土曜のGⅠ戦3鞍

9月第1週のアメリカ競馬は、月曜日の祝日も含めて3日連続でG戦が組まれています。夏開催のフィナーレが近付いていることもあり、各分野の集大成的な意味を備えたグレード戦が並んでいるのが見所でしょう。
先ずは9月1日、土曜日の4場、6鞍のG戦から。

最初はモンマス・パーク競馬場のクリフ・ハンガー・ステークス Cliff Hanger S (芝GⅢ、3歳上、8ハロン)。firm の芝コース、2頭が取り消して5頭立てで行われました。6対5の1番人気に推されたソルト Salt はアイルランドから転籍してきた馬。ここモンマス・パークで2戦して未勝利ですが、3戦目での初勝利に期待が掛かっていました。トッド・プレッチャー厩舎、ウエルザイマー家の持ち馬と言う要素も人気の一因でしょう。
レースはこの競馬場を得意にするゲット・シリアス Get Serious (3対1、2番人気の1頭)が逃げましたが、2番手を楽に追走していた最低人気(と言っても6対1)のチューン・ミー・イン Tune Me In が抜け出し、最後方から追い込む本命ソルトに1馬身差を付けて逃げ切ってしまいました。頭差3着に逃げたゲット・シリアス。
ブルース・アレキサンダー厩舎、パコ・ロペス騎乗のチューン・ミー・インは、前走オーシャンポート・ステークス(芝GⅢ、7月29日、モンマス・パーク)を25対1の(これまた)最低人気で今回同様2番手から抜け出して大穴を開けた芦毛馬。そのときはG初挑戦でフロック視する人も多かったのですが、これでG戦に2連勝。得てして人気になると負けるケースが多いものですが、果たして3匹目の泥鰌がいるでしょうか。

次はアーリントン・パーク競馬場に行きましょうか。ワシントン・パーク・ハンデキャップ Washington Park H (GⅢ、3歳上、9ハロン)。ポリトラック・コースは fast 、雨で馬場が引き締まり、走り易い状態だったようです。7頭立て、8対5の1番人気はアスムッセン厩舎、開催リーディング・ジョッキーのジェームス・グレアムが騎乗するプレイヤー・フォー・リリーフ Prayer for Relief 。今期は7戦して勝星には恵まれてはいないものの、去年はアイオワ、ウエスト・ヴァージニア、スーパーと3つのダービーを制した強豪。前走レミントン・パーク競馬場の高額一般ステークスで2着して復活の兆しが見えていました。
レースはワーキン・フォー・ホップス Workin for Hops が逃げましたが、好スタートから2番手も一旦は4番手まで下げていた5番人気(14対1)の伏兵ミッディー Middie が3~4コーナーの途中で一気にスパートして後続を5馬身引き離し、直線でも追い込む2番人気(2対1)のミスター・マルティ・グラ Mister Marti Gras を3馬身4分の1差寄せ付けずに逆転劇を演じました。更に2馬身4分の3差で3着にプール・プレイ Pool Play 、人気のプレイヤー・フォー・リリーフは6着惨敗。勝時計1分49秒27はトラック・レコード。この競馬場にポリトラック・コースが導入されたのは2007年ですが、その年に出たタイムを5年目に更新したことになります。
フィリップ・オリヴァー厩舎、フランシスコ・トーレス騎乗のミッディーは、これで今シーズンは7戦2勝。通算成績も16戦4勝となり、G戦は初勝利となります。

そしてG戦が3鞍組まれているサラトガ競馬場、最初はバーナード・バルーク・ハンデキャップ Bernard Baruch H (芝GⅡ、3歳上、8.5ハロン)から。芝コースは firm 、2頭が取り消して6頭立ての競馬です。イーヴンの1番人気はデータ・リンク Data Link 、4月にキーンランドでメイカーズ・46マイル(芝GⅠ)、6月にはモンマス・パークでモンマス・ステークス(芝GⅡ)をコース・レコードで制した芝巧者で、管理するマゴーヒー厩舎も今年のG戦9勝のうち8戦は芝コースでのものという芝に強いコンビに期待が集まっていました。
しかし好スタートで先手を奪った2番人気(9対5)のドミナス Dominus 、他に逃げ馬がいない利点を活かして逃げ切ってしまいました。2~3番手を追走したデータ・リンクも懸命に追いましたが、逃げ馬の脚色鈍らず1馬身4分の1差捉え切れません。同じく1馬身4分の1差でスタートで出遅れたスカイ・ブレイザー Sky Blazer が3着。
まんまと逃げきったドミナスはトッド・プレッチャー厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗。去年まではスティーヴン・アスムッセン厩舎に所属、ダイヤー・ステークス(GⅡ)に勝っていた馬で、プレッチャー厩舎に転じてからは8月4日の7ハロンのダート戦に勝ってここに臨んでいました。芝コースは今回が初挑戦で、芝コースのG戦はもちろん初勝利となります。

