2000ギニーに旋風?
ニューマーケットのクレイヴァン開催二日目、開催のタイトルでもあるクレイヴァン・ステークスを含めて3鞍のG戦が行われました。
最初はアバーナント・ステークス Abernant S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。おやっ? と思われた方は相当な競馬通で、この短距離戦は去年まではリステッドに格付けされていた一戦、今年から目出度くG戦に格上げになっています。
馬場は前日より少し回復して good to firm 、当初登録から2頭が取り消して9頭立てで行われました。出走馬中7頭がシーズン初戦の冬休み明けということもあって、既に今年2戦して2勝のムーヴ・イン・タイム Move in Time が9対4の1番人気。パターン・レースの常連で、去年は休み明けの3月にドンカスターでリステッド戦に勝った実績のあるザ・チェカ The Cheka が4対1の2番人気で続きます。
レースは5番人気(8対1)の明け4歳馬ティックルド・ピンク Tickled Pink がスタートから先手を取り、2番手追走の伏兵(20対1)ジミー・スタイルズ Jimmy Styles に付け入る隙を与えぬまま2馬身差を付ける逃げ切り勝ち。ムーヴ・イン・タイムも3番手から抜けようとしましたが伸びず、そのまま2馬身4分の3差で3着。後方追走のザ・チェカは8着に沈みました。
ティックルド・ピンクは、前日にホット・スナップ Hot Snap でネル・グィン・ステークスを制したヘンリー・セシル調教師、トム・クィーリー騎乗のコンビ(但しオーナーは異なります)。シーズン開始から飛ばすセシル厩舎です。元来セシル厩舎はスプリンターとは余り縁がありませんが、勢いが止まらない印象。
勝馬は、去年6月にヤーマス競馬場で未勝利を脱して以来10か月振りの実戦。セシル師によれば、シーズン冒頭からスプリント路線のパターン・レースを目指しているとのこと。同馬の母カサンドラ・ゴー Cassandra Go はロイヤル・アスコットでキングズ・スタンド・ステークス(GⅠ)を制したスピード馬だけに、血統的な背景も充分と言えましょう。
続いては愈々クレイヴァン・ステークス Craven S (GⅢ、3歳、1マイル)。本番と同じ距離、同じコースで行われるトライアルです。出走馬は僅かに4頭ですが、いずれもG戦勝馬。量より質が見所の一戦です。唯一GⅡ(シャンペン・ステークス)に勝っているトルネード Toronado が3ポンドのペナルティーを背負っているにも拘わらず8対11の圧倒的1番人気。2番人気(11対4)のダンドネル Dundonnell はシャンペンで本命馬の2着と決着が付いていますし、トトーソル・ステークス勝ちのハヴァナ・ゴールド Havana Gold は本命馬と同じリチャード・ハノン厩舎の出走馬。残るはシーズン最終戦の重馬場で行われたホーリス・ヒル・ステークス勝馬のタウヒード Tawhid 。
4頭立てということで紛れの無い競馬。スタートから実力の違いを見せ付けたトルネード、リチャード・ヒューズ騎手が最後に追い出す余裕を持たせたまま堂々の逃げ切り勝ちです。ダンドネルが2番手を追走しましたが、最後はハヴァナ・ゴールドが替って2着に上がり、勝馬とは4馬身差。ハノン厩舎は去年に続きワン・ツー・フィニッシュです(去年はトランペット・メジャー Trumpet Major -クライアス Crius)。首差でダンドネルが3着に入り、最初に脱落したタウヒードは10馬身離されてシンガリ。
各ブックメーカーもこの内容を高評価、2000ギニーのオッズは3対1から4対1に上がり、ドーン・アプローチ Dawn Approach に次ぐ2番人気に付けています。この週末にはグリーナム・ステークスにクラシック候補の1頭であるオリンピック・グローリー Olympic Glory を出走させる予定のハノン師、“もし本番でトルネードを負かす馬がいれば、その馬が2000ギニー馬さ”と自信満々。ダービーについての問いには、“距離も問題無いね。オーナー(カーマイケル・ハンバー氏)は、この馬の血統を良く知っているよ”と答え、ダービーのオッズは8対1周辺が出されました。
これで4戦無敗となったトルネード、僚馬オリンピック・グローリーとの英仏棲み分けという嬉しい悩みも出てきました。名前の通り、クラシックに旋風を巻き起こすことになるでしょうか。
この日3鞍目のG戦は、古馬マイル・プラス路線のアール・オブ・セフトン・ステークス Earl of Sefton S (GⅢ、4歳上、1マイル1ハロン)。出走馬は6頭、絶好調セシル厩舎が送るスティピュレイト Stipulate が15対8の1番人気。こちらはアブダッラー殿下、トム・クィーリー騎乗のチーム・フランケルでもあります。去年のダービーで2番人気に祭り上げられたボンファイア Bonfire は、せん馬の手術を受けて以後最初のレースで、11対4の2番人気で続きます。
逃げたのは女流騎手ヘイリー・ターナー騎乗のブーム・アンド・バスト Boom And Bust 、これを追走した有力グループから抜け出したのは、3番人気(3対1)のマル・オブ・キラー Mull of Killough でした。1馬身半差2着に3番手追走の本命スティピュレイトが入り、更に2馬身4分の1差でボンファイアの順。
ジェーン・チャップル=ハイアム女史が管理、ジョージ・ベイカー騎乗のマル・オブ・キラーは、現在も成長中の7歳せん馬で、去年秋に初めてハンデ・クラスを脱して挑戦したダーレー・ステークス(GⅢ)でパターン戦勝馬に名を連ね、そのあと勝ったリステッド戦も含めて3連勝。陣営によればシンガポール遠征も視野に入っているとのことですが、英国に留まってより上のランクを目指す選択肢もあるようです。
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