BBCウェールズ管のドビュッシー

昨日(7月26日)のプロムスは二本立て。午後7時からはBBCウェールズ・ナショナル管のコンサートがあり、それが終わったあと、午後10時15分からはベートーヴェン・ツィクルスの第5回が行われました。
プロムスではこのような一日2回公演が時々あって、もちろんチケットは別々に販売されていますから、聴衆は入れ替えになるのでしょう。日本ではマチネーと夜という2回公演はありますが、夜に2回というのはまずあり得ないと思います。

で、最初に7時からのオーケストラ公演。

≪Prom 16≫
エルガー/南国にて
ヒュー・ウッド/ピアノ協奏曲
     ~休憩~
ラヴェル/海原の小舟にて
ドビュッシー/沈める寺(ヘンリー・ウッド編曲)
ドビュッシー/海
 管弦楽/BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団
 指揮/ライアン・ワイグルスワース
 ピアノ/ジョハンナ・マクレガー

このオーケストラは我が尾高忠明が桂冠指揮者を務めている団体で、このあと尾高氏も登場する予定になっています。この日は当初予定されていた首席指揮者ティエリー・フィッシャーの体調が悪く、ワイグルスワースに替ったもの。
プログラムの前半はイギリス音楽、後半はフランス音楽ですが、もちろん隠れテーマは生誕150年のドビュッシー。ドビュッシーがフランス人であるにも拘わらず英国好きだったことに引っ掛けたプログラムでしょう。英国作品も外国との関連から生まれた作品が選ばれているのもミソ。チョッと見ただけでは主旨が判らない所が如何にも英国的であり、五輪を意識した選曲でもありましょうか。

冒頭のエルガーは、作曲者のイタリア(リヴィエラ)滞在から生まれた作品。

2曲目のヒュー・ウッドは日本ではほとんど知られていませんが、今年80歳になる英国の重鎮で、ティペットとメシアンに影響を受けた方。アヴァンギャルドの手法で書いてきた人ですが、今回のピアノ協奏曲はそんな難解さは聴かれません。
1991年のプロムスのために作曲されたものの再演で、全体は3楽章で構成。第2楽章はナット・キング・コールが歌ってヒットした Sweet Loraine の主題に基づく変奏曲(最後に主題が出る構成)になっている由。
全体にジャズのイディオムが使われ、ソロを弾くマクレガーもクラシックとジャズで活躍している人。イギリスとアメリカのコラボ、でしょうかね。

ラヴェルに続いて演奏された編曲ものは珍しいでしょう。私はこういうものが存在することを初めて知りましたし、もちろん初めて接する編曲。プロムスならではでしょうか。
ヘンリー・ウッドとドビュッシーの関係は実は深くて、ウッドは1909年、態々ドビュッシー自身に指揮してもらうためにクィーン・ホール管弦楽団を創設したのですね。このオーケストラとこのホールこそ、現在のプロムスの基礎になっているわけで、正にドビュッシーはプロムスにとって因縁となる人物だったワケ。
この編曲は1919年、ドビュッシー没の翌年にウッドが完成したもので、有名なストコフスキーの編曲より先になります。1919年に初演され、1921年と1922年にも演奏されましたが、今回の演奏がそれ以来の再演となるのだとか。実際に聴いてみると、単にピアノのパートをそっくりオケに置き換えただけではなく、テンポの変化などウッド独特の変更も施されていました。恐らく聴ける機会は今だけでしょうから、興味ある方は是非BBC3にチャンネルを合わせて下さい。

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