2014クラシック馬のプロフィール(8)

今年のクラシック馬プロフィールも8頭目になってしまいました。現時点で英愛仏のクラシックを二つ以上勝った馬はありません。今回はエプサムのオークスを無敗で制したタグルーダ Taghrooda です。
血統に入る前に、「Taghrooda」の読み方。この馬がプリティー・ポリー・ステークスを圧勝した時に名前を見、当てずっぽうで「タグルーダ」と読みました。今回オークスの実況放送を聞いているとやはりタグルーダと発音しているようでしたのでこれで通しますが、ネットなどで検索すると「タグローダ」という人もあり、「タゴルーダ」という読み方もあります。
いずれにしてもオーナーの関係でアラビヤ語でしょうが、ここではタグルーダで通すことにしました。

で、タグルーダの血統は父シー・ザ・スターズ Sea the Stars 、母エジマ Ezima 、母の父サドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells という血統。
父に付いては解説するまでもないでしょう。当ブログの血統プロフィールというコーナーは2009年に始めましたが、その第1回で紹介したのがシー・ザ・スターズでした。2000ギニー、ダービーと二冠を達成し、最後は凱旋門賞で締め括った名馬。タグルーダはその初年度産駒で、最初のクラシック勝馬でもあります。

母エジマ(2004年、鹿毛)はアイルランド産。ジム・ボルジャーが調教した馬で、2歳から4歳までアイルランド、イギリス、フランスで15戦して4勝。2歳時は2戦して勝てませんでしたが、3歳初戦にネイヴァン競馬場の未勝利戦(8.5ハロン、不良馬場)で初勝利を挙げます。
2勝目は3歳の10月、カラーのリステッド戦(12ハロン)に勝ち、1週後にレパーズタウンのリステッド戦(10ハロン)を連闘で制して3勝目を記録します。
4歳も現役に留まったエジマは、シーズン2戦目にレパーズタウンのリステッド戦(14ハロン)に優勝。次走は英国に遠征し、ランカシャー競馬場でランカシャー・オークス(GⅢ、オークスとは言いながら古馬も出走できる牝馬G戦)で2着します。現役最後はフランスに飛び、ロンシャンのロワイヤリュー賞(GⅡ、2600メートル)での13頭立て7着でした。繁殖に上がったエジマ、タグルーダがその初産駒のようです。

2代母はエジラ Ezilla (1997年 鹿毛 父ダーシャーン Darshaan)。この馬は未出走馬で、繁殖成績のみ。その主なものを列記すると、
2001年 エジミックス Ezimex 芦毛 せん 父リナミックス Linamix 4歳時のみ8ハロン~16ハロンで9戦未勝利
2002年 インサーニ Insaani 鹿毛 牡 父ソヴィエト・スター Soviet Star ウェルド厩舎 3歳時のみ8ハロン~12ハロンで3戦未勝利
2003年 シェーリン Shellin 鹿毛 牝 父シンダー Sinndar ボルジャー厩舎 2・3歳時に7ハロン~13ハロンで8戦未勝利
2004年 エジマ
2005年 ジェントル・オン・マイ・マインド Gentle On My Mind 鹿毛 牝 父サドラーズ・ウェルズ オブライエン厩舎 3歳時のみ5戦1勝 レパーズタウンの12ハロンでデビュー勝ち 愛ダービー10着
2006年 エザフラン Ezaffron 鹿毛 牡 父サフラン・ウォルデン Saffron Walden ボルジャー厩舎 3歳時のみ10ハロン~12ハロンで3戦未勝利
2007年 エザーリ Ezalli 鹿毛 牝 父ケープ・クロス Cape Cross ライナム厩舎 3・4歳時に5戦1勝 カラーの10ハロンでデビュー勝ち
2008年 ジッピー・ジッター Zippy Zitter 鹿毛 牝 父ガリレオ Galileo 未出走
2009年 スペシャル・ボーイ Special Boy 鹿毛 牡 父インヴィンシブル・スピリット Invincible Spirit 3歳から6歳まで走り、UAEで9戦2勝 勝鞍は6ハロンと7ハロンのハンデ戦
2011年 エジリ Ezilii 鹿毛 牝 父ロウマン Lawman 未出走?

