2013ロイヤル・アスコット4日目

今日はロイヤル・アスコット4日目のレポート、この日もG戦は4鞍です。馬場は前日に続き good to firm 。メインは1000ギニー対決が見物のコロネーション・ステークスでした。

さて第1レースはアルバニー・ステークス Albany S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)。1頭取り消しがあり19頭立て。未だ経験が浅い馬がほとんどで、7頭が1戦1勝のみ。これが初出走という馬もいて、能力の比較は中々難しいのが現状でしょう。
7対4の1番人気に支持されたサンディーヴァ Sandiva は、ノッティンガムで新馬勝ちしたあとナース競馬場のリステッド戦にも優勝。今開催では2着こそ4回もありながら未だ勝てていないリチャード・ファヘイ厩舎。鞍上ランフランコ・デットーリも復帰以後は余り騎乗馬に恵まれず、ここまでロイヤル・アスコットは未勝利。厩舎にとっても騎手にとっても開催初勝利を目指す最高の機会でもありました。

しかし本命馬の期待を覆したのは、20番枠というスタンド側の後方を走っていた3番人気(8対1)のキヨシ Kiyoshi 。目の覚めるような瞬発力で抜け出すと、後続馬ばかりかジョッキーからも逃げ出すように一気にスタンドから遠い側に寄れ、それでもサンディヴァに3馬身4分の1差を付ける圧勝です。3着は首差で2番人気(6対1)のジョユーズ Joyeuse 。3着馬はフランケル Frankel の半妹という話題の1頭で、ハーリッド・アブダッラー/レディー・セシル/トム・クィーリーという名馬と同じコンビ。この馬も新馬勝ちしただけの2戦目ですが、将来性豊かな1頭でしょう。
勝ったキヨシ、レース実況では「カイヤシ」と発音していましたが、スペルを見るとどうしても「キヨシ」と表記してしまいたくなります。オーナーは愛1000ギニー馬ジャスト・ザ・ジャッジで急速に頭角を現してきたカタール・レーシング。現時点で命名の由来などは判っていませんが、あるいは2代母がイワン Ewan という人名であることから付けられているのかも知れませんね。

余談はさておき、管理するチャーリー・ヒルズ調教師はロイヤル・アスコット初勝利。今期から同厩舎とコンビを組んでいるジェイミー・スペンサー騎手も今年のロイヤル開催では初勝利となります。
最後の1ハロンで大きく斜行したことに関してスペンサーは、“若さ故でしょう。前走のグッドウッドではそんなことは無かったし、むしろ馬に大きな将来性を感じます”とのこと。早くも1000ギニーに8対1のオッズが出されましたが、牝系にスタミナが入っているので、7ハロンから1マイルこそ彼女の適距離、というのが陣営の判断です。来年のクラシックを見据えたローテーションを歩む予定。デビュー戦のニューマーケット(5ハロン)は4着でしたが、2戦目のグッドウッドの6ハロンで初勝利。これが3戦目でした。

続いてはダービーと同じ距離で行われるキング・エドワード7世ステークス King Edward Ⅶ S (GⅡ、3歳、1マイル4ハロン)。俗にアスコット・ダービーとも呼ばれる一戦ですが、ダービー出走馬の墓場としても知られるレース。今年は8頭が出走し、チーム・オブライエンはダービー4着馬のバトル・オブ・マレンゴ Battle Of Marengo でジンクスに挑んできました。他馬との比較から、2ポンドのペナルティーを背負っても10対11の1番人気。

グレートウッド Greatwood の逃げを直線手前で交わして先頭に立ったバトル・オブ・マレンゴ、そのまま後続との差を広げてゴールに迫った時は久々にジンクスが破られるかに見えましたが、前半は最後方に待機していた3番人気(15対2)のヒルスター Hillstar がジリジリと差を詰め、最後は大本命に1馬身差を付けての逆転劇。またもダービー出走馬の墓場が現出してしまいました。2番人気(11対2)のムタシャーディド Mutashaded が2馬身4分の1差で3着。デューク・オブ・マレンゴは一旦先頭に立ちながらゴール直前で差されるという、ダービーと同じパターンの競馬。エイダン・オブライエン師は、今後は2000メートル戦に距離短縮するプランを否定していません。

一方勝ったヒルスターは、前日にエリザベス女王にゴールド・カップをプレゼントしたサー・マイケル・スタウトとライアン・ムーアのコンビ。連日のG戦制覇です。
厩舎では期待の大きかった馬で、ダービーも愛ダービーも登録を済ませましたが、昨秋レスター競馬場で未勝利を脱してから勝ち味に遅く、今期は2戦していずれも2着。前走ニューバリーは10ハロンのハンデ戦(ロンドン・カップ)でしたが、図らずも先行しての敗戦。今回は後方待機策を取ったことと、距離が伸びたことで本来の実力を発揮できたようです。
当然ながら最後のクラシックたるセントレジャーが目標になるでしょうし、馬をジックリ育てることには定評のあるスタウト師のこと、今後の動向に注目です。

