N響カンタービレ・コンサート

大型連休の一日、サントリーホールで豪華なオーケストラ・サウンドを楽しんできました。

連休には完全に縁の切れたメリーウイロウは、蟄居の休日も5年目を迎えました。月日が経つのは速いもの。
近年この時期は有楽町でクラシック祭りが開催中、あの非音楽的空間に馴染めない私は、例年演奏会からは遠のきます。あのお祭りも現代音楽特集でもやってくれれば話は別なんですがねェ~。

しかし今年はチョッと面白そうなコンサートを見つけました。こどもの日のプレゼントでしょうか、普段日本のトップ・オケを聴けない(聴かない?)小欄にもN響を理想的な席で聴く絶好のチャンス、自称広上オッカケの私が聴き逃す筈もないでしょ。

シベリウス/組曲「カレリア」
シベリウス/「トゥオネラの白鳥」
シベリウス/交響詩「フィンランディア」
     ~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第7番
 指揮/広上淳一
 コンサートマスター/篠崎史紀

5月5日と言えば、確か広上マエストロの誕生日じゃなかったかしら。何処にもアナウンスはないし、演奏会で触れられることもありませんでした。当然でしょうが。
気軽な気分で名曲を聴けるクラシック・コンサートに行きたい、という人のために準備された「カンタービレ・コンサート」ですから、定期演奏会などとは客席の雰囲気も全く異なります。N響のお客様としては大幅に若返った印象、もちろん私共も含めてですよ。
子供連れ、というかグループで聴きに来られる方々が目立ちます。私は好んで座る席を選べました。満席ではないものの、隅々まで埋まっていました。

久し振りに耳にしたN響サウンドは、大昔熱心に通った当時とほとんど変わりません。ヴィオラのトップには懐かしい顔(川崎氏)も見えたりして、相変わらずの重厚サウンドに腹の底まで揺すられる感じ。

前半のシベリウス、最初は独特のN響サウンドがマイナスに働くようにも感じます。インキネン/日フィルの澄み切ったサウンドを聴いてきた所為もありましょうが、どうもシベリウスにしては音が重いし、響きも濁り気味。広上にしてこれなんだから、さぞやヨーロッパ系巨匠では鈍重に鳴るのだろう、と懸念頻り。
しかし最後のフィンランディアでは、この重厚さが利点に変わります。冒頭の金管合奏からして低音ズシリ。コントラバスも唸りを立ててホールを揺るがせます。“いよッ、日本一”と、声も掛けたくなるじゃありませんか。
広上の棒も冴えわたります。アレグロ・モデラートに突入して直ぐ、低弦、ティンパニ、ファゴット、チューバの持続音がクレッシェンドして主題を引き出すところ。この5小節のクレッシェンドを、マエストロは3段ギアーを使って高揚感を高めていきます。その音楽的で機動性に富む表現力と言ったら・・・。

後半は広上勝負曲でもあるベートーヴェン第7。何度かナマ演奏に接してきましたが、毎回新鮮な感動に胸躍らせるのが広上第7。プログラムを見つけたら、飛んででも聴きに行くべきベートーヴェンです。
今年は何故かマエストロはベートーヴェンづいている様子。先に東フィルと第1、第3を取り上げましたが、間もなく新日フィルでも第3・6・4・5番を1日で演奏する予定。何でもスカイツリーのムサシ(634)に合わせてプラスワン(5)の企画だとか。もちろんチケットは取りました。

と言うことでN響とは第7。今年の年末には日フィルと恒例の第9を演奏しますから、全9曲のうち7曲を今年1年で聴けることになります。
2番と8番を何処かでやらないかな、と思っていたら、フィリア・ホールがマエストロの「白熱教室」をホールでも再現することになったようで、そのお題の一つが第8。まさかマエストロ自身が全曲をお手本演奏するワケじゃないでしょうから、全曲は別の機会を待ちましょう。

第7番、今回はN響との共演と言うこともあって、真に聴き応え十分な内容。特に第2楽章の構築力とバランスの見事さは特筆モノで、正に真正ドイツ音楽を堪能しました。
前半から第3楽章までは指揮棒を使っていた広上、終楽章はタクトを置いて両手だけでオケをドライブして行きます。さぁ、聴かせ所のフィナーレだ!! という気合か。
そして音楽の唸ること、唸ること。クラシックの演奏会は初めて、という客席の多くもこれには圧倒されたでしょう。最初は冷めた会話も聞こえてきた会場ですが、さすがにベートーヴェンでは熱狂的な拍手を贈っていました。呆気にとられた、という感じ。

もちろんアンコールも用意されています。“シベリウスをもう一つ”ということで悲しきワルツ。
アンコールの定番で、先の日フィル横浜でもインキネンが取り上げていました。でも、それとは全く別のワルツ。インキネンのアプローチが詩的なものとすれば、広上のは戯曲的。濃密なドラマをたっぷりと聴かせるアンコールでした。
これは優劣じゃなく、音楽性の違い。どちらも感動的なのが、クラシック音楽の奥深い所。これを機会にクラシック音楽の世界にも耳を開いてくれる聴き手が増えることに期待しましよう。

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