2014ロイヤル・アスコット2日目

ロイヤル・アスコットの二日目は、初日と同じG戦4鞍。第1レースから立て続けにG戦が行われました。
この日のオープニングはジャージー・ステークス Jersey S (GⅢ、3歳、7ハロン)。馬場状態は前日に続き good 、good (稍重)と言っても firm (良)に近い稍重で、高速馬場に適した馬が有利だったようです。
23頭の多頭数。1番人気には9対2で2頭が並び、愛2000ギニー3着のムスタジーブ Mustajeeb と仏2000ギニー4着のムワーリー Muwaary とギニー好走組に期待が集まります。共にシェイク・ハムダン氏の所有馬で、人気通りならワン・ツー・フィニッシュになるところ。

初日も本命馬が確実に勝ってブックメーカー泣かせでしたが、二日目もこの傾向が続きます。4番人気(8対1)のザット・イズ・ザ・スプリント That Is The Sprint が逃げ、先行していたムスタジーブがライヴァルのムワーリーを1馬身退けて優勝。2馬身4分の1差3着には5番人気(14対1)のジョヴァンニ・ボルディーニ Giovanni Boldini (チーム・オブライエン、仏2000ギニー7着)が入り、4着ウインドファスト Windfast を含めて1着から4着まで全てが前で競馬した馬。追い込んだのは5着に来たワルツィング・マチルダ Waltzing Matilda のみという結果でした。人気通りのワン・ツー。
勝ったムスタジーブ、愛2000ギニーではキングマン Kingman に7馬身差を付けられましたが、この快勝でギニーのレヴェルが高かったことを証明した形です。アイルランドのデルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗、愛ギニーの前にアメジスト・ステークス(GⅢ)に勝っており、G戦は2勝目となりました。このあとは再びマイル路線に戻る由。

続いてはシーズン最初の2歳牝馬戦となるクィーン・メアリー・ステークス Queen Mary S (GⅡ、2歳牝、5ハロン)。このレースから馬場も good to firm にまで回復。1頭が取り消しても21頭立て。無敗馬、と言っても1戦のみが3頭、これがデビュー戦という馬も1頭いて難解なレースであることには違いありません。9対4の1番人気に支持されたアンセム・アレキサンダー Anthem Alexander は、前走ティッペラリーの未勝利戦を7馬身差で圧勝したアイルランドからの遠征馬。

スタートが良かったのはスタンドに最も近い22番枠を引いた3番人気(7対2)のティッギー・ウィッギー Tiggy Wiggy で、先ず先頭。しかし2009年にこのレースを勝ったことのあるアメリカのウェスリー・ワード師が渡英してきたキーンランドの勝馬スパニッシュ・パイプドリーム Spanish Pipedream (11対4、2番人気、ヴィクター・エスピノザ騎乗)が交わして先頭に立ちます。しかしこれを見るように先行していた本命のアンセム・アレキサンダーが伸び、巻き返したティッギー・ウィッギーとの叩き合いを首差制して優勝。半馬身差3着にもスタンド側を通った8番人気(33対1)のニュースレター Newsletter が食い込む接戦でした。逃げたスパニッシュ・パイプドリームが4着。
ジャージーに続いてダブルを達成したのは騎乗したパット・スマーレン。管理するエドワード・ライナム師は、初日のキングズ・スタンド(ソール・パワー Sole Power)に続き今ロイヤル開催2勝目。アイルランド勢にとってもいきなりのダブルとなりました。アンセム・アレキサンダーは、カラーのデビュー戦(6ハロン)こそ6着でしたが、2戦目の上記ティッペラリー(5ハロン)で圧勝。この時点からこのレースを目標にして来ました。注目すべきは、この牝馬もスタースパングルドバナー Starspangledbanner 産駒であること。初日コヴェントリー・ステークスを制したザ・ワウ・シグナル The Wow Signal に続く連勝で、いきなりG戦勝馬を2頭輩出したことで、衝撃的なデビューを果たした新種牡馬ということでしょう。

