2013ロイヤル・アスコット2日目

早速ロイヤル・アスコットのレポート2日目に入ります。この日は何と言っても25歳の若手騎手ジェームス・ドイルの活躍に尽きますが、いつも通りレース順に取り上げていきましょう。
コースではエリザベス女王が被ってくる帽子の色までが賭けの対象になっていたりして、何にでもオッズを付けてしまう英国の習慣には笑ってしまいました。その様子は最後に掲げたフォト・アルバムでご覧ください。

さて2日目の第1レースはジャージー・ステークス Jersey S (GⅢ、3歳、7ハロン)。ギニーはやや長かった馬、短距離からより長い距離を目指す馬の対戦です。この日の馬場は good to firm 、所により good で、初日より更に乾いてきました。
レースの性格上多頭数が揃い21頭立て。ここ10年1番人気が勝っていないレースですが、今年の1番人気(9対2)ゲール・フォース・テン Gale Force Ten はどうでしょうか。ご存知オブライエン厩舎の馬で、仏2000ギニーは微差4着、愛2000ギニーでも同厩のマジシャン Magician の2着。前日マジシャンが凡走しただけに、気になる本命ではあります。

スタンドから遠い側の4番枠を引いたゲール・フォース・テン、最初から先行と積極策を取り、残り1ハロンでは先頭。ここに馬場の中央から襲い掛かったのが3番人気(15対2)のモンティリッジ Montiridge 、一旦は本命馬を交わして先頭に立ちます。しかしここからがゲール・フォース・テンの真骨頂。ジョセフ・オブライエンの冷静な判断もあって、並ばれてから闘志を燃やしての差し返し。最後は頭差モンティリッジを抑えて久々に1番人でこのレースを制しました。3着は1馬身半差で25対1のタウヒード Tawhid 。
勝馬を管理するエイダン・オブライエン、騎乗したジョセフ・オブライエンは、初日に続き第1レースに勝利。師は去年のイシュヴァーナ Ishvana に続く2連覇で、2001年のモーツァルト Mozart に続く3度目の優勝。1番人気が勝ったのは、そのモーツァルト以来のこととなります。
ゲール・フォース・テンは意外にもG戦初勝利、前で競馬し、競り合う馬がいると本領を発揮するタイプで、この日は理想的な勝ちパターンだったと言えましょう。この後はマイルに戻るも良い、より短い6ハロンに挑戦するも良しと自在な脚質が魅力です。

続いてデューク・オブ・ケンブリッジ・ステークス Duke of Cambridge S (GⅡ、4歳上牝、1マイル)。去年まではウインザー・フォレスト・ステークス Windsor Forest S として施行されてきましたが、今年からウイリアム王子を記念して改名。もうすぐパパになる王子ですが、自身の誕生日は明日の6月21日。アスコット競馬開催中に生まれたというのも、如何にも英国王室という感じですね。
2頭取り消して9頭立て。11対4の1番人気に支持されたのは、故サー・ヘンリー・セシルを引き継いだレディー・セシルが調教するチグン Chigun 。決して同情票ではなく、前走カラー競馬場でアブ・ドバイ・ステークス(GⅢ)を制しての好調さが買われての人気です。

レースはハナガン騎乗の伏兵(25対1)レディーズ・ファースト Ladys First の逃げ。前半は最後方に付けていた2番人気(10対3)ダントル Duntle が追い上げ、粘るレディーズ・ファーストと3番人気(7対2)ダンク Dank も加わっての叩き合いにベアトリス・オロール Beatrice Aurore も強襲する激しいレース。最後はダントルが半馬身差レディーズ・ファーストを抑えて優勝し、頭差でダンクが3着、更に頭差でベアトリス・オロール4着。人気のチグンは6着に終わりました。
勝馬はアイルランドのデヴィッド・ワッチマン厩舎、初日に4勝したアイルランド遠征組が、この日も第1・第2レースを連勝するという結果になりました。騎乗したウェイン・ローダンは、地味な存在ながら3年連続でのロイヤル・アスコット優勝です。
ダントルは、前走アメジスト・ステークス(GⅢ)も勝って今期は2戦2勝。去年の最後はメイトロン・ステークス(GⅠ)に1着入線しながら2着降着となっており、事実上5連勝となります。残るは念願のGⅠタイトル、同馬の動向に注目が集まりましょう。

