼り紙があり、NHKのハイビジョン収録があるとのこと、来年1月にクラシック倶楽部でオンエアされるそうです。朝6時からの帯番組。
なるほどホールには5台のカメラが据えられていました。映らないことを祈るばかり。
下のロビーではCDも売ってました。終了後にサイン会もあるそうな。最初素通りしたんですが、思い直してCDコーナーに引き返します。メンデルスゾーン全集とヒナステラ全集は持っていますが、シューベルトは買い損なったアルバム。それがあったので700円でお買い上げぇ~。
NHKが収録するだけあって、いつもよりは客席も埋まっていました。常連の Ladies and Gentlemen の他に若干の Others も。こういうのを見ると、ヤッパリいつもの落ち着いた雰囲気が恋しい、って何と身勝手な感想であることか。
さて最初はハイドン。実は前回もハイドンが冒頭にありました。そのあとメンデルスゾーンの第2があり、メインがブラームスでしたね。
そのときの感想は某掲示板に書いたのですが、ハイドンの頭で思い出しました。あの時は「ひばり」。その柔らかでフワッとした出だしが実に魅力的だったんです。“ドイツの団体ながらアタックを強くせず、流れるように歌う”なんて生意気なこと書いてましたね。
この冒頭で「ヘンシェルの音」が瞬時に蘇りました。騎士も良く歌い、実に柔らかく、かつ活力に溢れた音楽が続きます。キモは終楽章、ここではかなり劇的な表現が付けられ、背筋を伸ばしてしまいました。
私にとって騎士は、青木Qの白鳥の歌(*)以来、あるイメージが付き纏って離れません。今回も無意識のうちに「そのこと」を思い出してしまいました。
ヤナーチェクも実に真剣な姿勢。息をするのも憚られるほど。作品を通してあるがままを伝えんとする彼等の意欲に圧倒されます。
ブラームス。これはブラームスの数ある名曲中でも白眉でしょうか。これをもって引退を決意したブラームスの心情。ブラームスが最も愛したヴィオラを加え、室内楽ながら響きはシンフォニーの如し。
第3楽章の「悲しきワルツ」、第4楽章「チャルダシュ」と、後半に舞曲風の楽章を据えて、しっかりと古典の伝統を守っているのですね。
ブラームスがこれを作曲したのは57歳のとき。前回ヘンシェルがこれを演奏したとき、偶然にも私は57歳が目前でした。だからというわけではないのですが、前回は切実さに胸が潰れる思いでした。当時は精神的にもかなり追い詰められていたので、より痛切に聴いてしまったんでしょう。恐らくポリープが出来たのはその頃のことじゃないかな。
今回は精神的にもずっと楽ですし、もっと気楽にブラームスの室内楽を満喫してきました。ヘンシェルの「円熟」が感じられたのかも知れません。
前回のアンコールはブラームスの第3楽章を繰り返したのですが、今回はメンデルスゾーンの第2弦楽五重奏から第2楽章、アンダンテ・スケルツァンドが選ばれました。
(*)
毎夏出掛ける霧が峰のクヌルプ・ヒュッテ。その常連さんに青木ご夫妻がいらっしゃいます。鈴木メソードで子供たちにヴァイオリンを教えている方。博幸・鮎子ご夫妻はときどきアンサンブルを組んでコンサート活動も行っています。ぶらあぼ等に案内が載る団体じゃありません。
数年前、鮎子さんが不治の病に冒されていることが発覚。青木Qが予定を繰り上げて敢行した最後の演奏会で弾かれたのがバルトークの第6とハイドンの騎士でした。
鮎子さんが亡くなった翌夏のクヌルプで、その演奏会のライヴ録音を聴かせて頂きました。もちろんプロフェッショナルの団体とは比較になりません。しかし騎士の終楽章、テンポを異常に遅く採り、切々と歌う白鳥の歌。私の耳に焼き付いてしまってどうしようもないのです。
この10月、青木氏から長文の手紙を頂きました。お互いに面識はないのですが、クヌルプの日記帖でそれとなく意識しいる関係。もちろん松浦翁の仲介があってのこと。
“何時か暖炉を囲んで、ゆっくりと音楽の話がしたい”
12月に府中で教え子達と小さいコンサートを開かれる由。是非その際には楽屋をお尋ねして、ご挨拶を致しましょう。私もいずれは自由の身。そうなれば時期を合わせてクヌルプへ。取り敢えず府中で初対面という計画、電話でお話したばかりです。
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