プロムスのゲヴァントハウス管(1)

9月に入ったプロムス、最初の2日間はゲヴァントハウス管の演奏会です。初日は同オケの大先輩にあたるオール・メンデルスゾーン・プログラム。

≪Prom 67≫
メンデルスゾーン/序曲「ルイ・ブラス」
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
     ~休憩~
メンデルスゾーン/序曲「美しきメルジーネ」
メンデルスゾーン/交響曲第5番
 管弦楽/ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
 指揮/リッカルド・シャイイー
 ヴァイオリン/ニコライ・ズナイダー

何でもない名曲を並べたようにも見えますが、実はヴァイオリン協奏曲以外は全て普通に演奏される譜面ではなく、オリジナル・ヴァージョン。プロムスでは3曲全てが初登場だそうです。
英国の古楽器系指揮者ホグウッドが力を入れているベーレンライター版だそうで、シャイイーはこれらを研究し、ライプチヒにおける真のメンデルスゾーンを描こうというのが目的の由。確かヴァイオリン協奏曲にも「オリジナル・ヴァージョン」があったはずで、何でこれだけ現行版で演奏されたのかは不明。
恐らくソリストが拒否したんでしょうね。今更違和感のある原典などで演奏したくない、と。

ソロのズナイダーはデンマーク生まれのヴァイオリニスト。クライスラーの1974年製グァルネリ・デル・ジュスを使用しているそうです。
アンコールがあって、バッハのパルティータ第3番から有名なガヴォット。

他は全て初めて聴いたオリジナル。荒っぽい感想を言えば、ルイ・ブラスは現行版との相違は僅かです。一方メルジーネはかなり異同があり、全く別の曲と言っても良さそう。

第5交響曲も最初の3楽章は現行版と余り変わりありません。特に第2楽章と第3楽章は、夫々1小節ほど長くなっているだけ。
驚くのは終楽章で、冒頭の有名なコラールが出てくるまでに色々な仕掛けがあります。特にフルートのソロが活躍するのが特徴で、現行版で聴き馴染んでいる耳には冗談音楽の様に聴こえました。
主部もかなり違っていて、オリジナルはソナタ形式の再現部が明確。コーダもまるで異なり、コラールで堂々と締め括られるのとは程遠い終結。これは断然現行、というか改訂された版の方が優れていると思います。

第2楽章と第3楽章の間で何か大声で叫んだ人がいましたが、あれは何て言ったんですかね。

結論を言えば、オリジナル版だからどうなの? というのが正直な感想。ベーレンライター新校訂版なるものも最初のベートーヴェンの頃は物珍しさもありましたが、ここまで来るとウンザリします。新しい譜面を買わせるための営業政策としか思えません。
シャイイーという人は、確かシューマンはマーラー版で演奏していたはずで、人とは違う演奏をすることに夢中なのでしょうか。私は好きになれませんな。
衒学的演奏スタイルが好きな人、ゲテモノ趣味のファンには面白いかも知れませんが、一般的な聴き手には薦められない演奏会でした。
 
アンコールもあって、メンデルスゾーンの結婚行進曲。これまたオリジナル校訂版かと思って聴いていましたが、現行版と同じに聴こえます。少なくとも私の耳には。

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