プロムス・ファースト・ナイト
7月13日(金)から英国夏の音楽の祭典、プロムスが始まっています。何年か前から全てのプログラムがネット中継されていて、ライヴのあと1週間はBBC3で聴くことが出来ます。
私も去年はロンドンに出掛けて何回かアルバート・ホールに通ったのですが、今年は例の五輪大会が重なっていてホテルの宿泊料がバカ高くなっています。で、今年は参戦を諦めてネットで楽しむことにしました。
もちろん全部聴く予定もありませんが、面白そうなものだけ音楽番組カテゴリーで紹介して行くことにしましょう。ネット中継ですから音質などは「聴こえてくる」程度。あまり細部には立ち入りません。
ということで13日のオープニング、「Proms 1」として演奏されたファースト・ナイトはこんな具合でした。
①マーク=アンソニー・ターネージ/キャノン・フィーヴァー(世界初演)
②エルガー/コケイン序曲
③ディーリアス/海流
~休憩~
④ティペット/チャールズ王子の誕生日のための組曲
⑤エルガー戴冠式頌歌
管弦楽/BBC交響楽団
指揮/①⑤エドワード・ガードナー ②サー・ロジャー・ノリントン ③サー・マーク・エルダー ④マーチン・ブラビンス
独唱/③ブリン・ターフェル(バス・バリトン)
⑤スーザン・グリットン(ソプラノ)、セーラ・コナリー(メゾ・ソプラノ)、ロバート・マレイ(テノール)、ジェラルド・フィンリー(バス・バリトン)
合唱/③⑤BBC合唱団
今年はロンドン・オリンピック、エリザベス女王のダイヤモンド・ジュビリー(即位60周年)が重なることもあって、例年以上に英国色の強いプログラムが組まれていますね。それにドビュッシーとデリアスの生誕150年に当たることもあって、この二人の作品が音楽祭を通じて取り上げられるのも聴き所でしょう。特にディーリアスは日本では無視状態ですから、この機会に纏めて聴いてみようと思います。
BBCでは関連の音楽番組も豊富ですから、新しい発見があるかもね。
さて初日は、4人の指揮者が入れ代わり立ち代わり登場するのが面白い所。もちろんプロムスのホスト・オケであるBBC響で、指揮者は全て英国人です。
①はプロムスでは恒例になっている委嘱作品の世界初演。今年のターネージは、BBC Music Magazine が創刊20周年を迎えるにあたって委嘱されたファンファーレで、雑誌の9月号にはCDが付録で付くのだそうな。
ホルン4、トランペット4、トロンボーン3、チューバ、打楽器、バス・クラリネットとコントラ・ファゴット(木管はオプション)のために書かれた3分ほどの曲。
②はノリントン登場。第2ヴァイオリンが右から聴こえてきますから、いつものように弦楽器は対抗配置なんでしょう。
③はターフェルの独唱と合唱を含む作品。この曲は英語とドイツ語の版がありますが、もちろん英語版による演奏。練習番号19の一節は、オリジナル通りにアカペラによる歌唱でした。
ターフェルはチョッと調子が悪そうにも感じましたが、存在感は相変わらずみたい。
④を振るブラビンスは、今期から名古屋フィルの首席指揮者に就任する方。ダウンロードできるプログラムにもその旨が記されています。作品は親しみ易いもので、第2楽章「子守唄」が特に美しく、楽章が終わると自然に拍手が起きていました。
最も興味深く聴けたのは⑤。多分初めて耳にした作品です。この曲には1902年版(オリジナル)と1911年版(改訂版)の2種類があって、今回は改訂版によるプロムス初演なのだそうです。
新版は7楽章(オリジナルは6楽章みたい)ですが、4曲と5曲はアタッカで続けて演奏されます。
ビックリするのは、第1曲の終わりに威風堂々行進曲の中間部のテーマが出てくること。そして最後の第7曲はタイトルも「Land of Hope and Glory」(希望と栄光の国)となっていて、威風堂々主題がメゾ・ソプラノと合唱で高らかに歌い上げられます。
これ、ロンドンで沸かないワケが無いですよね。初日から客席は大フィーヴァーで、最後は4人の指揮者も揃って歓呼に応えていたそうです。
放送は19日まで聴くことができますから、興味ある方はBBC3で検索してください。特に最後のエルガーはイギリスの合唱音楽の美しさが堪能できますよ。
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