2014クラシック馬のプロフィール(4)

前回に続いてフランスのギニー勝馬の血統プロフィール、仏2000ギニーたるプール・デッセ・デ・プーラーンを制したカラコンティー Karakontie を取り上げましょう。
カラコンティーは、父バーンスタイン Bernstein 、母サン・イズ・アップ Sun is Up 、母の父サンデー・サイレンス Sunday Silence という血統です。母の父の名前から想像できるように、カラコンティーも母も日本産を意味する「JPN」というサフィックスが付くのが嬉しい所ですね。

その母に入る前に、バーンスタインについても少し触れておきましょう。
この大作曲家の名前を戴いた種牡馬は、僅か10年間供用されただけで2011年に亡くなりました。従ってカラコンティーは最後から2番目の産駒ということになります。
アメリカ産馬ですがクールモア・スタッドが高値で購入、アイルランドでエイダン・オブライエンが調教しました。2歳時にはコンコルド・ステークス(GⅢ)、レイルウェイ・ステークス(GⅢ)に勝って厩舎の期待は天井知らずの高さでしたが、2000ギニーは26着と大惨敗し、再度アメリカに売られて種牡馬になっています。

2001年から供用されましたが、アメリカとアルゼンチンの間を往復する所謂シャトル種牡馬で、その産駒で最も成功したのはアルゼンチンで走ったストーム・メイヤー Storm Mayor (南米の凱旋門賞と言われるカルロス・ペレグリニ大賞典を2度制覇)とストーム・チスパゾ Storm Chispazo (アルゼンチン・ダービー)でしょうか。
日本に輸入された産駒では、2007年の朝日杯フューチュリティーに勝ったゴスホークケンを思い出される方もあるでしょう。もちろんアメリカでもG戦に勝った馬は何頭もいますが、GⅠクラスは見当たらないようです。未だ最後の産駒も残っていますが、バーンスタインの遺産となるのはカラコンティーになると思われます。

さて牝系です。カラコンティーに付いては去年秋にラ・ロシェット賞(GⅢ)を勝った時に当ブログでも取り上げました。9月9日の日記「日本産馬が仏GⅢに優勝」というタイトルですから、そちらも参考にして下さい。
母サン・イズ・アップ(1998年 青鹿毛)は白老産。日本では走らずフランスに輸出され、彼の地でパスカル・ベイリーが調教して4戦未勝利。勝馬として名前を残すことはできませんでした。その繁殖成績は以下の通り。
2004年 ソリタス Solitas 鹿毛 牝 父サンダー・ガルチ Thunder Gulch スペイン? で13戦5勝
2005年 ユープシロン Upsilon 黒鹿毛 牡 父アルデバラン Aldebaran モロッコ? で2戦未勝利?
2006年 サンデー・サンライズ Sunday Sunrise 黒鹿毛 牡 父レモン・ドロップ・キッド Lemon Drop Kid アメリカでスティーヴン・アスムッセンが調教し、28戦5勝 G戦の実績は無し
2007年 ボッテガ Bottega 栗毛 牡 父マインシャフト Mineshaft フランスとスペインで走り40戦9勝 スペインの2歳王者決定戦(GⅠ)に勝ち、スペイン・ダービーで4着
2008年 アルーセマ Alhusema 栗毛 牝 父アルデバラン ペルー? で5戦2勝
2009年 ダウニング Dawning 黒鹿毛 牝 父ウォー・チャント War Chant フランスでパスカル・ベイリーが調教し、5戦1勝(シャンティーの2000メートル戦)
2011年 カラコンティー 当該馬 バーンスタインを受胎して日本に戻り、新冠でクラシック馬の母となる
2012年 アルティチューズ Altitudes 栗毛 牡 父バゴ Bago 新冠産

以上のように「?」が付くものが多く、産駒は世界に広がっていることが判ります。日本調教馬が例えば凱旋門賞に勝つことも大切ですが、この例のように日本産というブランドが世界に認められていくことの方がより重要だと思慮しますがどうでしょうか。

2代母ムーン・イズ・アップ Moon is Up (1993年 鹿毛 父ウッドマン Woodman)はフランスでジョン・ハモンドが調教し、5戦1勝。多くは現在アメリカで調教師として活躍しているアスムッセンが騎乗していたようで、セーヌ・エ・オワーズ賞(GⅢ)で3着に入ったこともあるスプリンターでした。
彼女の産駒もまた世界中に散らばっており、初産駒のサン・イズ・アップに続く子供たちで目に付くものだけに限れば、
2000年 セヴン・ムーンズ Seven Moons 牝 父サンデー・サイレンス 日本産(白老)馬で10戦2勝
2002年 イエロー・パープル Yellow Purple 牝 父ドリーム・ウェル Dream Well これも日本産(白老) フランスでパスカル・ベイリーが調教し、6戦1勝(シャンティーの2000メートル戦)
2005年 ヴァスコ・マレンゴ Vasco Marengo せん 父エルナンド Hernando 英国産 フランスで8戦2勝(障害レースでの1勝も含む)
2008年 アマネー Amanee 牝 父ピヴォタル Pivotal 豪州産で南アフリカで出走 13戦4勝で南アフリカ・ギニー(GⅡ)の他、南アのGⅠ戦にも優勝

そして3代母は、あの名牝ミエスク Miesque (1984年 鹿毛 父ヌレエフ Nureyev)となります。ミエスクと言えばGⅠに9勝、英仏の両1000ギニー、BCマイル2連覇、ジャック・ル・マロワ2連覇、イスパハン、ムーラン・ド・ロンシャン、マルセル・ブーサックと、これで9つになりますね。
ミエスクが偉大なのは、母馬としてもGⅠ馬を続出したこと。1990年生まれのキングマンボ Kingmambo は仏2000ギニー、セント・ジェームス・パレス、ムーラン・ド・ロンシャンとマイルのGⅠに3勝。1991年のイースト・オブ・ザ・ムーン East of the Moon も仏1000ギニー、仏オークス、そしてジャック・ル・マロワとGⅠ3勝を達成しました。
更にその娘ではムーン・イズ・アップの他にもモネヴァッシア Monevassia から2歳のGⅠに2勝(モイグレア・スタッド、マルセル・ブーサック)した牝馬ランプルスティルトスキン Rumplestiltskin が出ているという具合。

4代母パサドーブレ Passadoble (1979年 鹿毛 父プルーヴ・アウト prove Out)に付いては繰り返すこともないでしょう。そう、一昨年の仏2000ギニー馬ルカイヤン Lucayan の4代母に当たるのです。
ここから先は一昨年の記事「2012クラシック馬のプロフィール(4)」にも書きました。そちらも合わせてお読みください。

ファミリー・ナンバーは20。ダッフォディルズ・ダム Daffodil’s Dame という18世紀初頭の牝馬を基礎とする牝系です。

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