3戦目はこの日唯一のGⅠ戦、コロネーション・ステークス Coronation S (GⅠ、3歳牝、1マイル)。英愛ギニー馬の再対決という舞台が揃いながら17頭も出走してきたのは、クラシックの結果が余り信用されていないということでしょうか。人気もそれを反映しているようで、何と9対2の1番人気には英ギニー馬スカイ・ランターン Sky Lantern と、愛ギニーで4着だったビッグ・ブレイク Big Break が並ぶ始末。愛ギニー覇者で、この日のオープニング戦をキヨシで制したカタール・レーシングのジャスト・ザ・ジャッジ Just the Judge は5対1の3番人気に過ぎません。

レースはゴドルフィンのラヴリー・パス Lovely Pass の逃げ。スカイ・ランターンは16番枠という不利ながら最後方から終始外を回り、やはり17番枠のジャスト・ザ・ジャッジも徐々に差を詰めて勝負に加わります。最後は馬の実力がモノを言い、並んで抜け出した2頭のギニー馬ながらスカイ・ランターンの末脚は圧倒的。2着以下に4馬身差を付ける貫録勝ちです。ジャスト・ザ・ジャッジも追い縋ろうとしましたが差は逆に開き、最後は後方から強襲した33対1の伏兵ケンホープ Kenhope (フランスのアンリ=アレックス・パンタル厩舎)に首差脚を掬われて3着。以下モーリーン Maureen 4着、ミザーヴァ Mizzava 5着は、英愛ギニーの結果が順当だったことを証明するものでしょう。

今年のロイヤル開催ではフラストレーションが続いたリチャード・ハノン厩舎とリチャード・ヒューズ騎手、開催初勝利がGⅠということで溜飲を下げました。同コンビはこのレース、2007年のインディアン・インク Indian Ink に次ぐ2勝目。スカイ・ランターンは、2歳時のモイグレア・スタッド・ステークスを加えて3つ目のGⅠ制覇となります。
騎乗したヒューズ騎手の口からは、“1マイル半の距離も大丈夫だろう”という発言も飛び出し、凱旋門賞挑戦と言うプランも浮上して周囲を驚かせています。本気かどうかは判りませんが、これまで凱旋門に全く縁の無かったオーナー・サイドは満更でもなさそうな雰囲気でした。

最後はクィーンズ・ヴェーズ Queen’s Vase (GⅢ、3歳、2マイル)。このレースを8勝した故サー・ヘンリー・セシルに因み、今年は敢えてサー・ヘンリー・セシル・メモリアルというレース名も追加されての開催。全てのジョッキーが黒い腕章を着用してのレースとなりました。3頭が取り消して出走馬は15頭。その中にレディー・セシル調教のディスクレイマー Disclaimer の名もあり、目下4連勝中という成績もあって4対1の2番人気。勝てばお伽噺になること間違い無しですが、これを抑えて1番人気(5対4)に支持されたのは、前走ガリニュール・ステークス(GⅢ)を制しているリーディング・ライト Leading Light 。セシル師を最も尊敬してきたエイダン・オブライエンが弔い合戦として送り出す1頭です。

逃げたナルー Naru を追ってディスクレイマーが2番手に上がって直線に入った時にはスタンドが大いに沸きましたが、これを3番手に付けてスパートしたのが本命リーディング・ライト。外から追い込む伏兵(20対1、7番人気)フィール・ライク・ダンシング Feel Like Dancing に一旦は並び掛けられましたが、二の足を使って再びリードを広げ、最後は1馬身半差で人気に応えています。最後の叩き合いは、キング・エドワード7世ステークスと同じジョセフ・オブライエン vs ライアン・ムーア。今回はオブライエンに軍配が上がりました。3着は更に1馬身半差で最低人気(66対1)の1頭ボアト Boite 。セシルのお伽噺ディスクレイマーは12着に沈んでいます。
勝ったリーディング・ライトは、このレースを勝つに相応しい馬名。「導灯」とは、正にセシル師が果たしてきた後輩調教師に対する役割でもありました。勝利したオブライエン師も、“サー・ヘンリーの背中を見て育ってきた”と述懐しています。故人を偲ぶに相応しい結果だったと申せましょう。
セントレジャーには6対1から7対1のオッズが出され、いずれはカップ・ホースに育つステイヤーと見ました。

そのほか、4日目の模様は↓

http://www.sportinglife.com/racing/photos/gallery/13262/8786586/royal-ascot-day-4#!/photo/0

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