2014クラシック馬のプロフィール(6)

昨日に続いてアイルランドのクラシック馬、愛1000ギニーを僅か3戦目のキャリアで制したマーヴェラス Marvellous を取り上げましょう。
マーヴェラスは、父ガリレオ Galileo 、母ユーアーソースリリング You’resothrilling 、母の父ストーム・キャット Storm Cat という血統。父と母父の名前だけでノーザン・ダンサー Northern Dancer の3×4、かつては奇跡の血量と言われた配合であることが判りますね。

父ガリレオについては繰り返す必要もないでしょう。早速牝系のプロフィールに。前回のキングマン Kingman をジャドモント牧場の至宝と紹介しましたが、この牝系はクールモア牧場にとって中核となる血統。クールモアと言えばアイルランドのエイダン・オブライエン厩舎とは切っても切れない関係ですが、マーヴェラスの近親にもクールモア/オブライエンが手掛けた馬が多数登場してきます。
母ユーアーソースリリング(2005年 黒鹿毛)は、早速その代表例。エイダン・オブライエン師が管理し、2歳の5月にカラー競馬場のリステッド戦(5ハロン)でデビューして2着。普通の新馬戦ではなく、いきなりリステッド戦をデビューに選んだ辺りに陣営の期待の高さが窺われるでしょう。
続いてはネース競馬場(Naas あるいはナースとも読めますが)のソードレスタウン・スタッド・スプリント・ステークス(GⅢ、6ハロン)に出走して見事に初勝利。この2歳牝馬のG戦は2012年以降はリステッド戦に格下げされており、現在はG戦ではありません。

3戦目には英国ロイヤル・アスコットに遠征し、アルバニー・ステークス(GⅢ、6ハロン)で2着。7月にもニューマーケットのチェリー・ヒントン・ステークス(GⅡ、6ハロン)に挑戦して優勝、2勝目で二つ目のG戦を獲得します。
更に8月のヨークでラウザー・ステークス(GⅡ、6ハロン)に出走しましたが、残り2ハロンで他馬と接触する不利があって9着で入線。しかしこのレースは後に2着馬から薬物が検出されて失格となり、3着以下が繰り上がります。従っユーアーソースリリングは8着というのが公式の結果。これを最後に2歳シーズンを終えます。

3歳になったユーアーソースリリングは調整が大幅に遅れ、春から夏のシーズンを棒に振ってしまいます。3歳デビューは9月のレパーズタウン競馬場、メイトロン・ステークス(GⅠ)に挑戦するもラッシュ・ラッシズ Lush Lashes の4着。1年以上の休養明け、相手の強いGⅠ戦で勝馬とは約1馬身差という点を考えれば、これは大好走と言えるでしょう。
10月初旬にはロンシャンに遠征、10ハロンのGⅠ戦オペラ賞に出走するもレディー・マリアンの14頭立て8着と敗退。現役最後のレースを終えました。因みにこの年のオペラ賞には武豊騎手がファーブル厩舎のターフローズ Turfrose で参戦、11着に終わっていました。武ジョッキーは目の前でユーアーサースリリングを見ていたはずです。10ハロンの距離を使ったということは、陣営では彼女のスタミナにも確信があったはずで、勝鞍6ハロンのみからスプリンターと見做すのは誤りでしょう。

2009年に繁殖に上がったユーアーソースリリング、初年度の種付けはクールモアの大種牡馬ガリレオでした。順当なら2010年生まれがいるはずですが、不受胎に終わったのか、マーヴェラスが彼女の最初の産駒として登録されているようです。なお2年目の産駒も父はガリレオで、グレンイーグルス Gleneagles と命名された牡馬とのこと。これからも彼女の産駒からクラシックを目指す馬が出てくることは間違いなさそうです。

2代母マリア―ズ・ストーム Mariah’s Storm (1991年 鹿毛 父ラヒー Rahy)はアメリカ産でアメリカで走った馬。GⅠ勝ちこそありませんが、GⅡとGⅢに6勝もした強豪です。通算成績は16戦10勝。主な戦歴は、2歳時にアーリントン=ワシントン・ラッシー・ステークス(GⅡ)に優勝。
3歳時にはアク=サル=ベン・オークス(GⅢ)、アーリントン・ハイツ・オークス(GⅢ)に勝ち、4歳時にもフォールズ・シティー・ハンデ(GⅢ)、ターフウェイ・ブリーダーズ・カップ(GⅡ)、アーリントン・メイトロン・ハンデ(GⅢ)に優勝。
2歳時の故障から立ち直った物語を基に「Dreamer」という映画が創られたということですが、未だ見る機会がありません。彼女の繁殖成績を列記しておきましょう。

