オークス候補揃い踏み

今週はイングランド北部、ヨーク競馬場の5月開催が行われます。ダービーとオークスに向けたトライアル戦が確立したのは戦後のことですが、現在では最も信頼のおけるトライアルと言えるでしょう。
初日は馬場が極めて重く、soft、所により good to soft で、G戦は2鞍です。

先ずはオークスのトライアルとして知られるミュジドラ・ステークス Musidora S (GⅢ、3歳牝、1マイル2ハロン88ヤード)。1頭が取り消して9頭立て。2歳時にノッティンガムで新馬勝ちしただけのケンブリッジ Cambridge が9対2の1番人気。既にオークの下馬評にも挙がっているハーリッド・アブダッラーの期待馬です。これが今期初戦で僅かに2戦目ですが、期待通り無傷でオークスに進めるでしょうか。
レースは、これも既にオークスのオッズが出ているエリザベス女王の3番人気(11対2)シャマ Shama がライアン・ムーアを背に強いペースで逃げます。これをマークして進んだケンブリッジは勝負所で徐々に後退、替って前を捉えたのは、最後方から鋭く伸びたブービー人気(8対1)のマダム・チャン Madame Chiang 、これも後方から追い上げる5番人気(7対1)リリー・ルールズ Lily Rules に1馬身4分の1差を付ける逆転劇です。更に2馬身半差で4番人気(13対2)のルガルデ Regardez が3着。ケンブリッジは7着、2番人気(5対1)のクイーン・オブ・アイス Queen of Ice も5着と波乱の結果になってしまいました。

デヴィッド・シムコック厩舎、キーレン・ファロン騎乗のマダム・チャンは、人気馬と同じく2歳時にヤーマス競馬場で新馬勝ちしたのみのキャリア。これで無傷のままオークスに向かうのでしょうか。新馬勝ちしたときに2着だったのは、今回3着したルガルデ。前回両馬の着差は4馬身でしたが、今回もほぼ4馬身と、この結果は信用して良いと思われます。
オークスに12対1のオッズが出されましたが、シムコック師は馬場が鍵だと考えています。現時点で同馬には固い馬場で走らせる気持ちは無く、仮にエプサムが重馬場になるようなら挑戦させるとのこと。馬場が重くなる可能性がより高い仏オークスを目指すのが現実的、というコメントも出していました。

ヨークのもう一鞍はデューク・オブ・ヨーク・ステークス Duke of York S (GⅡ、3歳上、6ハロン)。ヨーロッパの短距離では今期最初のG戦、1頭が取り消して13頭が出走してきました。去年秋アスコットのチャンピオン・スプリントで2着したジャック・デクスター Jack Dexter が4対1の1番人気。出走馬中唯一の3歳馬でミドル・パーク・ステークス(GⅠ)の覇者アステア Astaire が5対1の2番人気で続きます。
ダッシュ良く飛び出したアステア、一旦はヘラート Heeraat にハナを譲ったものの再び先頭を奪い返して逃げ込みを図ります。しかし今回は人気を落としていた(12対1、7番人気)古豪マーレク Maarek が先行から抜け出し、アステアを3馬身差し切って貫録を見せ付けました。1馬身半差の3着には勝馬と同じオッズのエス・ケ・ラヴ Es Que Love 。

勝ったマーレクは去年のアベイ・ド・ロンシャン賞(GⅠ)の勝馬で、今回はGⅠ勝のペナルティーとして5ポンドを課せられていたことも人気を落としていた理由でしょう。アベイは得意の重馬場を利しての勝利でしたが、今回も馬場状態を味方につけての快走でした。鞍上はアベイと同じデクラン・マクダナー。
違っていたのは調教師で、去年まではアイルランドのバーナード・レイラー師が管理していましたが、今期からはレイラー師の元で研鑽を積んできた女性調教師のミス・エヴァンナ・マクカッシェオンさん。やはりアイルランドからの参戦でした。今期はコークのリステッド戦7着、2週間前にはナースのリステッド戦で2着しており、3戦目でのシーズン初勝利。7歳にしてなお健在のせん馬で、ロイヤル・アスコットのダイヤモンド・ジュビリーには12対1、キングズ・スタンドには14対1のオッズが出されています。

昨日は、そのアイルランドでもG戦が一鞍行われました。ナース競馬場のブルー・ウインド・ステークス Blue Wind S (GⅢ、3歳上牝、1マイル2ハロン)。馬場はこちらも重く、yielding to soft 。1頭が取り消して9頭立て、3歳馬は5頭。前走ネイヴァンのリステッド戦に勝った3歳のダズリング Dazzling が6対4の1番人気に支持されていました。

レースはそのダズリングとウェルド厩舎のペースメーカー、タハーニー Tahaany の先頭争い。ダズリングが競り勝ちましたが、最後方に待機した2番人気(9対4)でウェルド厩舎のタファーシャ Tarfasha が一気に前を捉え、3番手を追走していた4歳馬で4番人気(12対1)のウィール・ゴー・ウォーキング We’ll Go Walking に3馬身4分の1差を付ける圧勝でした。更に3馬身差が付いてダズリングは3着。
圧勝したタファーシャは、日曜日にGⅢハットトリックを達成したデルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗のコンビ。ウェルド師はこのレース、僅か14年の歴史ながら3勝目となります。そもそもレース名のブルー・ウインドは、ウェルド師が調教して英愛オークスを連覇した名牝、師にとっては最も因縁の深いレースでもありましょう。
タファーシャは、2歳時に2戦目のゴウランで初勝利を挙げた馬、次のパーク・ステークス(GⅢ)3着でシーズンを締めくくっていました。今回がシーズン・デビュー。半兄には英愛両ダービーで入着したガリレオ・ロック Galileo Rock もいる長距離牝系で、オークスを勝つために生まれてきた血統と言えるでしょう。この勝利でオークスのオッズは、ミュジドラのマダム・チャンと同じ12対1が出されました。

さて昨日は水曜日ながらフランスでもG戦が行われていて、そちらも紹介しておきましょう。サン=クルー競馬場のクレオパトラ賞 Prix Cleopatre (GⅢ、3歳牝、2100メートル)。
馬場はフランスも重く、soft 。6頭が出走し、アガ・カーンの無敗馬シャムカラ Shamkala が2対5の2倍を切る圧倒的1番人気に支持されていました。

シャムカラはその人気を証明するように、他の5頭を寄せ付けない逃げ切り勝ち。2着アムール・ア・パパ Amour a Papa (41対5、3番人気)とは4分の3馬身でしたが、着差以上の楽勝と見て良いでしょう。3着は短頭差で2番人気(33対10)のハグ・アンド・ア・キス Hug and a Kiss 。
アラン・ド・ロワイアー=デュプレ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のシャムカラは、2歳時にシャンティーで新馬勝ち。今期初戦のロンシャン条件戦も連勝し、今回がG戦初挑戦で3連勝。その内容の良さから、仏オークスには5対2と言う極めて高いオッズが出されました。もちろん6月15日の本番に直行する予定。更に彼女の評価は凱旋門賞にも及び、こちらには20対1のオッズが提示されています。

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