リチャード・ヒューズ、英クラシック初制覇
昨日に続いてイギリスのクラシック第二弾です。5月5日の日曜日にニューマーケット競馬場で行われた1000ギニー 1000 Guineas S (GⅠ、3歳牝、1マイル)。
好天が続いて馬場は good to firm 、しかもコースに散水してのこの状態、運営側はやや馬場が硬過ぎるという判断だったのでしょう。
予定通り15頭が出走し、前走ネル・グィン・ステークスを楽勝して彗星の如くクラシック戦線に名乗りを上げたホット・ステップ Hot Step が5対2の1番人気。フランスから遠征してきたワッタ・ネーム What A Name が2番人気(7対2)で続き、ホット・ステップが登場するまでは1番人気だった無敗のジャスト・ザ・ジャッジ Just The Judge が3番人気(7対1)で続きます。
いつもは内外の二つのグループに分かれる競馬になることが多いニューマーケットの直線コースですが、今回はほぼ一団。レースは5枠発走のマサーラー Masarah が引っ張ります。
2番手を進んだネル・グィン3着のウイニング・エクスプレス Winning Express と、スタンドに近いコースを通ったジャスト・ザ・ジャッジが抜け、2頭の勝負かと思われた時、中団に待機していた4番人気(9対1)の一角スカイ・ランターン Sky Lantern が外(スタンドから遠い側)に持ち出して競り合いに加わり、最後は半馬身差ジャスト・ザ・ジャッジを捻じ伏せての戴冠です。更に1馬身半差3着には、後方から鋭く伸びたモス Moth (9対1、4番人気の一角)がハナ差でウイニング・エクスプレスを捉えていました。
1番人気のホット・スナップはスタンド側から追い込み態勢に入りましたが、動きが悪く9着敗退、ワッタ・ネームも7着に終わっています。
スカイ・ランターンは、出走馬中唯1頭のGⅠ馬。アイルランドでモイグレア・スタッド・ステークスを制してギニー候補一番手に上がりましたが、その後アメリカ遠征のBCで8着大敗。シーズン初戦のネル・グィンも1番人気に支持されながらホット・スナップに完敗して評価を落としていました。今回はスピードが活きる得意の馬場、トップ・ホースの復活と言えるでしょう。
同馬を管理するリチャード・ハノン師は、2000ギニーこそ3勝しているものの1000ギニーは初勝利。実はハノンさん、前日の2000ギニーはトルネード Toronado に余程期待を掛けていたようで、4着にガックリ、この日は地元の競馬に出掛けていてニューマーケットは息子に任せていたほどです。
また見事な仕掛けのタイミングで勝利を手にしたリチャード・ヒューズ騎手は、意外にもこれが英国のクラシック初制覇。フランスでは1000、2000の両ギニーとオークス、アイルランドでも2000ギニー、更にイタリア・ダービーも勝っていながら、英国ではクラシック未勝利のままでした。彼も前日の敗戦に失望していましたが、落胆の度はヒューズ夫人の方が大きかったそうで、逆に夫が“たかが競馬じゃないか、人生には他にもっと大切なことがある”と慰めたのだそうな。さすが去年チャンピオン・ジョッキーに輝いただけのことはあります。
この日はもう一鞍、同じく牝馬によるダーリア・ステークス Dahlia S (GⅢ、4歳上牝、1マイル1ハロン)も行われました。7頭立て、去年のオークスと愛オークスで2着したシロッコ・スター Shirocco Star が5対2の1番人気。
レースは2番人気(3対1)のシスル・バード Thistle Bird が逃げ、シロッコ・スター、チグン Chigun (7対2、3番人気)、ダンク Dank (4対1、4番人気)の3頭が追い上げる展開になりましたが、先ず脱落したのがシロッコ・スター。最後は内(スタンド側)のチグンと外ダンクとの叩き合いとなり、短頭差でダンクが競り勝っていました。3馬身差でシスル・バード3着、シロッコ・スターは5着に沈んでいます。
3ポンドのペナルティーを背負いながら接戦を制したダンクは、サー・マイケル・スタウト厩舎、ライアン・ムーア騎乗の黄金コンビ。去年9月にサンダウンのアタランタ・ステークス(GⅢ)に勝っており、ペナルティーの3ポンドはそのために課せられたもの。
またスタウト師はこのレースには滅法強く、2007年から4連覇し、今回の勝利で7年間で5勝となります。ムーア騎手もスタウト師の4連覇の内3回に騎乗しており、今回が4度目の勝利。前日のケンタッキー・ダービー騎乗から一夜明けての快挙でした。
さて今年のギニー戦線、終わってみれば勝馬は何れも2歳時にGⅠを制した馬。枠順でも取り上げたように、タイムフォームがレースホース誌で評価した最上位の馬が勝つという結果になりました。
その意味でも順当な、意外性の少ないギニーだったと言えるでしょう。
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