1997年 ジャイアンツ・コーズウェイ Giant’s Causeway 栗毛 牡 父ストーム・キャット Storm Cat クールモア/オブライエンのチームで13戦9勝の名馬 エクリプス、ヨーク・インターナショナル、サセックス、セント・ジェームス・パレス、アイリッシュ・チャンピオンなどのGⅠ戦を次々と制覇し、1マイルから10ハロンまでのチャンピオン
1998年 フロイト Freud 栗毛 牡 父ストーム・キャット クールモア/オブライエン 12戦1勝(カラーの1マイル) 愛2000ギニーは7着
1999年 ロアー・オブ・ザ・タイガー Roar of the Tiger 栗毛 牡 父ストーム・キャット クールモア/オブライエン 11戦4勝 アイルランドではネースの6ハロン戦に4戦1勝 転売か?
2000年 ワーズワース Wordsworth 栗毛 牡 父デピュティー・ミニスター Deputy Minister クールモア/オブライエン 4戦未勝利
2001年 タンブルブルータス Tumblebrutus 黒鹿毛 牡 父ストーム・キャット クールモア/オブライエン 7戦1勝(ネースの6ハロン) 2000ギニーは14頭立て9着
2002年 タイガー・ダンス Tiger Dance 黒鹿毛 牡 父ストーム・キャット クールモア/オブライエン 5戦1勝(レパーズタウンの7ハロン)
2005年 ユーアーソースリリング
2006年 ペアリング Pearling 黒鹿毛 牝 父ストーム・キャット 2戦未勝利
2008年 ラヴ・ミー・オンリー Love Me Only 鹿毛 牝 父サドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells 未出走
2010年 ハンキー・パンキー Hanky Panky 栗毛 牝 父ガリレオ クールモア/オブライエン 7戦1勝(ネースの1マイル) 愛1000ギニーは15頭立て7着
2012年 オフン Often 牝 父ガリレオ

以上、産駒のほとんどはクールモアの自家生産馬で、エイダン・オブライエンが調教してきました。特に初産駒のジャイアンツ・コーズウェイは競走馬時代はもちろん、種牡馬としても大成功していることはご存知の通り。日本でもマイルチャンピオンシップに勝ったエイシンアポロンなど3頭のG戦勝馬を出しています。
初産駒から6年連続で男馬が続き、マーヴェラスの母ユーアーソースリリングが彼女の最初の娘だったことも特記しておくべきでしょう。この馬からの枝葉は未だこれからという印象です。

3代母はイメンス Immense (1979年 鹿毛 父ロベルト Roberto)。彼女もアメリカ産、アメリカで走った馬で、28戦5勝。G戦勝鞍は、3歳時のリトル・シルヴァー・ハンデ(芝GⅢ)のみ。
母馬としてはマーヴェラスの祖母の他、フランスで走りダルクール賞(GⅡ)に勝ったパノラミック Panoramic (1987年 鹿毛 牡 父レインボウ・クエスト Rainbow Quest)と、日本に輸入されたエアザイオン(1996年 鹿毛 牝 父グルーム・ダンサー Groom Dancer)が重要。
グルームダンサーは夏の札幌でニセコ特別(1800メートル)に勝ち、秋の中山に戻ってクィーン・ステークス(GⅢ、1800メートル)に勝ったことはファンの記憶に新しいところでしょう。繁殖に上がってからも、調べた限りでも4頭の勝馬の母となり、江の島特別(東京1800メートル)に勝ったレイズユアドリーム(2002年)が稼ぎ頭でしょうか。

更に遡って4代母アイムソーディアー Imsodear (1967年 鹿毛 父チーフテン Chieftain)は33戦5勝し、ステークス勝馬である他にアーリントン=ラッシー・ステークス(GⅢ)、ソロリティー・ステークス(GⅠ)、スピナウェイ・ステークス(GⅠ)、エイコーン・ステークス(GⅠ)を制したディアリー・プレシャス Dearly Precious の母でもあります。
また5代母アイロニカリー Ironicaly (彼女も9戦2勝)は、イタリア・オークス(当時はGⅠだった)勝馬イレーニア Ilenia の3代母にも当たります。

以上マーヴェラスの牝系は、少なくとも5代遡っても全てが勝馬の母から生まれたファミリーで、1マイルから10ハロンで最も能力を発揮する血統と言えそうです。父にガリレオを持つマーヴェラス、オークスの距離も問題にならないと見るべきでしょう。アイルランド・オークスでの走りに期待が掛かります。

ファミリー・ナンバーは11。セドバリー・ロイヤル・メア Sedbury Royal Mare を基礎とする長い歴史を持つ牝系です。

 

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