2013ロイヤル・アスコット初日

今年もロイヤル・アスコットがやって来ました。いつもの年と違うのは、名匠サー・ヘンリー・セシル調教師の姿が見られないこと。その所為か、雰囲気は例年より大人し目に感じられます。

http://www.sportinglife.com/racing/photos/gallery/13262/8781483/royal-ascot-day-1#!/photo/0

火曜日から土曜日までの5日間開催。一日6レースで合計30レース、うちG戦は18レース。GⅠ戦は連日組まれ、初日はGⅠ3鞍という豪華版で、ロイヤル開催のアスコットで行われるGⅠは全部で7鞍に上ります。
初日は第1レースからG戦が4レース続き、いきなり開催のクライマックスからスタートしました。馬場は一日を通し、コースを通して good 。

オープニングはクイーン・アン・ステークス Queen Anne S (GⅠ、4歳上、1マイル直線)。去年はフランケル Frankel がいきなり圧倒的なパフォーマンスを見せたGⅠ戦ですが、今年の主役はアメリカから遠征してきたアニマル・キングダム Animal Kingdom 。ケンタッキー・ダービーとドバイ・ワールド・カップ覇者の挑戦がかねてから話題になっていましたが、何と言ってもイギリスの競馬が初めてという点に死角があると思われます。
それでも実績はメンバー中ダントツの首位。直線の1マイル未経験というハンデを考慮しても5対4の1番人気に支持されていました。フランケルが抜けた今年のマイル戦線、次のチャンピオンを狙って13頭が出走しています。

レースはリブランノ Libranno が逃げ、並んだ2番人気(15対2)で社台の持ち馬エルーシヴ・ケイト Elusive Kate が追走。アニマル・キングダムは掛かり気味で、ジョン・ヴェラスケス騎手が必死に宥めながら中団を進む苦しい展開。スタンドから見れば、早くも中間地点でアニマル・キングダムの敗戦は明らか、結局は11着で終わります。
優勝は、先行馬群でジッと待機していた2番人気の一角デクラレーション・オブ・ウォー Declaration Of War 。瞬発力を温存し、待ちに待った最後で僅かな間隔を衝いてスパートすると、2着アルジャマヘール Aljammaheer に4分の3馬身差を付けて快勝。半馬身差3着にグレゴリアン Gregorian が入り、4着エルーシヴ・ケイト、5着トレード・ストーム Trade Storm の順。

デクラレーション・オブ・ウォーは、エイダン・オブライエン厩舎では極めて高評価の存在。前走は期待されて臨んだロッキンジ・ステークスで5着と敗れて一般的な評価は下がっていましたが、改めて陣営の評価が正しかったことが証明されました。G戦は、去年3歳時にダンダルク競馬場で記録したダイアモンド・ステークス(GⅢ)に続く2勝目。シーズン後半のマイル路線では、古馬として中心を担う1頭になるでしょう。
オブライエン師は、これがロイヤル・アスコット38勝目の勝利、鞍上は何処までも冷静なジョセフ・オブライエンでした。
敗れたアニマル・キングダムを管理するグレアム・モーション調教師は、やはり直線のマイル戦が初体験で、この馬には合わなかったかも、とコメント。これが同馬の最後のレースになるだろう、と引退も仄めかしていました。

第2レースは電撃の5ハロン、キングズ・スタンド・ステークス King’s Stand S (GⅠ、3歳上、5ハロン)。ここ10年で3勝している豪州勢がシャムエクスプレス Shamexpress を出走させてきましたが、今年の話題は南アフリカの快速馬シェイ・シェイ Shea Shea 。前走ドバイのGⅠ戦をレコード・タイムで勝ち、今回も出走しているソール・パワー Sole Power を問題にしなかったことからも11対4の1番人気に支持されています。
しかし、短距離戦の常は多頭数。19頭が揃い、当然ながら直線とは言え枠順が運を左右します。5番枠を引いたシェイ・シェイはスタンドから遠いコースからの発走、外コースのライヴァルを寄せ付けずに先頭に立ちましたが、より有利なスタンド側を通った14番枠で4番人気(8対1)のソール・パワーが後方から一気の瞬発力。内外大きく離れるゴール前でしたが、写真判定の結果ソール・パワーが本命シェイ・シェイを首差抑えての逆転劇です。1馬身4分の1差でパール・スカーレット Pearl Scarlet が3着。以下ジャック・デクスター Jack Dexter 4着、3歳馬レックレス・アバンダン Reckless Abandon が5着。

エディー・ライナム師が管理するソール・パワーは、2010年にナンソープ・ステークスを制してGⅠ馬になった6歳馬。二つ目のGⅠ制覇です。今期はパレス・ハウス・ステークス(GⅢ)に勝ち、前走テンプル・ステークス(GⅡ)では4着でしたが、今回はジョニー・ムルタとの再コンビでの末脚爆発。ムルタ騎手はこれでロイヤル・アスコット40勝目の区切りでもありました。(ムルタはこの日最終レースのウインザー・パレス・ステークスも制してダブル達成)
微差で大漁を逃したシェイ・シェイ陣営、騎乗したクリストフ・スミオン騎手は枠順を敗因に挙げ、デ・コック調教師は、馬に問題が無ければ土曜日(ダイアモンド・ジュビリー)にも出走すると雪辱を期しました。

