ロージー、二度目のケンタッキー・オークス

さあ、今週はアメリカでも三冠レース第一弾が行われます。馬産のメッカであるケンタッキー州のチャーチル・ダウンズ競馬場、5月3日の土曜日がケンタッキー・ダービー当日ですが、前日の金曜日にはオークスが行われました。
この日のアメリカ、G戦はチャーチル・ダウンズの5鞍のみ。もちろんオークスがメインで、それに先立つG戦から順にレポートして行きましょう。

最初は ラ・トロワイエンヌ・ステークス La Troienne S (GⅠ、4歳上牝、8.5ハロン)。いきなりG戦からスタートですが、去年のではGⅡで行われていたもの。今年からGⅠに昇格となりました。今年が29回目、2010年に現在のレース名に変更された一戦です。fast の馬場に6頭立て、出走馬中唯1頭のGⅠ馬オン・ファイア・ベビー On Fire Baby が8対5の1番人気に支持されていました。
大外6番枠スタートのオン・ファイア・ベビー、5枠から出た3番人気(3対1)デヴィルズ・ケイヴ Devil’s Cave の逃げを2番手で追走し、危な気無く抜け出して快勝。2馬身4分の3差で後方2番手から追い込んだ5番人気(12対1)モーリー・モーガン Molly Morgan が2着に入り、更に1馬身半で逃げたデヴィルズ・ケイヴが3着。
地元のゲーリー・ハートレージ厩舎、ジョー・ジョンソン騎乗のオン・ファイア・ベビーは、去年のアップル・ブロッソム・ハンデ(GⅠ)に勝ち、去年のこのレースではオーセンティシティー Authenticity に頭差2着と惜敗していました。今年はアップル・ブロッソムで2着して、トロワイエンヌ優勝。5連敗に終止符を打ち、二つ目のGⅠを手にしました。2歳時にはポカハンタス(GⅡ)とゴールデン・ロッド(GⅡ)にも勝っており、G戦は4勝目。チャーチル・ダウンズでは3戦全てG戦勝と、地元ファンにはアイドルのような存在でしょう。

続いては、firm の芝コースで行われたトゥイン・スパイアーズ・ターフ・スプリント Twin Spires Turf Sprint (芝GⅢ、4歳上、5ハロン)。9頭が出走。ここ2戦の芝短距離で何れも1番人気となり、サム・ヒューストンの一般ステークスに勝ったサム・オブ・ザ・パーツ Sum of the Parts が3対1の1番人気。
その本命馬が逃げ切りを図って先頭に立ちましたが、直線では一杯。替って2番手でマークしていた2番人気(3対1)のマーチマン Marchman が抜け出すと、後方2番手から追い込む4番人気(6対1)のアンドラフテッド Undrafted を1馬身半抑えて快勝。首差で3番人気(4対1)のポジティヴ・サイド Positive Side が3着。サム・オブ・ザ・パーツは6着と今回は奮いませんでした。
ブレット・カルホーン厩舎、前走もコンビを組んだロビー・アルバラード騎乗のマーチマンは、前走キーンランドのシェイカータウン・ステークス(芝GⅢ)でG戦初勝利を挙げた馬で、3週間の間にG戦2連勝。チャーチル・ダウンズでは去年6月に初勝利を記録しており2戦2勝。ダートでも実績を残していますが、芝では6戦4勝と相性が良く、陣営では今後も芝を中心に使っていくとのことでした。

チャーチルのG戦第三弾は、断念オークスとでも呼べそうなエイト・ベルズ・ステークス Eight Belles S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。但し距離は7ハロンで、オークスは長いという馬の舞台でもあります。1頭が取り消して9頭立て。前走フェア・グラウンズ・オークス(GⅡ、3月29日)で2着したフィフティーシェイズオブゴールド Fiftyshadeofgold が2対1で1番人気。
レースは3番人気(9対2)の一角ジョジョ・ウォリアー Jojo Warrior が逃げ、フィフティーシェイズオブゴールドは楽に3番で前を見る展開。直線で予定通り先頭に立つと、これをマークするように追走していた5番人気(9対1)マイラム Milam の追い上げを半馬身抑えて人気に応えました。更に3馬身半差が付いて、伏兵(23対1、ブービー人気)キャッシュ・コントロール Cash Control が3着。
勝馬を管理するブレット・カルホーンは、ターフ・スプリントに続いてG戦に連勝、こちらはマイク・スミスが騎乗していました。これで6戦4勝2着1回3着1回と堅実なフィフティーシェイズオブゴールドは、G戦は初勝利ながらステークスは3勝目。フェア・グラウンズ・オークスで2着した時点ではオークス挑戦の予定でしたが、敢えて方針を転換してこちらに回ってきたもの。確実にG戦勝ちのタイトルを狙ってきた形です。フェア・グラウンズ・オークスで負けた相手は、この時点でオークス本命のアンタパブル。この結果が実力通りだったことは直ぐに証明されることになります。