2日目に行われる唯一のGⅠ戦が、プリンス・オブ・ウェールズ・ステークス Prince of Wales’s S (GⅠ、4歳上、1マイル2ハロン)。11頭が出走し、去年の二冠馬で愛ダービーも制したキャメロット Camelot が5対2の1番人気。前走トトソルズ・ゴールド・カップでは2着と敗れましたが、ここは貫録の本命と言ったところ。彼を破ったアル・カジーム Al Kazeem も決してフロックではなく、今回は11対2の2番人気で二つ目のGⅠ制覇を目指します。

レースは又してもポール・ハナガンの逃げ。ここも伏兵(14対1、7番人気)ムカードラム Mukhadram を御して絶妙なペースで直線に向かいます。逃げ切られる不安を真っ先に感じたのが4番手を追走していたアル・カジーム、早目に仕掛けて逃げ馬を捉えると、最後は叩き合いを首差制しての戴冠。後方から牝馬ながら3番人気(13対2)のザ・フューグ The Fugue が鋭く伸びて3番手に上がりましたが、前の2頭とは3馬身4分の1差が開いていて両馬を脅かすには至りません。キャメロットも6番手を追走していましたが、最後はいつもの切れ味が見られず4着まで。術後あまり時間が経過していないだけに、無理をしないレース内容といった印象です。
ロジャー・チャールトン厩舎(クエスト・フォー・フェイム Quest for Fame でダービーを制した方)のアル・カジームは、トトソルズGCレポートでも紹介したように、故障を克服して未だこれが11戦目の5歳馬。今シーズンはゴードン・リチャーズ・ステークス(GⅢ)にかってアイルランド遠征。GⅠを連勝したことで一躍古馬を代表する中距離界の期待の星に上がってきました。若駒時代を棒に振った分、充実したシーズンが迎えられそう。キングジョージから凱旋門と期待が膨らみます。ブックメーカーも凱旋門賞のオッズを一気に8対1に上げ、私としても密かに狙いたい1頭ですね。
話題は、騎乗した25歳の若手ジェームス・ドイル。ペースの読みは抜群で、これがロイヤル・アスコット初勝利でもあります。

生涯で初体験となるロイヤル・アスコットの表彰台を味わったジェームス・ドイル、この後のロイヤル・ハント・カップ(1マイルのハンデ戦)を33対1の大穴ベルジャン・ビル Belgian Bill で制すると、次なるクイーン・メアリーも快勝。本人もビックリのハット・トリックを達成してしまいます。
その高揚した気分もそこそこにヘリコプターに飛び乗ったドイル君、ケンプトンのイヴニング開催での手腕はどぅだったのでしょうか。

少し先回りしましたが、2日目最後のG戦は第5レースのクイーン・メアリー・ステークス Queen Mary S (GⅡ、2歳牝、5ハロン)。これまた多頭数で、1頭取り消したものの23頭立て。6頭の無敗馬が揃う中、1番人気(4対1)に推されたのは前走ヨーク競馬場のリステッド戦を含めて2戦2勝のベルデール・メモリー Beldale Memory 。2歳戦に強い4頭出しハノン厩舎から主戦ヒューズが選択したオリエル Oriel が2番人気(11対2)で続きます。どちらにしても被った人気の馬は無く、未知のメンバーによる混戦。

1番枠(スタンドから遠い側)を利して積極的なレースを展開したのが、アメリカから遠征してきたスイート・エンマ・ローズ Sweet Emma Rose (ウェスリー・ウォード厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗で、キーンランドでデビュー勝ちした馬)。一番外を先頭で逃げ切るかと思われましたが、強かったのが馬場の中央からグイグイと伸びた3番人気(6対1)のリジーナ Rizeena 。スイート・エンマ・ローズに2馬身差を付けていました。更に1馬身差で人気薄(66対1)のワン・チャンス One Chance が3着に入り、ベルデール・メモリーは14着、オリエルも17着と大敗です。この時期の2歳牝馬はあてにならない事例の一つでしょうか。
勝馬を管理するクライヴ・ブリテン調教師は、ロイヤル・アスコット優勝は2010年以来3年振りですが、通算では17勝目。既に紹介したように、騎乗したジェームス・ドイルは3レース連続での勝利でハットトリック達成です。
リジーナは初戦こそ5着でしたが、2戦目のアスコットで初勝利。続くサンダウンのリステッド戦(ナショナル・ステークス)にも勝って3連勝となります。ドイルは同馬には初騎乗でしたが、電話で騎乗依頼があった時には、サンダウンで同馬が勝つ(ライアン・ムーア騎乗)のを見ており、思わずワクワクしたとのこと。馬を見る目も一流のドイルではあります。

http://www.sportinglife.com/racing/photos/gallery/13262/8783106/royal-ascot-day-2#!/photo/0

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