以上、未勝利馬が多く、ほとんどが所謂長距離馬として調教されてきたことが判ります。タグルーダの母エジマが出世頭で、愛ダービーに出走したジェントル・オン・マイ・マインドが二番手。いずれも最低でも2400メートルの距離が必要だったタイプと言えそうです。

3代母エザナ Ezana (1983年 栗毛 父エラ=マナ=ムー Ela-Mana-Mou)はアガ・カーンの基礎牝系の1頭で、フランスで走り8戦1勝(詳細不明)という成績があります。エザナにはタグルーダを出すエジラの他にエバジーヤ Ebaziya (1989年 鹿毛 父ダーシャーン)という名牝があり、この血統はこの娘によって競馬史にも希に見るほどの実績を残しました。
即ちエバジーヤは9戦4勝、アイルランドでジョン・オックス師がアガ・カーンのために調教し、現在はGⅢに格付けされているバリーサックス・ステークス(当時はリステッド戦)に優勝、キラヴュラン・ステークス(GⅢ)2着、ブランドフォード・ステークス(GⅡ)3着という成績も残しました。
しかしエバジーヤが凄いのは繁殖に上がってから。何と彼女は4頭のGⅠ馬の母になったのです。

先ず1994年の娘エバディーラ Ebadiyla (父サドラーズ・ウェルズ)はアイルランド・オークスとロワイアル・オーク賞(仏セントレジャー)と二つのGⅠに優勝。もちろんオーナーも生産者もアガ・カーン。
続く1995年生まれの牡馬エンゼリ Enzeli (父カヤージ Kahyasi)はGⅠのアスコット・ゴールド・カップを制したほか、ドンカスター・カップにも勝って愛セントレジャーは二度4着。もちろんアガ・カーンがオーナー/ブリーダー。
更には1996年生まれの娘エダビーヤ Edabiya (父レインボウ・クエスト Rainbow Quest)もモイグレア・スタッド・ステークスを制し、3年連続でGⅠ馬となる快挙を達成します。これももちろんアガ・カーンの生産馬にして所有馬でした。

その後暫くは活躍馬の無い状態が続きましたが、2009年にアガ・カーンが生産したエスティメート Estimate (父モンスン Monsun)が何とエリザベス女王の所有する所となり、王室が主催する去年のアスコット・ゴールド・カップを制して英国の競馬ファンを狂喜させたのは記憶に新しい所でしょう。
こうしてエバジーヤは4頭のGⅠ馬の母になりました。全てを調べた訳ではありませんが、パターン・レース体系が導入されて以降、4頭のGⅠ馬を出したという事例は彼女が初めてではないでしょうか。しかも勝ったGⅠ戦を見れば、2400メートルでは足りないほどにスタミナを必要とするレースが多く、完全なステイヤー血統と評して良いかと思われます。

なお、エバディーラの産駒エバノラン Ebanoran (2011年 鹿毛 父オアシス・ドリーム Oasis Dream)が、今年のダービーで9着だったことを追加しておきましょう。レパーズタウンのダービー・トライアル(GⅢ)で1着入線しながら2着降着となったあの馬です。

更に遡って4代母エヴィサ Evisa (1968年 栗毛 父ダン・キューピッド Dan Cupid)は未勝利ながら6頭の勝馬の母となり、娘のデミア Demia がフロール賞、ペネロープ賞と二つのGⅢ戦に勝っています。
このエヴィサからは娘ヴィサラ Visala を経て、5代目にデューハースト・ステークスに勝ったパリッシュ・ホール Parish Hall が出ています。

5代母アルバニラ Albanilla (1951年 栗毛 父ファリス Pharis)はパターン・レース・システムの無い時代にクリテリウム・ド・メゾン=ラフィットに勝った馬。その別の娘マリーラ Marilla からは仏ダービー馬ダーシャーン、ヴェルメイユ賞のダララ Darara 、ヨークシャー・オークスのダー・レ・ミ Dar Re Mi 、プリンス・オブ・ウェールズのリワイルディング Rewilding 、コロネーション・カップのダリアプール Daliapour 、グッドウッド・カップのダラーシム Darasim などのGⅠ級の馬が出ています。

ファミリー・ナンバーは13-c。スターリー・ショット Stary Shot を基礎とする長距離牝系です。

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