続いてはフォアゴ・ステークス Forego S (GⅠ、3歳上、7ハロン)。ダート・コースは fast 。当初は8頭が登録していましたが、残念ながら当日の朝になってシャックルフォード Shackleford が軽症ながら出走を取り消し、7頭立てで行われました。出れば人気になるはずのシャックルフォードが抜けて1番人気(3対2)に押し出されたのは、スピードが売りのエムシー Emcee 。去年のフォアゴを制したジャクソン・ベンド Jackson Bend も本来なら有力視される所でしょうが、調教でアクシデントがあり出否も危ぶまれていたほど、5対2の2番人気とやや不安視されていました。
ジャクソン・ベンドの不安は残念ながら当たってしまい、スタートで出遅れ、やや挽回する動きも見られたものの、そのまま最下位で入線しています。陣営では長期休養に入るとのこと。一方、期待を裏切らなかったのは本命に推されたエムシー、2~3番手を進み、直線では後続を4馬身半引き離す楽勝です。レースはパシフィック・オーシャン Pacific Ocean が逃げましたが、徐々に順位を上げてきたジャージー・タウン Jersey Town が内をすり抜けるようにスパートして一気に先頭を奪いましたが、エムシーに騎乗したアラン・ガルシアは落ち着いて馬を外に持ち出し、直線では横綱相撲を演じたもの。2着はハメイジング・デスティニー Hamazing Destiny が追い上げ、首差3着にジャージー・タウン。
キアラン・マクローリン厩舎のエムシーは、前走サラトガのヴァンダービルト・ハンデ(GⅠ)では逃げて3着に粘っていました。オーナーのゴドルフィンにとっては、これが今開催サラトガでのGⅠは4勝目。CCAオークスとアラバマのクエスティング Questing 、トラヴァースのアルファ Alpha (同着ではありましたが)に続く快挙となります。因みにサラトガで行われるGⅠは全部で15レース、残るは次のウッドワードと明日のスピナウェイの2鞍となりました。

サラトガの最後はウッドワード・ステークス Woodward S (GⅠ、3歳上、9ハロン)、サラトガ開催での後ろから2番目のGⅠ戦です。7頭立て、前走サバーバン・ハンデ(GⅡ)に勝ったムチョ・マチョ・マン Mucho Macho Man が4対5の1番人気に支持されていました。サバーバンはグレード・システム導入時からGⅠに格付けされていましたが、現在はGⅡに格下げ。馬にとっても、管理するキャシー・リトヴォ女史にとってもGⅠ初制覇を狙う絶好のチャンスです。
ところが運は陣営に味方せず、スタートで出遅れたムチョ・マチョ・マンは最後方を追走する展開となり、直線で猛然と追い上げたものの首差届かず2着惜敗。僅かの所でGⅠを逃してしまいました。敗因はスタートにあることは間違いないでしょう。レースはルール Rule が逃げ、3番手を進んだ2番人気(7対2)のトゥー・オナー・アンド・サーヴ To Honor and Serve が抜け出して外から来たムチョ・マチョ・マンとの叩き合い。一歩抜け出しが早かった分、トゥー・オナー・アンド・サーヴに利があったようです。3着は2馬身4分の3差でシーズ Cease 。
ウイリアム・モット厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のトゥー・オナー・アンド・サーヴは、これがGⅠ2勝目。去年のシガー・マイルに続く最高格制覇です。今年は4月にウェストチェスター(GⅢ)に勝った後5月のメトロポリタンで3着、前走サバーバンは4着という成績でした。今年のブリーダーズ・カップを最後に引退することが決まっていますが、BCでどのレースに挑戦するかは未定のようです。

最後はデル・マー・競馬場から、デル・マー・デビュタント・ステークス Del Mar Debutante S (GⅠ、2歳牝、7ハロン)。夏のデル・マー開催、2歳牝馬の開催チャンピオン決定戦ですね。fast の馬場、ここまでチャンピオンのエクゼキュティヴプリヴィリッジ Executiveprivilege に続けて2着して来たスピーディンスルーザシティー Speedinthruthecity が取り消したため8頭立て。ライヴァル不在となったエクゼキュティヴプリヴィリッジが4対5の1番人気に支持されていました。
結果も順当に本命馬がGⅠタイトルを手にしましたが、気楽に逃げた4番人気(8対1)のビホールダー Beholder を捉えるのにはかなり苦労を要しました。内ラチ一杯に逃げるビホールダーを5番手追走から外を回って追い上げましたが、直線コース全てを目一杯使って追い上げた結果のハナ差。内外が大きく離れていたこともありましたが、最後は微妙な写真判定でした。3着は4馬身4分の1差で2番人気(5対2)のメチャヤ Mechaya 。
勝馬を管理するボブ・バファート師にとっては、これが7勝目となるデビュタントですが、勝鞍は2006年のポイント・アシュレー Point Ashley 以来のこと。騎乗したラファエル・ベハラノ騎手は、これが今デル・マー開催でのG戦12勝目。これはピンカイ、マッカロン、スティーヴンス、ナカタニと並ぶ最多記録だそうで、残り3鞍のG戦に勝てば単独最多勝の新記録となるそうです。
今回はブリーダーズ・カップへの優先出走権対象レースではありませんが、勝馬かBCジュヴェナイル・フィリーズの有力な1頭であることは間違いありません。これで4戦4勝の無傷、無敗のままBCに向かうことが出来るでしょうか。

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