そしてメインの一つ前に行われたのが、アリシェバ・ステークス Alysheba S (GⅡ、4歳上、8.5ハロン)。取り消しが1頭あり8頭立て。去年のケンタッキー・ダービーで好走した馬たちが揃うレヴェルの高い争いとなりました。そんな中で3対5の1番人気に支持されたのは、去年の3歳牡馬チャンピオンでGⅠ2勝(トラヴァース、クラーク・ハンデ)のウイル・テイク・チャージ Will Take Charge 。一昨年のトラヴァース勝馬ゴールデン・チケット Golden Ticket が2番人気(5対1)で続きます。去年のダービー組では2着のゴールデン・ソウル Golden Soul 、5着のマイリュート Mylute も参戦。(4着のノルマンディー・インヴェイジョン Normandy Invasion は取り消し)
先頭に立って逃げたのは3番人気(6対1)のムーンシャイン・マリン Moonshine Mullin 。ウイル・テイク・チャージは後方3番手から追い込みに掛けますが、前を捉えに掛かったのは4番手を進んでいたゴールデン・チケット。直線中程で先頭に立ちましたが、ここから渋太かったのが内で粘っていたムーンシャイン・マリン。最後で再び差し返し、結局はゴールデン・チケットを半馬身差で競り落とす逆転劇でした。3馬身4分の3差が付いて最低人気(25対1)のコイン・ブローカー Coin Broker が3着に飛び込み、ウイル・テイク・チャージは6着敗退。波乱と言って良いでしょう。
ランディー・モース厩舎、カルヴィン・ボレル騎乗のムーンシャイン・マリンは、カナダをベースにして来た6歳馬。3歳時にカナダの一般ステークスに勝ち、この年はサラトガに遠征してジム・ダンディー・ステークス(GⅡ)で2着したこともありました。オンタリオ・ダービー3着という記録もあります。

愈々メインのケンタッキー・オークス Kentucky Oaks (GⅠ、3歳牝、9ハロン)。ダービーと同じ年に創設されていますから、今年が140回目。13頭がゲートインに向かいましたが、10番枠に収まったエンプレス・オブ・ミッドウェイ Empress of Midway がゲート内で暴れるアクシデント。結局この馬は取り消しとなり、一旦ゲートインしていた馬たちもゲートを出て騎手も下馬。再びゲートインをやり直すことになってスタートも大幅に遅れます。最終的には12頭立てとなり、大外枠のアンタパブル Untapable がイーヴンの1番人気に支持されていました。
スタートは順調、大外の本命馬も好スタートから前に出ると、3番枠から出た5番人気(11対1)シュガー・ショック Sugar Shock の逃げを4番手でマークします。2番手に付けていた2番人気(5対1)のマイ・ミス・ソフィア My Miss Sophia が逃げ馬を捉えて先頭に立つのを見ると、本命馬もすかさず外から並び掛けて直線へ。馬場の中央を通ったアンタパブル、あとは横綱相撲の強さを発揮し、マイ・ミス・ソフィアを4馬身半切って捨てる圧勝で人気に応えました。更に6馬身の大差が付いて7番人気(13対1)のアンブライドルド・フォーエヴァー Unbridled Forever が3着、3番人気(8対1)のロザリンド Rosalind が1馬身4分の1差の4着で続きます。
アンタパブルを管理するスティーヴン・アスムッセン師は、2005年のサマーリー Summerly に続きオークスは2勝目。騎乗したロージー・ナプラヴニクも、一昨年のビリーヴ・ユー・キャン Believe You Can に次ぐ2勝目で、3年間でオークス2勝と男勝りの大活躍です。また勝馬のオーナー(ウインチュル・サラブレッズ)は2005年のサマーリーのオーナーでもあり、勝馬の父タピット Tapit の馬主でもありました。もちろん母馬も代表者ロン・ウインチュル氏の所有で、オークスはファミリーの勝利でもありました。
ウインチュル氏によると、正にオークス当日の朝、母馬を再びタピットに配合すべく送り出したばかりだった由。これが幸運の予兆だったと大喜びでした。父タピットは、日本でもフェブラリー・ステークス(GⅠ)に勝ったテスタマッタを出しており、現在最も活躍している種馬の1頭であることは御存知でしょう。

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