2000ギニー・ショック!

今日はヨーロッパとアメリカのクラシックについて書かなければなりません。1年で最も忙しい一日になりそうです。

先ずは既に結果が入っているヨーロッパから。土曜日はイギリスとフランスでG戦が行われていますが、最初は最も気になるニューマーケット競馬場の2000ギニー 2000 Guineas S (GⅠ、3歳、1マイル)から。

馬場は good to firm 、所により good とほぼ完璧な状態。事前に紹介したように14頭が出走し、3戦無敗で前走グリーナム・ステークス(GⅢ)を圧勝したキングマン Kingman が6対4の1番人気。以下オブライエン厩舎の期待馬で息子ジョセフが選んだオーストラリア Australia が5対2で2番人気、4戦無敗でクレイヴァン・ステークス(GⅢ)を制したトールモア Toormore が3番人気(15対2)で続いていました。
ニューマーケットの直線コースで行われる1マイル戦、多頭数となれば内ラチ(スタンドに近い側)と外ラチ(スタンドから遠い側)の二つのグループに分かれるのは毎度のことで、枠順が大きく左右します。枠順の小さい組は必然的に外ラチに向かい、外枠の馬は内ラチを目指します。問題は真ん中を引いたグループで、今年の場合はスタートして暫くすると、ほとんどの馬がスタンドに近い側に殺到して行きました。

この結果、外ラチを走るのは6頭、他は全て内ラチを走る展開。外ラチの先頭は史上初めてスペインから挑戦してきたヌーゾー・カナリアス Noozhoh Canarias で、内ラチのグループを引っ張るのがトールモア。本命キングマンは外ラチグループの最後方に付け、2番人気オーストラリアは内ラチ組の後方で待機。
漸く両グループの形成が判ってきたときは、外ラチ組がややリードし、ヌーゾー・カナリアスが未だ先頭。その中からキングマンが鋭く伸びて先頭に立ちましたが、出し抜けを食わせるように伸びてきたのが11番人気(40対1)のナイト・オブ・サンダー Night of Thunder 。鞍上ファロンの剛腕で大きく左に寄れ、外ラチから一気に馬場の中央、いや内ラチグループから抜け出してきたオーストラリアに馬体を寄せるほどに接近したところがゴール。内外大きく離れ、写真判定となりましたが、結果はナイト・オブ・サンダーがキングマンに半馬身先着し、頭差でオーストラリアが3着でした。
キングマンは先頭に立ったものの、周りに馬がいない状況になって競り合う場面が無かったのが無念だったでしょう。しかしこれも競馬、勝馬は勝馬なのです。各陣営も結果には納得していました。

下馬評にも挙がっていなかったナイト・オブ・サンダーは、今期から父リチャード・ハノン師のライセンスを引き継いだリチャート・ハノン・ジュニアの管理馬。同じ名前なので紛らわしいのですが、ハノン・ジュニアにとってはもちろんクラシック初制覇。新生ハノン厩舎は3頭を出走させていて、7着に敗れたトールモアがエース格でした。もう1頭の人気薄(50対1、12番人気)シフティング・パワー Shifting Power も4着と予想外に好走し、改めて競馬の難しさが身に染みたのではないでしょうか。パパ・ハノンは残念ながらニューマーケットには来場しておらず、グッドウッド競馬場に出張していたとのこと、息子の快挙は想定外だったのかも知れません。
キーレン・ファロン騎手が英国のクラシックに勝つのは、2006年オークスのアレクサンドロヴァ Alexandrova 以来のこと。2000ギニーは、2000年のキングズ・ベスト King’s Best 、2001年のゴラーン Golan 、2005年フットステップスインザサンド Footstepsinthesand 、そして2006年のジョージ・ワシントン George Washingto に続く5勝目となります。
勝馬は2歳時にはリステッド戦を含めて2戦2勝、3歳デビューは前走グリーナム・ステークスで、キングマンの2着でした。前走では勝馬には歯が立たないように見えたものでしたが、本番では展開の綾、馬自身の成長など複雑な要因が逆転に繋がったと言えるでしょう。もちろんG戦は初勝利。