第3レースは、日本でも注目されそうなプリンス・オブ・ウェールズ・ステークス Prince of Wales’s S (GⅠ、4歳上、1マイル2ハロン)。前走ガネー賞で初黒星を喫した去年の凱旋門賞馬トレーヴ Treve が8対13の1番人気。負けたとは言えシリュス・ド・ゼーグル Cirrus des Aigles との激闘は決して評価を下げるものではありません。

去年2着からの逆転を狙う3番人気(6対1)ムカードラム Mukhadram のペースメーカーを務めるエルカーイェド Elkaayed が後続を8馬身から10馬身も離して逃げますが、有力馬はこれを全く無視。ペースメーカーがガス欠を起こしてからが勝負で、5番手に付けていた2番人気(11対2)のザ・フューグ The Fugue が鋭く伸び、2番手追走の3番人気(6対1)マジシャン Magician に1馬身4分の3差を付けて快勝。注目のトレーヴは後方を形成する3頭の中に付け、直線で外から追い上げましたがマジシャンを1馬身捉える事が出来ず3着まで。更に1馬身半差でムカードラムは4着でした。
ザ・フューグはジョン・ゴスデン厩舎、ウイリアム・ビュイック騎乗。ミュージカルのキャッツで有名なアンドリュー・ロイド=ウェッバー卿夫妻の自家生産馬で少ない所有馬の1頭。去年のこのレースはアル・カジーム Al Kazeem の3着でしたが、ナッソー・ステークス、ヨークシャー・オークス、愛チャンピオンに続く4つ目のGⅠ制となります。今期初戦の前走ドバイ遠征は負傷して不本意な結果でしたが、アスコットの夏、good の馬場に対する適性を活かしての勝利でした。

一方敗れたトレーヴ、陣営から未だコメントは出されていませんが、敗因は堅い馬場とやや短い距離にあるのは明らか。ザ・フューグのゴスデン師も、秋のロンシャンの重馬場での2400メートルではトレーヴと闘いたくない、と断言しています。重の1マイル半ではトレーヴに適う馬はいない、というのがゴスデン見解でした。

最後に第4レース、G戦としては最後のデューク・オブ・ケンブリッジ・ステークス Duke of Cambridge S (GⅡ、4歳上牝、1マイル)。以前はウインザー・フォレスト・ステークス Windsor Forest S として知られていたレースですね。14頭が出走、前走ダーリア・ステークス(GⅢ)2着のインテグラール Integral が、同レースの勝馬エソテリク Esoterique (11対2、3番人気)を抑えて9対4の1番人気。休み明けを叩かれての良化の方に期待が集まっていました。

ファン、というかブックメーカーの目は正しいもので、ライヴァルエソテリクを前に見るように中団に付けていたインテグラールが馬群を割り、フランスから遠征してきた8番人気(20対1)ラム―ル・ド・マ・ヴィー L’Amour de ma Vie に2馬身差を付けて見事期待に応え、ブックメーカーに大きな痛手を与えました。更に2馬身差で最後方から伸びた5番人気(9対1)のパー・アロング Purr Along が3着。休み明けの不安から2番人気(9対2)に甘んじていた去年の1000ギニー馬スカイ・ランターン Sky Lantern は不安が的中して5着。次回には大いに期待が持てる結果と言えそうです。勝ちタイムの1分37秒09がコース・レコードを更新したことで、如何に高速馬場だったことが証明できるでしょう。
サー・マイケル・スタウト厩舎、主戦のライアン・ムーアが騎乗したインテグラールは、去年8月にアタランタ・ステークス(GⅢ)でレディーズ・ファースト Ladys First と同着で1着を分かち合っていた4歳馬。そのあと挑戦したサン・チャリオット・ステークス(GⅠ)ではスカイ・ランターンの2着しており、いずれはGⅠを狙える器でしょう。
同馬を所有するチーヴリー・パーク・スタッドはこのレースと相性が良く、未だ今年で11回目の歴史ながら2005年のピアレス Peeres 、7年のナンニーナ Nannina 、9年のスペイシャス Spacious に続く4勝目となります。

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