GⅠ3連発の第3弾はセント・ジェームス・パレス・ステークス St James’s Palace S (GⅠ、3歳、1マイル)。ヨーロッパ各地の2000ギニー再戦とあって9頭が出走。やはり1番人気(5対4)は英2000ギニー覇者のドーン・アプローチ Dawn Approach 。3週前のダービーでは悪夢の大敗を喫しましたが、陣営は最終的にロイヤル・アスコット挑戦を決断。ダービー敗戦の後遺症だけが不安材料でしょう。相手はやはり愛2000ギニーを制したチーム・オブライエンのマジシャン Magician で5対2の2番人気、そして2強対決と言われた英ギニーで4着と期待を裏切ったトルネード Toronade が5対1の3番人気で続きます。言わば3強対決。

レースはボルジャー厩舎のペースメーカーとなるレイティール・モール Leitir Mor の逃げ、これをグローリー・アウェイツ Glory Awaits が追走し、マジシャンは早目に外から3番手。ドーン・アプローチは今回も頭を高く挙げて掛かり気味に中断。トルネードは指定席の最後方待機。
最後のコーナーを回って直線、各馬がゴールを目指してスパートした時、グローリー・アウェイツが膨れて外から並び掛けようとしたマジシャンと接触、同時に外から迫ったドーン・アプローチとの間に挟まれるようにしてジョセフ騎乗のマジシャンがバランスを崩します。連鎖的に大外のトルネードも前をカットするような形になり、ややラフなレースに・・・。
このアクシデントからゴールまでは、先に抜け出したドーン・アプローチと、これを外から追い詰めるトルネードの激しい叩き合い。写真判定の結果、ドーン・アプローチが短首差トルネードを抑えて名誉挽回。2馬身4分の3差3着にオブライエン厩舎の2番手マース Mars (ライアン・ムーア騎乗)が入り、半年の騎乗停止以来ロイヤル・アスコット初騎乗のデットーリが乗ったムシャウィッシュ Mshawish 4着、グローリー・アウェイツが粘って5着。大きな不利を被ったマジシャンは、最後は追うのを止めて9着最下位での入線。このアクシデントが審議の対象になりましたが、最終的には入線通りでの確定となりました。

大接戦を制したドーン・アプローチ、管理するジム・ボルジャー師は最後までダービーの悪夢から間もないアスコット参戦を躊躇っていましたが、厩舎スタッフの強い支えと、オーナーであるシェイク・モハメッドが師に全てを負かせるという回答を得ての出走でした。ケヴィン・マニング騎手も、ダービーから3週間敗戦の理由を考えて来たものの結論は出なかったとか。
今後は未定ですが、やはりマイル戦でのチャンピオンを目指す、というのが自然な流れかと思われます。

初日最後のG戦は、第4レースのコヴェントリー・ステークス Coventry S (GⅡ、2歳、6ハロン)。英愛仏の平場シーズン最初の2歳G戦でもあります。去年の勝馬がドーン・アプローチだったことも忘れてはなりませんね。
今年は、というか今年も2歳は英国ではリチャード・ハノン厩舎が強く、アイルランドではエイダン・オブライエン厩舎に逸材が揃います。1頭が取り消して15頭が出走してきましたが、ハノン/オブライエン両厩舎共3頭を出走させ、人気も両陣営に集中していました。そんな中で5対2の1番人気に支持されたのは、オブライエン厩舎で主戦ジョセフが選んだスタッブス Stubbs 。2戦目で新馬勝ち、前走ナースのリステッド戦も連勝して3戦2勝の成績です。しかしこの時期は未だ勢力地図は固まっておらず、新馬勝ちしただけの1戦1勝馬も6頭出走という混戦であることは間違いありません。

内外大きく開く展開。最後方からスタンド側を通って1頭だけ抜けた脚で追い込んできたのが、9番人気(20対1)でしかなかったウォー・コマンド War Command 。何と2着パーボールド Parbold (これも16対1の7番人気)に6馬身の大差を付けていました。4分の3馬身差でオブライエン厩舎の2番手(6対1、3番人気、ムーア騎乗)サー・ジョン・ホーキンス Sir John Hawkins が3着。本命に推されたスタッブスはそれでも6着、2番人気(11対2)でハノン厩舎・デットーリ騎乗の3戦無敗馬サンダー・ストライク Thunder Strike は4着でした。因みにハノン厩舎の主戦ヒューズ騎手は1戦1勝のチャンピオンシップ Championship を選びましたが、こちらはブービー14着と大敗に終わっています。

ウォー・コマンドは、オブライエン厩舎第3の存在で、シーマス・ヘファーナン騎乗。ヘファーナン騎手は調教では厩舎の2歳馬全てに騎乗していますが、実際のレースで騎乗したのは今回が初めて。トップ・ジョッキーの鼻を明かした印象です。
同馬は、11日前にレパーズタウン競馬場で7ハロンの新馬戦に勝ったばかり。桁違いの圧勝劇にブックメーカーも素早く反応し、早くも来年の2000ギニーに8対1のオッズが出されました。

以上、初日はオブライエン調教師と、かつては同厩舎の主戦だったムルタ騎手がオープニング・ダブルを達成しています。

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