このあとですが、勝馬は追加登録料を支払ってもアイルランド2000ギニーに参戦する意向ですし、そのあとはロイヤル・アスコットのセント・ジェームス・パレスに向かいます。キングマンも愛2000からロイヤル・アスコットの路線は同じ、2度・3度と対決して雌雄が決着すると思われます。
その他好走組では、3着のオーストラリアは血統的にもダービー向きということで、ダービーに7対4のオッズが出されました。オブライエン師は、調教ではダービーよりギニー向きのタイプと話していましたが。ハノン・ジュニアのシフティング・パワーも更に距離が伸びた路線に挑戦すべく、仏ダービーを目標にするとのことでした。

ここでレポートは逆になりますが、クラシックに先立って行われたG戦2鞍。
短距離のパレス・ハウス・ステークス Palace House S (GⅢ、3歳上、5ハロン)は1頭が取り消して11頭立て。3歳馬も2頭参戦していましたが、9対4の1番人気に支持されたのは7歳の古豪ソール・パワー Sole Power 。去年のこのレースの勝馬で、去年はGⅠに5戦連続で挑戦した格上の存在です。

フスティネオ Justineo の逃げをマークして進んだソール・パワー、最後は右に進路を変えながら抜け出し、これも9歳の古豪キングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native (12対1、6番人気)に半馬身差を付けての貫録勝ち。頭差で3歳の3番人気(7対1)ホット・ストリーク Hot Streak が3着に入りました。
エドワード・ライナム厩舎、ライアン・ムーア騎乗のソール・パワーは、見事パレス・ハウス2連覇達成。去年はロイヤル・アスコットのキングズ・スタンド・ステークス(GⅠ)を制してから香港のGⅠで2着(勝馬は我がロードカナロア)するまで5戦続けてGⅠを闘ってきた強者。今年もテンプル・ステークスからキングズ・スタンドと同じ路線を歩むことが期待されます。キングズ・スタンドのオッズは早くも7対1が提示されました。

そしてジョッキー・クラブ・ステークス Jockey Club S (GⅡ、4歳上、1マイル4ハロン)。こちらも1頭が取り消して8頭立て。去年の愛ダービー馬トレーディング・レザー Trading Leather が遠征してきたとあって、シーズン初戦ながら4対6の断然1番人気。

レースは3番人気(15対2)で3連勝中のブラス・リング Brass Ring が逃げ、トレーディング・レザーはやや掛かり気味になるのを懸命に抑えて最後方から。しかし抜け出したのは2番人気(6対1)のゴスペル・コアー Gospel Choir の方で、最後は右に寄れながらも5番人気(10対1)ピーターズ・ムーン Pether’s Moon に2馬身4分の1差を付けて優勝。トレーディング・レザーも漸く脚を伸ばしましたが、更に2馬身差の3着と敗退してしまいました。
これがG戦初勝利となるゴスペル・コアーは、サー・マイケル・スタウト師が管理する5歳馬で、首戦のライアン・ムーアが騎乗していました。ムーアはクラシック以外のG戦ダブル達成、流石と言うべきでしょう。勝馬は3歳時にはクラシック候補の1頭でしたが思うように調教が進まず、去年の秋にグッドウッドのハンデ戦に勝ってオープン入り。カンパーランド・ロッジ(GⅢ)5着でシーズンを終え、今期はここニューマーケットのアール・オブ・セフトン(GⅢ)で4着していました。これで本格化に期待が高まります。

3日はフランスのサン=クルー競馬場でもクラシックのトライアルが行われています。グレフュール賞 Prix Greffulhe (GⅡ、3歳牡牝、2000メートル)、もちろんダービーに向けてのトライアルです。馬場は soft 、出走馬は僅かに5頭。GⅠ馬を差し置いて6対5の1番人気に支持されたのは、サン=クルーで新馬と条件戦に2戦2勝のノロヘイ Nolohay という新星。

そのノロヘイが逃げ切り策に出ましたが、末脚が勝っていたのは、最後方に待機していた2番人気(17対10)のプリンス・ジブラルタール Prince Gibraltar 。3番人気(31対10)のアーンショウ Earnshaw に2馬身差を付けていました。ハナ差でノロヘイは3着。
ジャン=クロード・ルジェ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のプリンス・ジブラルタールは、メンバー中唯1頭今期デビューを迎えた馬。本命にならなかったのは休み明けに不安があったのかも知れませんが、2歳終戦にクリテリウム・ド・サン=クルー(GⅠ、2000メートル)を制したコースと距離の経験馬。勝たれて見れば当然の結果と言えるでしょう。当初はパンタル厩舎に所属していた経緯などは去年11月に報じた通り。今後の予定は入電していませんが、英仏愛のいずれかのダービーを目指すことは間違いないでしょう。

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