イボア開催2日目

二日目の呼び物はヨークシャー・オークス。もう、ピーピング・フォウンの独壇場でしたね。
実はこれにはアレキサンドロヴァの登録があったんです。ピーピングと同じエイダン・オブライエン厩舎、去年のイギリスとアイルランドのオークスに勝ち、このヨークシャー・オークスも制した女傑です。秋にロンシャンのオペラ賞でマンデシャの3着敗退以来、出走していなかった馬。それが久し振りでカムバックし、一つ下の同僚と対決する筈でした。
ところがどうも状態が思わしくないようで、結局は回避してしまったんです。

ということもあって、ピーピング・フォウンは敵なし。ムルタ騎手は鞭を一発も入れてません。文字通り“手と踵だけ”(hands and heels)だけで追っていました。日本風に言うと、馬なり、とか、持ったまま。グッドウッド・カップに勝ったアレグレットに4馬身、3着トリック・オア・トリートとは更に5馬身の差がつきました。
昨日のインターナショナルに出ていても勝ち負けだったのでは、と思ってしまいます。実際、オーソライズド対ピーピング・フォウンは今年最大の見ものでしょう。凱旋門賞で実現する予定。
これでピーピングは8週間で4つのGⅠを勝ったことになります。プリティポリー、愛オークス、ナッソー、ヨークシャーオークスと。
正に「鉄の女」、Iron Lady ですね。

2歳のジムクラック・ステークス。ほとんど初めて耳にする馬ばかりでしたが、サー・ジェリー Sir Gerry が勝っています。ジョッキーはジェイミー・スペンサー。
一旦スタンドよりの最後方に進路を変えましたが、中程で前が空きそうもなく、再び大外にコースを替えて一気に追い込みました。道中かなりロスがあったように見えますが、それでも2着に1馬身4分の1、なかなか見どころあります。
2着に入ったグレート・バリアー・リーフ Great Barrie Reef という馬はオブライエン厩舎の未出走馬ですね。つまりこれがデビュー戦。まだ赤ん坊ですが、レースを覚えてくればもっと良くなるでしょう。

折角ですからイボア・ハンデにも触れておきます。これは1マイル6ハロンという比較的長距離のレースです。ハンデ戦は荒れるのが常ですが、今年は1番人気のパープル・ムーンが勝ちました。2着も人気サイドでホノルル。これも勝利騎手はスペンサー。
パープル・ムーンは冬場のシーズンには障害競走にも出走していた馬ですが、幸いというか、障害は嫌いなんだそうですね。
この馬ステイヤーだけに、秋はメルボルン・カップを視野に入れているそうです。オブライエンのイェーツ、セプテマスと共に南半球に遠征するんでしょうか。

ところでハンディキャップ戦は、ゴールで全馬が横一線でゴールインすべく、各馬にハンデを課します。ですからヨーロッパのパターン・レース体系には組み入れられません。ここがアメリカのグレード・レース・システムと違うところです。
昔は結構な実力馬もハンデ戦に出たものですが、最近はやや格下馬のレースになってしまいました。
そもそもイギリスの競馬が今日の形に整えられてきたのは18世紀中頃から後半にかけてのこと。この時期に取り入れられたレース形態として次の3っつのものが挙げられます。

①それまでの「ヒート」に替わって「レース」が主体になったこと
②3歳馬のみによるクラシック・レースの創設
③ハンディキャップ・レースの導入とベッティング(賭け)の公式化

①はいずれ何かの機会に触れようと思いますが、それ以前の競馬は完全に貴族間のスポーツであり、大衆が観戦したり参加したりするものではありませんでした。
従ってハンデ戦や障害レースは、現在でも一般には人気が高いんですね。オーソライズドやピーピング・フォウンに賭けても、一攫千金は得られませんから。

 

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